ワクチン接種によってなぜ感染者数は増え、死者数は増加するのか(6)

 前回のブログでは、ワクチン接種を繰り返すことによって、新規死者数が増加する第3の理由について検討しました。

 延べブースター接種率(人口100人当たりのブースター接種回数)で世界一を独走し、オミクロン株対応型2価ワクチンを国民の40%以上が接種している日本は、ワクチン接種の巨大な実験場になっています。この実験場で、世界に例を見ない二つの特異的な出来事が発生しました。

 一つは、オミクロンBA.5株の感染爆発が、昨年の6月から現在(2023年の3月)にかけて、2回連続して起こったことです。これはマスコミでは一切報道されていませんが、

 同じ変異株の感染爆発が繰り返されたことは、世界で初めての出来事です

 通常は一度感染爆発が起これば、集団免疫が獲得されて感染が終息するからです。この特異な出来事は、ワクチン接種を繰り返すことによって免疫全般が抑制され、獲得されたはずの集団免疫すら失われることの例証であると考えられます。

 もう一つは、日本で連続して起こった第7波と第8波では、同じオミクロンBA.5株であるにも拘わらず、致死率が異なっていることです。

 第7波に比べて、第8波では致死率が最も少なく見積もっても50%以上増加しているのです。

 今回のブログでは、これらの原因を検討したいと思います。

 

2価ワクチンの問題

 第7波と第8波の間に行われたのが、オミクロン株対応2価ワクチンの接種です。2月20日の時点で、国民の43.4%が接種しているのですから、その影響は決して小さくないはずです。

 ところで、2価ワクチンとは何でしょう。

 2価ワクチンとは、2つのウィルスに対応するワクチンで、武漢株とオミクロンBA.1株のmRNA、または武漢株とオミクロンBA.5株のmRNAの2つで作られています。

 おかしいと思いませんか。なぜオミクロン株対応ワクチンに、武漢株のmRNAが入っているのでしょう。そもそも、武漢株対応ワクチンが効かなくなったという理由で、オミクロン株対応株ワクチンが開発されたはずです。

 それは、オミクロンBA.1型やオミクロンBA.5型のスパイクタンパク質からは、充分な抗体ができなかったからです。

 

 『東北有志医師の会〈緊急座談会第二弾!〉オミクロン型対応ワクチンをすすめない理由』村上康文名誉教授のスライドより

                図1

 

 図1は、モデルナのオミクロンBA.1型2価ワクチンの抗体価を示したものです。「前」と記されているのがワクチン接種前、「後」と記されているのがワクチン接種後の抗体価です。接種後にできた抗体のうち、武漢株に対する抗体が65.9%、オミクロン(BA.1+BA.5)株に対する抗体が34.1%です。

 2価ワクチンを接種して抗体価が上がっても、オミクロン株の抗体が34%しかなければ、オミクロン株の感染は防げないでしょう。

 

かくして感染爆発は繰り返された

 2価ワクチンを接種しても、感染が防げないことは、以前のブログで紹介したクリーブランドクリニックの研究(『Effectiveness of the Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Bivalent Vaccine』)で示されている通りです。

 

                  図2

 

 図2のように、4回以上の接種(ここでは、オミクロンBA.4/5株対応2価ワクチン)では、3回接種(武漢株対応ワクチン)と比べて累積罹患率が変わらない(つまり、ワクチンに効果がない)ばかりか、70日以降は累積罹患率が増加しています。

 70日以降に累積罹患率が増加しているという現象には、新たな観点からの考察が必要です。これまで制御性T細胞が果たしてきた役割、すなわちmRNAワクチンによって高まりすぎた抗体を抑制した結果、免疫全般が抑制されて再び感染が増加する現象は、ワクチン接種後半年ほどで現れていました。2価ワクチン接種後のわずか70日で感染増加が起こっているのには、別の現象が現れている可能性が考えられます。この点については、後に検討したいと思います。

 兎にも角にも、2価ワクチンを国民の40%以上が接種した日本では、オミクロンBA.5株の感染爆発が、以下のように繰り返されることになったのです。

 

                  図3

 

 2022年9月20日からオミクロンBA.1株対応2価ワクチンが、10月13日からオミクロンBA.5株対応2価ワクチンが接種された結果、図3で示されたように、2023年1月11日(BA.1株ワクチンから113日、BA.5株ワクチンから90日後)をピークとする感染爆発が起こることになったと考えられるのです。

 では、図3で示されているような、第7波に比べて第8波の新規死者数が増加しているのは、どうして引き起こされたのでしょうか。

 

2価ワクチン接種後に致死率が上昇

 図3をみると、第7波に比べて第8波では新規死者数が増加してように見えます。そこで両波の致死率を計算すると、以下のようになりました(第8波は3月2日までの数値です)。

 

  第7波   0.125%

  第8波   0.219%

 

 第7波に比べて、第8波の致死率は75%も増加しています。同じオミクロンBA.5株の感染にも拘わらず、2価ワクチン接種後に致死率が大幅に増加していることになります。

 ワクチン推進派は、新規感染者数が正確に把握されなくなっただけで、致死率は変化していないと主張しています。そこで、上記のクリーブランドクリニックの研究で示されている、ワクチン未接種者と接種者の感染率の変化から、2価ワクチン接種後の感染者数を推定した値で致死率を計算してみます。2価ワクチンを接種した4回以上接種者は、3回接種者より感染者が1.07倍増えています。そこで、第8波の感染者数を第7波の感染者数の1.07倍として計算すると、3月2日までの致死率は

