ワクチン接種によってなぜ感染者数は増え、死者数は増加するのか(4)

 前回のブログでは、mRNAワクチンでは感染が防げないばかりか、接種すればするほど感染が起こりやすくなっている事実を、最新の研究をもとに検討しました。さらに、オミクロン株対応の2価ワクチンでは、これまでの武漢株ワクチンで認められた、接種後2週間から3ヶ月間の感染予防効果すら認められないことが示唆されました。

 加えて、ワクチン接種を重ねるごとに、免疫寛容(免疫を起こしにくくする)に働くIgG4の割合が増加することも最新の研究で明らかになりました。新型コロナのスパイクタンパク質に対するIgG4の増加は、新型コロナウィルスに対する免疫寛容をもたらし、そのことが感染増加を起こしている重要な要因になっていると考えられました。そして、IgG4の増加においても、制御性T細胞が関与していることが示唆されています。

 さて、今回のブログでは、mRNAワクチン接種が有効であると主張する最後の砦である、重症化予防効果について検討したいと思います。

 

重症化予防効果は本当にあるのか

 mRNAワクチンに感染予防効果がないことが明らかになってからは、ワクチン推進者たちは、ワクチンの重症化予防効果を接種の根拠にし始めました。岸田首相がワクチン接種直後に新型コロナに感染し、「ワクチンを接種したお陰で軽症で済んだ」と語ったことがそれを端的に示しています。

 ところが、ワクチンの重症化予防効果に疑問符を投げかける結果が明らかになっています。

 ちなみに、2023年2月12日時点での日本のワクチンの完全接種率(全人口における2回接種率)は83.1%で世界トップクラス、延べブースタ接種率(人口100人当たりのワクチン追加接種回数)は139.1%で断トツの世界一です(2位が韓国の79.7%)。今や日本は、ワクチン接種においては、世界のトップランナーです。ワクチンに効果があるなら、当然それなりの効果が現れているはずです。

 

   日本経済新聞社 『新型コロナウィルス感染 世界マップ』をもとに作成

                 図1

 

 図1は、日本における、新規死者数とワクチン接種の関係を現したグラフです。矢印は、ワクチン接種の各回ごとの開始日を示しています。

 図1を概観すれば、ワクチン接種の間隔が短くなっていること、それにも拘わらず新規死者数の山は、ワクチンを接種する度に大きくなっていることが分かります。これではワクチンに重症化予防効果がないばかりか、ワクチン接種が却って死者数を増やしているとしか捉えられません。

 

世界中で最も死者数が多い

 いやいや、ワクチンを接種したから死者数がこの程度で済んだんだという反論を、この期に及んでする人もいるでしょう。そういう方たちのために、ワクチン接種と死者数の関係を、世界と比較してみましょう。

 以下は、延べブースター接種率(人口100人当たりの追加接種回数)の推移です。

 

    『新型コロナウィルスワクチン接種率の推移【世界・国別】』より  

                  図2

 

 図2のように、世界各国がmRNAワクチンの追加接種を中止しているなかで、日本だけが延々とワクチンを打ち続けています。もし、ワクチンに重症化予防効果があるなら、日本の新型コロナ感染症による死亡者数は、世界中で最も少なくなっているに違いありません。

 では、現実の死者数はどうなっているでしょう。

 以下は、日本で追加接種が増え始めた2022年11月から現在までの期間、つまり過去100日間の、人口100万人当たりの新規死者数の各国比較です。

 

    『新型コロナウィルスワクチン接種率の推移【世界・国別】』より  

                  図3

 

 図3のように、残念ながら新規死者数においても、日本は世界一を独走しています。このようにワクチンには、重症化予防効果がないばかりか、死者数を却って増やしている可能性が高いのです。

 なぜ、このようなことが起こっているのでしょうか。

 

重症化予防効果も「瞬間最大風速」

 mRNAワクチンには、重症化予防効果があったはずです。重症化予防効果が90%以上ある、というのがワクチン接種の謳い文句でした。

 ところが、90%以上の重症化予防効果も、実は接種後2,3ヶ月をピークに、徐々に低下していくことが分かっています。

 2021年の10月27日に、新型コロナ感染症の重症化率は、mRNAワクチン接種の6ヶ月後に2.8倍に増加するという論文が、New England Journal of Medicine に発表されました(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2114228)。

 この論文は、イスラエルの国家データベースから収集された、2021年6月以前に2回のワクチン接種を受けたすべてのイスラエル居住者を対象しています。この中で、2021年7月11日から31日までの期間に確認された、感染および重篤な疾患に関するデータを使用して検討されたものです。

 それまでにも、時間の経過と共にワクチンの感染予防効果が減弱することは知られていましたが、この論文では、新たに重症化予防効果も減弱することが示されました。

 以下は、それを示したグラフです。

 

                図4

 

 図4は、各年代における1,000人当たりの重症化率の、時間的推移を示したグラフです。

 60歳未満では重症化率が低いため、接種後の期間において有意な変化は認められません。しかし、60歳以上では、ワクチン接種から時間が経過するにつれ、重症化率が高まっていることが分かります。その具体的な数値は以下の通りです。

