ワクチン接種によってなぜ感染者数は増え、死者数は増加するのか(3)

 前回のブログでは、mRNAワクチンの接種を繰り返すと、なぜ感染者数が増え、死者数が増加するのかという疑問を、制御性T細胞の働きから検討しました。

 mRNAワクチンが、新型コロナウィルスのスパイクタンパク質に対する抗体価を異常に高め、またmRNAが入り込んだ全身の細胞が細胞傷害性(キラー)T細胞に攻撃されるため、行き過ぎた免疫を抑制しようとして制御性T細胞(Treg)が活性化されます。制御性T細胞は、抗体を産生する体液性免疫、細胞傷害性T細胞を活性化する細胞性免疫、そして、わたしたちの体の最初の防御壁である自然免疫をも抑制します。そのため、mRNAワクチンを接種することにって、長期的には全ての病原体に対する免疫力が低下します。

 さらに、制御性T細胞は、メモリーB細胞(おそらくはメモリーT細胞も)によって長期的な記憶が形成されることも阻んでおり、ワクチンによって導かれる免疫記憶が残されることも阻害されるため、変異株が広まる度に感染爆発が繰り返されることになるのです。

 今回のブログでは、感染者が増え続ける理由を、最新の研究結果を踏まえて検討したいと思います。

 

ウォール・ストリート・ジャーナルの指摘

 アメリカのウォール・ストリート・ジャーナル誌が「ワクチンには感染予防効果がないばかりか、接種を繰り返すとより感染しやすくなるのではないか」という記事を掲載したと、週刊新潮(1月19日号)が報じています。

 報道の根拠のなった論文が、medRxiv(メドアーカイブ:健康科学に関する未発表の電子出版を配布するインターネットサイト)に投稿された『Effectiveness of the Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Bivalent Vaccine』という論文です。

 この論文はアメリカのクリーブランドクリニックの医師たちが投稿したもので、関連施設の職員51,011人を対象に行われています。調査期間は、同病院でオミクロン株対応2価ワクチンの接種が開始された2022年9月12日から12月12日までの13週です。2価ワクチンを接種した職員は10,804人で、全体の21%でした。調査期間内で新型コロナに感染した人は2,452人で、全体の5%でした。

 この調査から、これまでの日本での感染状況を裏付けるような結果が明らかになりました。

 

接種を繰り返すほど感染しやすくなる

 以下は上掲の論文でまとめられた統計結果です。

 

                  図1

 

 図1のオレンジで囲った部分に注目して下さい。

 この結果は、ワクチンを1回も接種していない人に比べて、ワクチン接種者がどれだけ新型コロナに感染しやすかったかを現しています。

 それによれば、ワクチン未接種者に比べて感染のしやすさは

 

  1回接種者      1.70倍

  2回接種者      2.63倍

  3回接種者         3.15倍

  4回、5回接種者     3.38倍

 

 になっています。

 この結果はまさに、ワクチン接種で感染が防げなかったばかりか、接種すればするほど感染が起こりやすいことを明らかにしたものであると言えるでしょう。

 

2価ワクチンは有効期間すらなかった

 それだけではありません。今回使用されたオミクロン株対応ワクチンには、これまでの武漢株ワクチンであったような、有効期間すら存在しないことを示唆しています。

 以下は、上掲の論文に掲載された、累積罹患率(cumulative incidence)を示したグラフです。

 

                  図2

 

 図2は、調査期間中の累積罹患率の経緯を、ワクチンの接種回数ごとにみたグラフです。接種を重ねるごとに罹患率が上昇していることが、一目瞭然です。この点については後に検討しますが、ここでは2価ワクチンの効果、すなわち4回目または5回目の接種の効果について注目してみましょう。

 3回目と4回目以上の罹患率の上昇線とを比較すると、接種後70日辺りまでは上昇線が重なっています。3回目と4回目以上との累積罹患率が変わらないことは、何を意味するのでしょう。

 一見すると4回目以上の接種、すなわち2価ワクチンが効果を示したように見えますが、そうではありません。もし2価ワクチンが効果を発揮したなら、3回接種者よりも新規感染者が少なくなるはずです。つまり、この累積罹患率のグラフは、これまでのワクチン接種で認められた、接種後2週間から3ヶ月間の感染予防効果さえ認められないことを示しています。それどころか、70日以降になると、4回目以上では新型コロナの罹患率が3回接種者より増加しているのです。