 

  第8波   0.197%

 

 となります。やはり第8波の致死率は、第7波より58%も増加していることになります。

 2価ワクチンの接種が、重症化を予防しないばかりか、致死率を高めることはもはや明らかであると言えるでしょう。

 

早期の感染増強と致死率の上昇が同時に起こった

 以上のように、日本で起こった第7波と第8波をクリーブランドクリニックの研究をもとにして検討すると、次のようなことが明らかになりました。

 まず、2価ワクチンを接種すると、接種後わすか70日から感染増強効果が出現するため、接種後の早い時期から新規感染者が増加する現象が現れます。その結果として、日本では第7波に続いて第8波の感染爆発が連続して起こりました。

 次に、連続して起こった感染爆発では、2価ワクチンによる重症化予防効果が見られないばかりが、致死率が上昇していました。

 以上の2点が、同時に起こったのはどうしてでしょうか。

 わたしは、2価ワクチンによって、抗体依存性感染増強(ADE)引き起こされたのではないかと考えています。

 

抗体依存性感染増強(ADE)とは

 本来ウイルスから身体を守るべき抗体が、逆にウイルスの標的細胞への感染を起こしやすくして、病気の重症化を引き起こす現象が知られています。これを抗体依存性感染増強(antibody-dependent enhancement:ADE)といいます。また、感染を起こしやすくする抗体は、感染増強抗体と呼ばれます。ADEは、これまでにSARSやMARSといった、旧来のコロナウイルス感染症で認められてきました。

 2021年の5月25日に、大阪大学の荒瀬尚教授を中心としたグループが、新型コロナウィルスの感染を増強する抗体を発見したと発表しました。感染増強抗体が新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の特定の部位に結合すると、抗体が直接スパイクタンパク質の構造変化を引き起こし、その結果、新型コロナウイルスの感染性が高くなるといいます。

 以下は、電子家顕微鏡による解析と、その模式図です。

 

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               出典:日本医療研究開発機構 プレスリリース 

                  図4

 

 図4のように、感染増強抗体がスパイクタンパク質のNTD(N-Terminal Domain)という部位に結合すると、抗体によってNTDが牽引された結果、スパイクタンパク質の構造が変化し、RBD(Receptor Binding Domain 受容体結合領域)が開いた構造になります。RBDはスパイクタンパク質が細胞の受容体であるACE2と結合する領域であり、閉じた構造のRBDはACE2に対する結合性が低いものの、開いた構造のRBDが増えるとACE2に対する結合性が高くなり、感染性が強くなるのです。

 

ADE(抗体依存性感染増強)が起こるのは

 新型コロナ感染症では、ウィルスが細胞に侵入しにくくする中和抗体と、逆に侵入しやすくする感染増強抗体の両方が、人体の中でできることが明らかになりました。ADE(抗体依存性感染増強)が起こるかどうかは、両抗体がどれだけできるかに拠っています。

 荒瀬教授らの研究には、その点についても言及されています。以下は、中和抗体と感染増強抗体との関係を現したグラフです。

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          出典:日本医療研究開発機構 プレスリリース 

                 図5

 

 図5のように、中和抗体が充分量あった場合(赤線)には、感染増強抗体が増えても中和抗体はウィルスをACE2受容体に結合させないように作用します。しかし、中和抗体の量が少ない場合(青線と綠線)は、感染増強抗体が増えるにつれ、ウィルスがACE2受容体に結合しやすくなっています。

 つまり、感染増強抗体が産生される状況では、中和抗体が充分量でないと感染が起こりやすくなるのです。2価ワクチンでは、オミクロン株に対する中和抗体が充分に産生されませんでした。そうであれば、感染増強抗体が産生された場合には、却って感染を増加させるADE(抗体依存性感染増強)が起こった可能性が考えらます。

 図2で、2価ワクチン接種者(4回以上)の累積感染者数が、70日以降に3回接種者よりも増加している現象は、ADEによって引き起こされたのではないでしょうか。

 

感染増強抗体は感染を重症化させる

 それだけではありません。感染増強抗体は、感染症の重症化をまねく可能性を有しています。

         出典:日本医療研究開発機構 プレスリリース 

                                                         図6

 

 図6のように、中和抗体より感染増強抗体の方が多い人に、重症患者が多いことが分かります。つまり感染増強抗体は、感染をさせやすくするだけでなく、重症化の一因を担っているのです。

 2価ワクチンでは、オミクロン株の中和抗体がわずかしか産生ません。仮に感染増強抗体がそれ以上に産生されれば、ワクチン接種によって却って重症化がもたらされることになります。

 日本で起こったオミクロンBA.5株の感染爆発である第7波と第8波において、両波の間で接種された2価ワクチンによってADE(抗体依存性感染増強)が起こり、重症化がもたらされた可能性が考えられます。その結果死者数が増加し、致死率が少なくとも50%以上増加した要因になったのではないでしょうか。

 

 以上で検討してきたように、mRNAワクチンは感染を防がないばかりか、長期的に見れば感染者数を爆発的に増やし、死者数も増加させる最悪のワクチンであることが明らかになってきました。さらに、今問題になっている、超死亡数の増加に影響を与えている可能性も指摘されています。

 

 それでも日本政府は、ワクチン接種を続けるというのでしょうか。(了)