4回目のワクチン接種は、本当に必要なのか(4)

 これまでのブログでも指摘したように、mRNAワクチンには、一時的な感染予防効果や重症化予防効果はあるものの、これらの効果は半年ほどで消失することが明らかになってきました。それだけでなく、半年以降になると、却って新型コロナ感染症に感染しやすくなったり、重症化を招きやすくなったりする事実も露呈してきました。

 前回のブログでは、新型コロナワクチンの接種が始まった2021年には、47,481人の超過死亡数がみられ、2022年に入ってからは、2ヶ月間ですでに19,993人の超過死亡数が出ていることを検討しました。

 今回のブログでは、7月に入ってから急増している新型コロナ感染症と、mRNAワクチンとの関係について検討したいと思います。

 

新型コロナの第7波が到来

 7月に入って、新型コロナ感染症の感染者数(正確にはPCR陽性者数)が急増してきました。11日に政府分科会の尾身茂会長は、「すでに第7波に入っている」という認識を示しました。

 以下は、昨年の1月から本年7月12日までの、新型コロナ感染者数の推移を示したグラフです。

 

            JX通信社 新型コロナウィルス 最新感染状況マップ

                  図1

 

 図1のように、新型コロナ感染者数は7月から急激に増加しています。もはや第7波に突入するのは確実で、12 日の時点ですでに12の県で過去最多を更新している現状から考えると、第6波を超える感染者数になる可能性が高いと思われます。

 厚生労働省に対策を助言する専門家組織は、今回の感染急増は、オミクロン「BA.2」株から感染力が1.3倍強い「BA.5」株に置き換わっているからであるとしています。また、新規感染者の増加は世界的な傾向で、世界保健機関(WHO)も警戒しているといいます。

 これらの情報は、事実なのでしょうか。

 

BA.5株は世界的に流行しているか

 まず。今回感染が急増しているのは感染力が強いBA.5株が流行しているからだ、とされている点について検討してみましょう。

 以下は、7月12日時点での、国別のブースター接種(3回目接種)率を現したグラフです。(新型コロナウイルスワクチン接種率の推移【世界・国別】 (sapmed.ac.jp)

 

                 図2

 

 図2のうち、ブースター接種率の低い順から、インド、南アフリカ、ロシアの3ヶ国の感染状況をみてみましょう。

 

                   図3

 

 ブースター接種率が2.3%と最も低いインドでは、2022年1月にオミクロン株の感染爆発をきたし(一番右の急峻な山です)、1月26日には28万6,384人の新規感染者を認めました。しかし、その後は感染増加を認めておらず、7月11日の新規感染者数は1万3,615人です。

 南アフリカは、オミクロン株のBA.2株、そして今回問題になっているBA.5株が発生したとされる国です。右から2番目の急峻な山がBA.2株、そして最も右がBA.5株を中心とした山であると考えられます。南アフリカのブースター接種率は5.9%ですが、特筆すべきはBA.5株のピークの方がBA.2株のピークより随分と低いことです。本当にBA.5株は、BA2株の1.3倍の感染力があるのでしょうか。

 ロシアのブースター接種率は、10.1%です。2月に急峻な山を認め、2月17日には17万8,725人の新規感染者を認めました。しかし、その後は感染者数は急激に減少し、7月12日には2,966人まで減少しています。

 以上の3ヶ国には、世界保健機関(WHO)が警鐘を鳴らすような新規感染者数の増加は認められません。

 

新規感染者数が日本より少ないアメリ

 上述の3ヶ国の次に接種率の低い、インドネシアサウジアラビアアメリカ合衆国の感染状況をみてみましょう。

 

                                                                  図4

 

 ブースター接種率が17.8%のインドネシアは、2月にオミクロン株による感染急増を認め(一番右の急峻な山です)、2月16日に6万4,718人の新規感染者のピークを迎えました。しかし、その後は感染者が急速に減少し、7月12日の新規感染者数も3,361人と感染は沈静化しています。

 サウジアラビアは1月に感染の急峻な山を認めましたが、感染者数は多くはなく、ピークであった2月16日の新規感染者数は、5,928人(日本の人口に換算すると約2万1,480人)です。そして、7月12日の感染者数は407人に過ぎません。

