前回のブログでは、mRNAワクチンの接種を繰り返せば繰り返すほど、新規死者数が増えている現実を検討しました。ワクチンの追加接種が世界一進んでいる日本で、新規死者数が最も増加していること、ワクチン接種が進むなかでオミクロン株の第6波、第7波、第8波が起こり、感染の波が起こるたびに新規死者数が増加していることが明らかになっています。
では、mRNAワクチン接種を繰り返すと、なぜ新規死者数が増えるのでしょうか。
第1の理由は、ワクチンの重症化予防効果は2,3ヶ月をピークに低下を始め、7ヶ月が経過すると未接種よりも重症化を起こしやすくなることです。重症化予防効果が低下する機序は、感染予防効果が低下することと同様に、制御性T細胞の働きによって免疫機能全般が抑制されるからだと考えられます。
第2の理由は、ワクチン接種を繰り返すことによる感染者数の爆発的な増加です。感染者数が爆発的に増加したために、それにともなって新規死者数も増加したのです。
今回のブログでは、新規死者数が増加化した第3の理由について検討したいと思います。
国民の4割以上が2価ワクチンを打っている
mRNAワクチンの延べブースター接種率で世界を独走する日本では、世界に類を見ない現象が起こっています。
2月20日に首相官邸から、オミクロン株対応ワクチンを国民の43.4%が接種していることが公表されました。世界のほとんどの国で、従来型(武漢株対応)ワクチンの追加接種さえ行われなくなっている現状において、日本では国民の40%以上がオミクロン株対応2価ワクチンを接種していることになります。今や日本は、mRNAワクチンの巨大な実験場になっています。
その結果、なにが引き起こされたのか。まず起こったことは、オミクロンBA.5株の2度目の感染爆発です。みなさんは年末年始に第8波が訪れたことを何の疑問もなく受け入れているかも知れませんが、実はこれは非常に特異な現象です。他の国では感染がほぼ終息しているか、韓国や台湾のように感染拡大が起こっても、比較的小さな山に留まっています。オミクロンBA.5株の感染爆発が2度も続けて起こっているのは、世界の中で日本だけなのです。
第7波と第8波では致死率が異なる
この2度の感染爆発、すなわち第7波と第8波では、はっきりと異なる現象が認められます。それは、以下の新規感染者数と新規死者数の推移をみれは明らかでしょう。
日本経済新聞社 『新型コロナウィルス感染 世界マップ』をもとに作成
図1
図1の右から2番目の山が第7波で、最も右の山が第8波です。矢印は、各回のワクチン接種の開始日を示しています。
図1のように、新規感染者数では第7波の方が第8波より多いのに、新規死者数では第7波より第8波の方が多いことがわかります。つまり、同じオミクロンBA.5株の感染であるのに、第7波より第8波の方が、致死率が高いのです。
ちなみに、両波の致死率を2月22日の時点で計算すると、以下のようになりました。
第7波の致死率 0.125%
第8波の致死率 0.215%
第8波はまだ終息しておらず、しかも、新規死者数の山は新規感染者数の山より少し遅れて現れるため、第8波の致死率はもう少し上がる可能性があります。それでも現在の時点で、第8波の致死率は第7波より72%も増加していることになります。
これは何を意味するのでしょうか。
新規感染者数が把握できていない?
