2018-01-01から1ヶ月間の記事一覧

キリスト教の神はなぜ殺害されたのか(2)

前回のブログでは、ヨーロッパ社会がイスラム社会から圧倒されて劣等感を抱き、自らの自尊心を回復する目的で宗教改革を行った経緯を述べました。今回のブログでは、イスラムの神を超えるために、キリスト教の神に何が起こったのかを検討してみたいと思いま…

キリスト教の神はなぜ殺害されたのか(1)

フロイトによれば、一神教の系譜には「父親の殺害」が繰り返されています。人類の初期に強大な力を持って母親および姉妹のすべてを支配した「原父」は、兄弟たちによって殺害されました。イスラエルの民をエジプトから脱出させ、エジプトの一神教を強要した…

キリスト教社会はなぜ戦争を繰り返すのか(4)

前回までのブログで、ユダヤ教の神ヤハウェが、一地方の戦争神から唯一、全能の神へと成長し、さらに世界ばかりか全宇宙を無から作り出した究極の全能神になった経緯を概観してきました。 今回のブログでは、全能になった神が、キリスト教社会の戦争にどうよ…

キリスト教社会はなぜ戦争を繰り返すのか(3)

前回のブログでは、愛を説くキリストの教社会がなぜ戦争を繰り返すのかを、戦争神ヤハウェの性質と、ヤハウェに導かれた聖戦という側面から検討しました。今回のブログでは、戦争神ヤハウェが、唯一、全能の神に変貌していった過程を検討してみたいと思いま…

キリスト教社会はなぜ戦争を繰り返すのか(2)

前回のブログでは、愛を説くキリスト教社会がなぜ戦争を繰り返すのかを、キリスト教の教義的な側面から検討しました。今回のブログでは、その理由を、「神の性質」という側面から検討したいと思います。 旧約聖書に記された神 キリスト教社会が戦争を繰り返…

キリスト教社会はなぜ戦争を繰り返すのか(1)

前回までのブログで、キリスト教が愛を説く宗教であることを述べてきました。ところが、キリスト教を奉じた国々は、ローマ帝国からヨーロッパ諸国、そしてアメリカ合衆国に至るまで、幾度となく戦争を繰り返し、他国を侵略してきました。なぜ、愛を説く宗教…

キリスト教はなぜ愛を説くのか(4)

前回のブログでは、イエスがなぜ愛の重要性を示したのかを検討してきました。今回のブログでは、イエスがユダヤ教をどのように改革しようとしたのかについて、さらに検討を加えたいと思います。 神から愛される人 イエスによって、人は神の教え通りは生きら…

キリスト教はなぜ愛を説くのか(3)

フロイトは、原父殺害の記憶がユダヤ教を生み、さらにそれがキリスト教に発展したという説を展開しました。では、原父殺害の記憶から生まれたキリスト教が、なぜ愛を説く宗教になったのでしょうか。 ユダヤ民族と神との関係 フロイトは一神教の原点に、原父…

キリスト教はなぜ愛を説くのか(2)

前回のブログでは、フロイトが提唱した、モーセがエジプト人であり、しかもイスラエルの民に殺害されたという仮説をもとに、旧約聖書の『出エジプト記』を読み解いてきました。今回はこの仮説から、ユダヤ教、そしてキリスト教が誕生していく過程を検討した…

キリスト教はなぜ愛を説くのか(1)

世界はどうやって創られてこれからどうなっていくのか、世界はどのような原理で動いているのか、そして私たちはどこから来てどこにいくのか。こうした根源的な疑問に答えることが宗教の重要な役割です。 ところが、キリスト教は愛の宗教と言われるように、神…

ユダヤ人はなぜ虐殺されたのか(4)

これまでのブログでは、フロイトが指摘するキリスト教への憎悪が、集団の無意識の中で伝承してきたことを検討しました。そして、その無意識の記憶が、ルターやニーチェを通して、次第に意識化される過程を概観してきました。今回はその憎悪が、ヒトラーによ…

ユダヤ人はなぜ虐殺されたのか(3)

『モーセと一神教』の中でフロイトは、無理矢理押しつけられ、粗末に改宗させられたキリスト教に対する恨みは、克服されることなく、ヨーロッパ諸民族の無意識の中に伝承され続けたと指摘します。そして、キリスト教に対するこの恨みの念が、キリスト教を生…

ユダヤ人はなぜ虐殺されたのか(2)

前回のブログにおいて、ルターがキリスト教の宗教改革を断行する一方で、反ユダヤ主義の主張も行っていることを検討しました。そして、一見関連性のないこの二つの行為が、実は根底において命脈を通じていることも指摘しました。 では、この二つを繋ぐものと…

ユダヤ人はなぜ虐殺されたのか(1)

これまでのブログでたびたび登場してきた『モーセと一神教』には、驚くべき内容がたくさん記されています。しかし、フロイトの「夢判断」や「性欲論」に比べて、この最晩年の著作は広く知られているとは言い難いでしょう。これは実に残念でもったいないこと…

死の本能は存在するのか(3)

前回までのブログで、人が戦争や自殺を引き起こす心理的な機序を、死の本能に拠ることなく検討してきました。そして、戦争や自殺は、死の本能という概念を用いなくても説明することが可能でした。では、フロイトが唱えた死の本能(欲動)は存在しないのでし…

死の本能は存在するのか(2)

前回のブログでは、フロイトが死の本能を提唱するに至った経緯と、死の本能が戦争を引き起こす心理的な機序を、フロイトに従って述べてきました。戦争は本当に、死の本能によって引き起こされるのでしょうか。 文化によって引き起こされる戦争 わたしは、戦…

死の本能は存在するのか(1)

以前のブログでも触れましたが、現在の日本では、毎年3万近い人が自殺で亡くなっています。しかしこれはあくまでも自殺既遂者であり、自殺未遂者はその10倍の30万人を数え、さらに自傷や多量服薬までも含めるとその数は数百万人に上ると推計されていま…

人はなぜ戦争をするのか(3)

前回のブログでは、文化の発展が人々の攻撃欲動を増大させる仕組みをみてきました。今回は、増大した人々の攻撃欲動が、どのような結末を迎えるのかを検討してみたいと思います。 攻撃欲動が個人に向かうとき 増大する攻撃欲動に対する根本的な解決策を、果…

人はなぜ戦争をするのか(2)

前回は、生物の進化の途上で文化が誕生し、それが人類の生存や繁栄に多大な恩恵をもたらしてきたという文化の正の側面について検討しました。今回は文化が人類に与える問題点、つまり文化の負の側面について検討したいと思います。 文化による欲動の断念 精…

人はなぜ戦争をするのか(1)

私はとある総合病院に勤務している精神科医です。日々の臨床の中で、さまざまな患者さんと向き合い、治療を行っています。そこから得られた経験は、論文にまとめたり、著書として出版してきました。ここではそうした臨床経験を述べることは適切ではありませ…