4回目のワクチン接種は、本当に必要なのか(5)

 第7波の感染拡大が止まりません。7月16日に新規感染者数(正確にはPCR陽性者数)が11万665人を記録し、これまで最高だった2月3日の10万4,334人を超えて過去最高になりました。感染は終息に向かう気配がなく、当面はさらに拡大すると思われます。

 感染の拡大に伴って岸田首相は7月14日の記者会見で、60歳以上の人などに行っている4回目のワクチン接種の対象範囲を、医療従事者と高齢者施設のスタッフなどにも拡大することを表明しました。さらに厚労省は、3回目の未接種者にもワクチン接種を呼びかけています。

 3回目、4回目のワクチン接種は、本当に必要なのでしょうか。

 

濱田篤郎教授が説く感染拡大の要因

 7月19日付けのNHK首都圏ナビで、東京医科大学の濱田篤郎特任教授は、感染拡大の要因について次のように述べています。

 濱田教授は、感染拡大の要因は二つあって、一つは感染力がある程度強いとされるオミクロンのBA.5株が広がっていることであり、もう一つは日本が6月に水際対策を緩和したことで、世界的に広がっていたBA.5株が直接流入してきたことであると指摘します。

 また、第7波の感染者はすでに第6波を越えているものの重症者はあまり増えておらず、その理由は国民の6割以上が3回目のワクチン接種を受けているからだと説明しました。そして、ワクチンは3回接種すると感染を防ぐ効果がある程度期待でき、重症化はかなり抑えることができるため、今後は一人一人が感染対策を徹底すると共に、高齢者は4回目のワクチン接種を考えて欲しいと訴えかけています。

 濱田教授の分析と対策は、果たして正しいと言えるのでしょうか。

 

ブースター接種が進んだ国だけでBA.5 株が拡大

 前回のブログで検討したように、オミクロンBA.5株が拡大しているのはブースター接種率が高い国で、ブースター接種が進んでいない国々ではBA.5株は拡大していません。BA.5株の感染力が強いなら、世界各国で一様に感染拡大が起こっていなければならないはずです。

 

                  図1

 

 図1は、ブースター接種率の最も低いインド(3.5%)、南アフリカ(5.9%)、ロシア(10.1%)の3ヶ国の感染状況です。いずれの国でもBA.5株の感染拡大は起こっていません。

 ただし、オミクロン株発祥の地である南アフリカでは、BA.2株の感染拡大を示す山(右から2番目)と共に、BA.5株の山(1番右の山)がみられています。その特徴は、BA.2株よりも、BA.5株の山の方がかなり小さいということです。

 この現象が起こったのは、南アフリカでワクチン接種が進んでいないことに原因があると考えられます。

 

自然感染によって免疫を獲得

 南アフリカでは、BA.5株の感染拡大が始まった4月20日の時点で、ワクチン2回接種率は30.3%、3回接種率は4.2%でした。つまり、オミクロンBA.2株の感染が終息した時点で、国民の約3分の2の人たちはワクチンの接種が完了していませんでした。

 そのため南アフリカでは、多くの人がワクチンに誘導された抗体がない状態でオミクロンBA.2株に感染し、自らの力で自然免疫、細胞性免疫、そして体液性免疫を獲得したと考えられます。新たに変異したBA.5株が流行した際には、獲得された免疫によって、感染拡大が最小限に抑えられたのでしょう。

 ブースター接種が進んでいない他の国において、BA.5株の感染拡大が起こっていないのも、同様の理由によると思われます。

 

                  図2

 

 図2のように、ブースター接種率が低いインドネシア(17.8%)、サウジアラビア(30.5%)、アメリカ(37.3%)では、BA.5株による感染拡大は起こっていません。

 

アメリカで感染拡大が起こらない理由

 アメリカ疾病予防対策センター(CDC)は、7月16日の時点で、アメリカの新規感染者の77.9%がBA.5株に置き換わっていると発表しました。それにもかかわらず、同日の新規感染者は6万7,940人で、感染は拡大する様相を呈していません。この現象は、アメリカではオミクロン株の約8割がBA.5に置き換わっているのに、その過程で感染拡大が起こっていないことを現しています。

