新型コロナ肺炎の後遺症は(1)

 8月3日に全身倦怠感と38.9度の発熱で発症した新型コロナ感染症は、その後肺炎を併発し、2週間の入院治療を要することになりました。一時期血中の酸素飽和度が低下して「中等症Ⅱ」まで病態が悪化しましたが、適切な治療を受けることによって改善し、8月24日に無事退院することができました。

 ただし、新型コロナ肺炎は改善しましたが、全身の後遺症は残りました。今回からのブログでは、わたしが経験した新型コロナ肺炎の後遺症について述べたいと思います。

 

普通に歩けなくなっていた

 先のブログでも書きましたが、退院して一番驚いたことは、病室から出たときに普通に歩けなくなっていたことです。右足の付け根に力が入らなくなっており、右足全体がスムーズに前に出ません。そのため右に傾きながら、場合によっては右手でものを掴みながらでないと歩けませんでした。

 平面でもそうなのですから、坂や階段では予想以外に歩きにくくなっていました。さっそく下りの階段でこけました。幸い怪我はしませんでしたが、擦り傷を負ってしまいました。

 その後も歩行障害は続きました。右足全体が麻痺したようになって力が入らず、引きずるようにしないと歩けません。そのため、病院の駐車場から病院に入るまでの数百メートルを歩くことが苦痛になりました。病院の中でも、階段を使う機会が減りました。上りは2階くらいしか階段を使わなくなり、下りでも急いでいるときは階段を使わなくなりました。

 わたしが復職後一番困っている後遺症は、この歩行障害であると言えるかも知れません。

 

体重が5キロ減っていた

 退院してもう一つ驚いたことは、新型コロナに感染した3週間で、体重が5キロ減っていたことです。

 確かに感染した当初は食べ物の味が辛く感じられ、食欲がありませんでした。しかし、入院3日目から食欲が回復し、その後は食事を完食していました。入院中は病室から出られず、ほぼベッド上で横になった生活をしていました。そのため、当然体重は戻っていると思っていました。

 ところが、退院直後にジムに行って体重を計ったところ、新型コロナに感染する3週間前に比べて、体重が5キロ減っていたのです。これには、本当に驚きました。

 先のブログでも書きましたが、わたしは糖尿病の家系で、半年ほど前には糖尿病の内服薬またはインシュリン注射が必要な状態になっていました。思うところがあって治療はすぐには始めず、妻に協力してもらいながら、炭水化物を極力減らす食事療法を行っていました。その結果として、体重が5キロほど減り、血糖の平均値がようやく改善してきたところでした。

 つまり半年前に比べて、糖尿病の食事療法で5キロ、さらに新型コロナ肺炎になって5キロ、合わせて10キロ体重が減ったことになります。こんな体重は、大学時代以来経験したことがありません。しかも、当時のような体脂肪の少ない筋肉が主体の身体ではありませんから、体重の低下は主に筋肉量の低下からきているでしょう。

 鏡で見れば一目瞭然でしたが、退院後のわたしの身体は、筋肉が落ちた痩せ細った病人(または老人)の身体になっていたのでした(涙)。

 

呼吸障害はないが咳、痰は続く

 入院3日目から酸素飽和度が低下して、わたしは3日間鼻から酸素の投与を受けました。それ以降は呼吸状態が改善して、酸素飽和度は正常値が続いています。まだ激しい運動は行っていませんが、ジムで水中ウオーキングを行っても息切れがしたり、呼吸困難が生じることはありません(水の中で歩く方が、外で歩くよりも楽なのです)。先日100メートルだけクロールでゆっくり泳いでみましたが、それほど苦しくなく泳ぐことができました。このように新型コロナ肺炎の一番の後遺症である呼吸障害は、幸いにも現在までのところみられていません。

 一方、退院後も痰や鼻水、そして咳は続いています。ただその程度は軽く、自分が行っている診療に支障が出るようなことはありません。また、咽頭痛や味覚異常、嗅覚異常などの症状はまったく出現していません。

 以上のように、肺炎自体の後遺症としては呼吸障害は顕在化していないものの、咳、痰が続いている状態です。

 

夜間にじんま疹が出現

 これは入院中からありましたが、夜間を中心にからだが痒くなり、所々に膨隆疹が出ます。これはじんま疹と考えられ、一時的に出現するだけですぐに消失します。それは退院後も続いています。入院中はからだ全体に出ましたが、退院後は両足に出ることが多いようです。

 ただ、こうした夜間のじんま疹は、毎日必ず出るわけでもなく、出ても比較的直ぐに収まるので、それほど気になってはいません。

 

仕事には何とか復帰

 8月24日(木)に退院した後、8月25日(金)には職場を訪れて、たまっていた書類の整理などを行いました。そして、土日は地元に帰ってゆっくりと養生し、8月28日(月)から本格的に復職しました。

 先に書いたように、歩行障害には悩まされましたが、呼吸障害もなく、診療自体は滞りなくこなすことができました。患者さんたちには心配をかけてしまいましたが、自分自身が患者の立場になって感じるところも多々ありましたから、それを診療に活かすこともできました。

 特に、生きる上での身体の大切さ、生命活動のすごさ、素晴らしさは、病気になって初めて感じられることでもあります。このことは、精神医療を行ううえで、根本的に大切なことだと感じました。

 また、わたしは今回の入院中に、臨済宗の禅についての本を読むことができて、心が成長すること、心が安定して存在することにおける身体の重要さに気づくこともできました。この点については、また機会を改めて述べたいと思います。

 

 いずれにしても、新型コロナ肺炎の後遺症はまだまだ続きそうです。引き続き経過をみていきたいと思います。(続く)