「ワクチンを接種しているのに致死率が増加している」
これは、ワクチン接種推進派にとって、実に都合の悪い現実です。mRNAワクチンには感染予防効果がないばかりか、重症化予防効果もないことが明らかになってしまうからです。そこで彼らは、実に珍妙な理屈を編み出しました。感染者数を厳密に計測しなくなっているために、正確な新規感染者数が把握できていないという主張です。
例えば、東京医科大学の濱田篤郎特任教授は、1月11日のNHK NEWS WEB で以下のように述べています。
「流行しているウイルスは第7波と変わらず、致死率などの病原性には今のところ大きな変化はないと見られるが単純に感染者数が増えている。感染者の報告数はまだ去年夏の第7波のピークには届いていないが、去年に比べて全数把握がしっかりとは行われなくなり、実際には第7波を超えるような感染が起きている状況が見えなくなっている。医療機関が何らかの形で関わる死亡者についてはある程度正確に把握できていて、死亡者数が過去最多の状況になっている」
要するに濱田教授は、死者数が増えているのは単純に感染者数が増えているからであると述べています。去年に比べて全数把握が行われなくなり、本当は7波を超える感染数の増加が起こっているはずだと言うのです。
これは本当でしょうか。もしそうなら、図1で第8波の新規感染者数は、現在の1.72倍の大きさ(面積)にならなければなりません。それほどまでに新規感染者数の把握は、大雑把になっているというのでしょうか。
クリーブランドクリニックの研究で補正してみても
2価ワクチンの接種によって感染者がどれほど増えているのか。その数値を推察することができる研究があります。以前のブログ(『ワクチン接種によってなぜ感染者数は増え、死者数は増加するのか(3)』)で紹介した、クリーブランドクリニックの研究です。
この研究は、medRxiv(メドアーカイブ:健康科学に関する未発表の電子出版を配布するインターネットサイト)に『Effectiveness of the Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Bivalent Vaccine』という題名で投稿されました。研究はクリーブランドクリニック関連施設の職員51,011人を対象に、同病院でオミクロン株対応2価ワクチンの接種が開始された2022年9月12日から12月12日までの期間で行われています。2価ワクチンを接種した職員は10,804人で全体の21%、調査期間内で新型コロナに感染した人は2,452人で全体の5%でした。
以下は、この論文に挙げられている累積罹患率を示したグラフです。
図2
図2は、調査期間中の累積罹患率の経緯を、ワクチンの接種回数ごとにみたグラフです。接種を重ねるごとに、罹患率が上昇していることが一目瞭然です。
また、ワクチン接種回数ごとの罹患しやすさは、ワクチン未接種者に比べて以下のようであったと上記の論文では指摘されています。
1回接種者 1.70倍
2回接種者 2.63倍
3回接種者 3.15倍
4回、5回接種者 3.38倍
この研究の4回、5回接種が、オミクロン株対応2価ワクチンです。日本では5回目の接種がオミクロン株対応2価ワクチンであり、その後に起こったのが第8波でした。
以上の結果から、日本の第8波の新規感染者数は、
第7波の新規感染者数 × 3.38 ÷ 3.15
で推定することができます。
この計算で出た新規感染者数によって計算し直すと、
第8波の致死率 0.192%
となりました。
第8波はまだ終息しておらず、この後にも新規死者数は増え続けるため、致死率はこの値よりも高くなるでしょう。それでも現時点において、第8波の致死率は、第7波より54%も増加していることになります。
以上のように、第8波の新規感染者が第7波より増加していると仮定しても、第8波の致死率は、第7波より少なくとも50%以上は増加していると考えられるのです。
2価ワクチンの影響
第7波と第8波の違いは何でしょう。両波とも感染したウィルスは、オミクロンBA.5株です。両波の違いは、図1で示したように、両波の間にオミクロン株対応2価ワクチンを接種していることです。日本では、現在国民の40%以上が2価ワクチンを接種しています。そうであればワクチン接種が、第8波の致死率に何らかの影響を与えていると考えられます。
ところで、オミクロン株対応ワクチンは、日本で接種されたBA.1株対応型にしてもBA.5株対応型にしても、いずれも2価ワクチンと呼ばれています。2価ワクチンとは、2つのウィルスに対応するワクチンで、武漢株とオミクロンBA.1株のmRNA、または武漢株とオミクロンBA.5株のmRNAの2つで作られています。
おかしいと思いませんか。なぜオミクロン株対応ワクチンに、武漢株のmRNAが入っているのでしょうか。そもそも、武漢株対応ワクチンが効かなくなったという理由で、オミクロン株対応株ワクチンが開発されたはずです。武漢株のmRNAなど、わざわざ入れる必要などないはずです。
オミクロン株のスパイクでは抗体ができなかった
それは、オミクロンBA.1型スパイクタンパク質やオミクロンBA.5型のスパイクタンパク質からは、充分な抗体ができなかったからです。それは抗原原罪という現象によっています。
免疫系は、ウィルスや細菌などの病原体に遭遇した際に、免疫記憶を優先的に利用します。例えばウィルス感染の場合、最初に出会ったウィルス株の記憶が免疫系に残り、その後に同じウィルスの変異株に感染した際にも変異株に特異的な抗体を作らずに、以前の株に対する抗体ばかりを産生してしまうことが起こります。
この現象は、抗原原罪と呼ばれています。抗原原罪は、ワクチンに対しても起こることが知られています。そのため、武漢株のワクチンを3回も4回も接種された人体からは、武漢株への抗体が優先して作られてしまうのです。
以上の結果、オミクロン株対応ワクチンを接種すると、武漢型スパイクタンパク質に対する抗体は多く誘導されますが、オミクロンBA.1型またはBA.5型スパイクタンパク質に対する抗体はわすかにしかできませんでした。
そこで武漢型のmRNAをワクチンに入れて、(見かけ上の?)抗体価を上昇させているのが2価ワクチンなのです。
わたしはこの2価ワクチンが、ついに日本で、抗体依存性感染増強(ADE)を引き起こしたのではないかと考えています。(続く)