 この結果は、2価ワクチンは感染予防に全く効果がなかったばかりか、感染を却って増加させていることを明らかにしています。これでは、感染を広めるためにわざわざワクチンを打っているとしか思えないでしょう。

 

IgG4へのクラススイッチが起こる

 それにしても、ワクチンを接種すればするほど感染しやすくなるのは、どうしてなのでしょうか。

 1月27日の SCIENCE IMMUNOLOGY に、ワクチン接種を繰り返すと、IgG4へのクラススイッチが起こるという衝撃的な論文が掲載されました(『Class switch toward noninflammatory, spike-specific IgG4 antibodies after repeated SARS-CoV-2 mRNA vaccination』)。

 IgG(免疫グロブリンG)は血液や細胞外液に存在して、ウィルス、細菌、真菌などの病原体から身体を守るための最も重要な抗体です。IgGには、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4の4つのサブクラスがあることが知られています。このうちIgG1とIgG3は病原体を排除するための活発な炎症反応を誘導するのに対して、IgG4は炎症を起こさないように、すなわち免疫寛容的に働きます。

 IgG4は、過剰なアレルギー反応、たとえば食物アレルギーや花粉症などを抑制するためには有効に働きますが、病原体に対して産生されれば、病原体の侵入を見過ごすように働くことになってしまいます。

 

ワクチン接種を繰り返すとIgG4が増加する

 上掲の論文によれば、mRNAワクチン接種を繰り返した後の、IgG4の変化は以下のようになりました。 

                  図3

 

 図3のように、mRNAワクチンpost 2nd(2回接種後ー実際は10日後)までは、IgG4の上昇は見られていません。しかし、FU post 2nd(2回接種後フォローアップー210日後)からIgG4は上昇し始め、post 3rd(3回接種10日後)ではさらに上昇しました。そして、FU post 3rd (3回接種180日後)でも、IgG4は高い数値を示していました。

 以上のIgG4の変化を、IgG全体の中での割合で示したのが以下のグラフです。 

 

                  図4

 図4のように、IgG全体に占めるIgG4の割合は、mRNAワクチン2回接種10日後、2回接種210日後、3回接種10日後、3回接種180日後と推移するにつれ、次第に大きくなっています。これが4回目接種、5回目接種となれば、IgG4の占める割合はさらに高まることが予想されます。

 IgG4が増加すればするほど、新型コロナウィルスのスパイクタンパク質に対する免疫寛容が高まります。すなわちそれは、新型コロナに感染しやすくなることを示します。ワクチン接種を繰り返せば繰り返すほど、感染率が上昇している原因の一つがここにあると考えることができます。

 

制御性T細胞がIgG4へのクラススイッチを促す

 では、ワクチン接種を繰り返すたびにIgG4が上昇するのはどうしてでしょうか。

 上掲の論文には、「インターロイキン10と協力してインターロイキン4がIgG4へのスイッチを誘導する」と述べられています。

 インターロイキンとは、サイトカイン(細胞が出して細胞に働きかけるタンパク質)の一種で、主に免疫系細胞から分泌される、細胞間のコミュニケーション機能を果たす生理活性物質です。このうちインターロイキン10は抑制性サイトカインとして知られており、主にヘルパーT細胞が産生しますが、NKT細胞やメモリーT細胞、そして制御性T細胞でも産生されることが分かっています。

 制御性T細胞の発見者である坂口志文大阪大学免疫学フロンティア研究センター教授も、制御性T細胞(Tレグ)が免疫抑制を実現する手段の一つとして、インターロイキン10(IL-10)を産生する機序を挙げています。

 

 「たとえば、外来抗原に常時さらされている腸管粘膜のような特定の条件下において、Tレグは、免疫抑制性サイトカインであるIL-10を産生・放出し、抗原提示細胞の成熟を抑えることで免疫抑制を実現している」(『免疫の守護者 制御性T細胞とはなにか』1)154ー155頁)

 

 このように、IgG4へのクラススイッチには、制御性T細胞が関与している可能性が考えられます。

 mRNAワクチンを接種するたびに過剰な免疫が惹起され、それを抑制するために制御性T細胞が活性化されます。制御性T細胞は過剰になった免疫全般を抑制すると共に、IgG4も増やします。この過程が繰り返されることで、全IgGに占めるIgG4の割合がさらに大きくなり、そのことが新型コロナウィルスへの感染しやすさを、ワクチン接種ごとに高めていると考えられるのです。(続く)

 

 

文献

1)坂口志文 塚﨑朝子:免疫の守護者 制御性T細胞とはなにか.講談社,東京,2020.