 大谷選手が活躍するメジャーリーグの中継を観ると、観客でマスクをしている人は誰一人としていません。アメリカでは5月にはすでに、コロナ渦前と同様に外食やソーシャルライフを楽しみ、大型イベントや旅行にも出かけるなど当たり前の日常生活が再開されました。その結果、新規感染者は少し増えましたが、そのまま感染が拡大することはなく、感染者はほぼ平行を保っています(図2のアメリカの右端の平行部分がこれに当たります)。

 未だにほとんどの人がマスクをし、政府や自治体が感染拡大の防止に躍起になっているにもかかわらず、感染が急拡大している日本との違いは何か。それは、ブースター接種率の違いではないでしょうか。

 7月19日の時点で、感染が急拡大している日本のブースター接種率は66.4%、アメリカのブースター接種率は37.6%です。つまりアメリカでは、ワクチン頼りでなく、自然な感染によって免疫を獲得する人が増えているのです。

 実に皮肉な結果だと思いませんか。

 

ワクチン接種半年後には免疫力全般が低下

 日本で感染が急拡大しているのは、ブースター接種から半年が経過して、免疫力全般が低下していることに要因があります。

 このテーマの最初のブログで検討したように、mRNAワクチンは、新型コロナワイルス(のスパイク)に対する抗体を急減に増加させるため、抗体価は著しく上昇します。この状態に対して、免疫のバランスを調整する制御性T細胞が活性化し、増えすぎた抗体の産生を制御します。こうして抗体は、6ヶ月ほどでピーク時に比べて10%以下に低下するのです。

 ところで、制御性T細胞が抑制するのは、抗体を産生する体液性免疫だけではありません。制御性T細胞は、自然免疫と細胞性免疫を同時に抑制します。

 自然免疫は、外界から身を守るための最初の防波堤の役割を果たしています。自然免疫の抑制は、新型コロナ感染症だけでなく、すべての感染症に罹患しやすい状態を招きます。

 昨年の12月からブースター接種を開始した日本は、今まさにこうした状態にあるのです。

 

日本の感染拡大とワクチン接種率の関係

 日本の感染拡大が止まりません。7月16日に新規感染者数が11万665人となって過去最高を記録した後も、7月20日には15万2,536人、7月21日には18万6,246人、7月22日には19万5,161人、7月23日には20万975人と着々と増加しています。

 今回の感染拡大と、ブースター接種の関係をみてみましょう。以下の図は、2021年12月から始まったブースター接種の、日ごとのワクチン接種人数の推移と、半年後の2022年6月からの新規感染者数の推移を比較したものです。

 

                  図3

 

 図3のように、ブースター接種の接種人数の増加と、半年後の新規感染者数の増加は、概ね一致していることが分かります。

 もし、このまま両者の相関関係が続くとすれば、感染拡大は8月の中旬頃にピークを迎え、その後は11月過ぎまでゆっくり減少してゆくでしょう。そして、ピーク時には36 万人ほどの新規感染者数を出すことになるでしょう。

 ただしこの予想は、4回目のワクチン接種とブースター接種の追加を行わなかった場合です。もし、ワクチン接種が進めば、感染拡大のピークは多少低くなり、感染の期間はその分長くなると考えられます。しかし、この処置はあくまで一時的な、その場しのぎの対応でしかありません。なぜなら、半年後には再び感染の急拡大を招き、5回目のワクチン接種が必要な事態を招くだけだからです。

 

 こうしてわたしたちは、ワクチンの在庫処分セールの対象になりながら、ワクチン依存症に陥っていくことになります。ワクチン接種を繰り返せば繰り返すほど、ワクチンの効き目が減弱する一方で、副反応が増大してゆくことも知らされずに。

 今は表に出ていない副反応が誰の目にも明らかになったとき、政府や厚労省、そしてワクチンを推進した医師たちはこう言うでしょう。「ワクチンを接種したからこそ、最悪の事態を免れることができた。そして、ワクチンの副反応は、当時はまだ充分に解明されていなかったのだ」と。(続く)