 アメリカのブースター接種率は、37.3%です。ファイザー、モデルナというmRNAワクチンを開発した会社の本社があるアメリカで、ブースター接種が未だ30%台に留まっているのは驚きの事実です。アメリカは1月に感染者が急増し、1月14日は88万41人の新規感染者数を認めました。しかし、その後は感染者は急速に減少し、7月12日に新規感染者は19万1,455人です。これは一見多い数のようですが、日本に人口に換算すれば7万2,964人になります。7月12日の日本の新規感染者数が7万5,978人ですから、ついに日本の感染者がアメリカを超えた日になってしまいました。

 

ブースター接種が進んだ国では

 次に、ブースター接種が進んでいる国々を見てみましょう。

 以下は、接種率の最も高い、韓国、ドイツ、イタリアの新規感染者数の推移です。

 

                  図5

 

 ブースター接種率が74.0%と最も高い韓国は、オミクロン株の急速な拡大によって、3月16日には62万1,317人の感染者数を記録しました。これは日本の人口でいえば、151万4千人(!)に相当する人数です。その後感染はいったん減少しましたが、7月12日には4万248人の新規感染者数を出しています。韓国では、今後BA.5株の感染拡大が懸念されている状況です。

 接種率が68.5%のドイツは、3月24日に31万8,387人の新規感染者数を認め、その後感染者はゆっくり減少しました。しかし、6月に入って感染者数は増加に転じ、7月12日には12万7,611人まで増加しています。

 接種率が68.3%のイタリアでは1月14日に20万869人の新規感染者数を出し、その後小さな波を経て減少して行きました。しかし、6月に入って急速に増加に転じ、7月12日には14万4,058人の新規感染者が出ています。

 以上のように、韓国ではまだ確認されていませんが、ドイツやイタリアではBA.5株と思われる感染の再拡大が始まっています。

 

日本ではかつてない急拡大が

 上述の3ヶ国の次に接種率の高い、日本、フランス、アルゼンチンの感染状況をみてみましょう。

 

                  図6

 

 ブースター接種率が65.0%の日本では、7月に入って新型コロナ感染者が急増しています。6月13日に7,942人まで減った新規感染者数は、7月12日の時点ではすでに7万5,978人に達しています。図6の日本のグラフでは、今回の感染の推移を示す線が、これまでにない急峻な傾斜をみせています。同様に増加しているドイツ、イタリア、フランスを超える速さで、日本の感染が拡大していることが分かります。

 接種率が62.2%のフランスは、1月25日に50万3,349人の新規感染者をし、その後は小さな山を挟んで感染は減少していました。しかし、6月に入ってから感染者が増加に転じ、7月12日の時点で18万3,633人の新規感染者数を出しています。

 接種率61.4%のアルゼンチンは、1月11日に13万4,439人の新規感染者数を出したあとに感染は減少し、現在まで感染の急激な増加は認めていません。

 以上のように、日本とフランスでは、BA.5株の感染急拡大が始まっています。

 

ブースター接種が進んだ国でBA.5株が拡大

 これまでの結果を検討してみましょう。

 オミクロンBA.5株と思われる感染拡大を起こしている国は、ドイツ、イタリア、日本、フランスで、これらの国では7月12日の時点で、いずれもブースター接種率が60%を超えています。一方で、ブースター接種率の低い国々では、感染の再拡大はみられません。このように、オミクロンBA.5株は、世界保健機関(WHO)が警鐘を鳴らすような世界的な再拡大ではなく、ブースター接種が進んでいる国で起こっていると言えるでしょう。

 ただし、ブースター接種率が高くても、韓国とアルゼンチンでは感染の再拡大は起こっていません。両国では1,2回目の接種で、アストラゼネカ製のワクチンやロシアのスプートニクVが多く用いられています。これらはウィルスベクターワクチンで、改変ウイルスを「運び屋」(ベクター)として使用し、新型コロナウイルスの遺伝子をヒトの細胞の核へと運ぶ(!)仕組みです。ウィルスベクターワクチンが、mRNAワクチンとは異なる効き方と副反応を示すのか、それとも両国がこれから再拡大をするのか、今後の経過を見守る必要があります。

 次に、南アフリカの感染状況をみると、BA.5株がBA.2株よりも感染力が強いとは必ずしも言えないことが分かります。なぜなら、オミクロン株の発祥の地とされる南アフリカでは、BA.2株の感染拡大の山よりも、BA.5株の山の方が小さいからです。

 つまり、現在新型コロナ感染症の急拡大が起こっているのは、より感染力の強いBA.5株が流行し始めたからではなく、ワクチン接種を繰り返したことによって、わたしたちが新型コロナ感染症に感染しやすくなっているからなのです。(続く)