 

  • 接種後2~3ヶ月の重症化率:0.12人/1000人
  • 接種後4ヶ月の重症化率:0.15人/1000人
  • 接種後5ヶ月の重症化率:0.26人/1000人
  • 接種後6ヶ月の重症化率:0.34人/1000人

 

 つまり、接種から時間が経つと重症化予防効果は徐々に低下しており、接種6ヶ月後の重症化率は、2~3ヶ月後の2.83倍に増加することが分かりました。

 このようにワクチンの重症化予防効果も一時的で、時間の経過と共に減弱していくことが明らかになりました。つまり、重症化予防効果が90%以上という謳い文句も、あくまで接種後2,3ヶ月の「瞬間最大風速」を現した数値に過ぎなかったのです。

 このように長期的にみれば、mRNAワクチンには重症化予防効果がないことが分かります。

 

65歳以上では未接種者よりも重症化する

 それだけではありません。接種の6ヶ月以降には、未接種者よりも重症化率が高くなっている可能性があります。

 名古屋大学の小島勢二名誉教授は、2022年4月28日の「アゴラAGORA 言論プラットホーム」のなかで、次のように指摘しています。

 小島氏は、国立感染症研究所(感染研)の公開情報から、わが国における重症化予防効果を検討しました。その際に、感染研のデータには未接種者数が記載されていないため、日本の年齢別人口統計と首相官邸ホームページに公表されている接種率を用いて、ワクチン未接種者の人数を推定しています。

 その結果を踏まえると、2022年3月28日から4月3日までにおけるオミクロン株の重症者のうち、ワクチン接種のよる重症化予防効果は以下のようになります。

 

                  図5

 

 図5のように、65歳以上でワクチンを2回接種した人は、ワクチン未接種の人よりも、重症化予防効果が46%も下がっています。

 さらに小島氏は、感染研のデータにある接種歴不明者を、2回接種者、3回接種者の割合に応じて振り分けて、2回接種者、3回接種者の人数に加えて計算した重症化予防効果も算出しています。

 その結果は以下の通りです。

 

                  図6

 

 図6のように、接種歴不明者も加えると、65歳以上で2回ワクチンを接種した人の重症化予防効果が、未接種者に比べて103%も低下していました。言い換えると、65歳以上で2回ワクチンを接種した人は、未接種者に比べて2倍も重症化しやすいことを示しています。

 この結果は、何を意味しているのでしょうか。

 ワクチンの重症化予防効果は、当初はそれなりの効果を示すものの、時間の経過と共に減弱して行くことが分かります。そして、接種後7ヶ月以上が経過した時点では、未接種者よりも重症化を招いてしまう可能性が示唆されたのです。 

 

厚労省は重症化率や致死率を開示していない

 ところで、2022年4月に小島勢二名誉教授が指摘した記事を、今更ここで取り上げたのには理由があります。それは厚労省が、mRNAワクチンの接種回数ごとの重症化率や致死率を公表しなくなっているからです。

 mRNAワクチンに感染予防効果がないものの、重症化予防効果があるために接種を推進すると主張するなら、厚労省は接種を重ねるごとに重症化や致死率がどのように変化したかを公表しなければなりません。それにも拘わらず、厚労省はワクチン接種回数ごとの重症化率や致死率を公表しなくなっているのです。そこには、ワクチン接種推進派にとって、不都合な事実が存在していることが窺われます。

 去る2月2日に、福島雅典京都大学名誉教授が、厚労省が2022年の7月以降の重症化率や致死率を公表しないことに対して、行政文書の開示請求を求めて訴訟を起こしたのはそのためです。

 裁判には長い時間を要するでしょう。しかし、わたしたちはそれを待つまでの間にも、明らかになっている資料からmRNAワクチンが新型コロナ感染症に与える影響を類推することはできます。

 検討を続けましょう。

 

感染者数の増加が死者数を増やしている

 mRNAワクチンの接種が死者数を増加させている一つ要因は、感染者数自体が増加していることです。

 これまでのブログで検討してきたように、ワクチン接種を繰り返すことによって感染者数は増加しています。特にオミクロン株になって感染力が増強してからは、日本では感染者数が爆発的に増加しました。感染者が爆発的に増加すれば、たとえ致死率が減少しても、結果的には死者数も増えます。

 以下は、新規感染者数と新規死者数の変化をみたグラフです。

 

   日本経済新聞社 『新型コロナウィルス感染 世界マップ』をもとに作成

                 図7

 

 図7の左から3つの山が、日本におけるオミクロン株の感染を現しています。3つの山のうち最も左の山が6波でオミクロンBA.2株、真ん中の山が7波でオミクロンBA.5株、最も右の山が8波でやはりオミクロンBA.5株です。

 図7を見ると、オミクロン株では感染力が強いため感染者が爆発的に増え、そのために死者数もそれに伴って多くなっていることが分かります。

 ところが、これは第7波までにおいて言えることで、第8波では別の要因が生じている可能性があります。

 この点については、次回のブログで検討することにしましょう。(続く)