4回目のワクチン接種は、本当に必要なのか(8)

 2021年に始まった、日本の超過死亡の増加が止まりません。2021年の1年間の超過死亡数が4万7,948人だったのに対し、2022年に入ると、1月から4月までの4ヶ月間で超過死亡数はすでに3万8,133人にのぼっています。このままでは2022年の日本は、戦後最大の超過死亡数を出すことになるでしょう。この最悪の事態を防ぐためには、超過死亡数がなぜ生じているのかを解明する必要があります。

 前回のブログでは超過死亡の要因を、感染が拡大していてワクチンを接種していない時期と、感染が終息した後にワクチン接種が進んだ時期を比較することで、超過死亡が「広義の新型コロナ関連死」と「広義のワクチン死」から生じている可能性を指摘しました。

 広義の新型コロナ関連死、すなわち病床の逼迫や行動自粛による死亡者の増加は起こり得るとしても、広義のワクチン死、すなわちワクチン接種によって他の疾患を発症するなどして死亡者が増加することが本当に起こるのかという指摘はあるでしょう。

 そこで今回からのブログでは、疾患別の超過死亡数を分析することによって、広義の新型コロナ関連死と広義のワクチン死について、さらに検討を加えたいと思います。

 

超過死亡数の異常な増加

 日本で新型コロナ感染症が最初に発生した2020年には、日本の超過死亡数は-34,744人でした。これは、例年よりも3万4千人以上死者数が少なかったことを示しています。2020年には狭義の新型コロナ関連死が3,491人も存在したにも拘わらず、日本全体では死亡者数が減っていたという、他国では見られない現象が起こっていたのです。

 これに対して、ワクチン接種が始まった2021年1月から12月までの超過死亡者数は、47,481人でした。つまり、2021年は一転して、4万7千人以上の人が例年より多く亡くなっていました。さらに、ワクチンのブースター接種が進んだ2022年は、1月から4月までの超過死亡数は、すでに3万8,133人にのぼっています。

 こうした経緯から、超過死亡数の増加はワクチン接種によって起こっているという声が上がっています。一方で、超過死亡は感染急増に伴う医療逼迫が原因だという指摘もあり、本当のところはよく分かっていませんでした。

 そこで重要なのが、感染が拡大していてワクチン接種が進んでいない時期と、感染が終息していてワクチン接種が進んだ時期の比較です。

 2021年には、まさに両者に相当する時期が存在しています。

 

2021年を3期に分けて検討する

 以下は、2021年のワクチン接種率、新型コロナ感染以外の超過死亡数、新型コロナの新規感染者数を現したグラフです。

 

                 図1

 

 図1のように、ワクチン接種の進展と新型コロナ感染の拡大と終息との関係から、2021年を以下の3期に分けることができます。

Ⅰ期(1月から5月まで):新型コロナ感染症の第3波と第4波によって感染拡大が繰り返される一方で、ワクチンはまだほとんど接種されていなかった時期(5月31日時点の2回接種率3.2%)。

Ⅱ期(6月から9月まで):新型コロナ感染症の第5波で感染が急拡大し、同時にワクチンの大規模接種が開始されて接種率が上昇した時期(9月30日時点の2回接種率62.2%)。

Ⅲ期(10月から12月まで):感染がほぼ終息して医療現場が通常の状態に戻り、行動制限が緩和された時期。一方で、ワクチン接種はさらに進行した(12月31日時点の2回接種率79.1%)。

 前回のブログでは、各時期の新型コロナ感染症以外で生じた超過死亡数を比較しましたが、今回はさらに疾患別の超過死亡数を比較してみましょう。

 

疾患別の超過死亡数

 以下は、『日本の超過および過小死亡数ダッシュボード(日本の超過死亡数・過少死亡数 | exdeaths-japan.org)』から算出した、上述のⅠ期からⅢ期までの、疾患別の超過死亡者数です。

 

                  図2

 

 図2をみると、Ⅰ期では循環器系疾患と老衰が原因の超過死亡数が多く、呼吸器系疾患では超過死亡数は減少しています。これに対してⅢ期では、循環器系疾患、呼吸器系疾患、悪性新生物、その他で超過死亡数が増えていることが分かります。

 これらの動向から、何を読み取ることができるでしょうか。

 

一昨年の死因と比較してみる

 2021年のⅠからⅢ期の疾患別の超過死亡者数の特徴を明確にするために、2020年の疾患別死亡割合と比較してみましょう。

 以下の左側は、2021年のⅠからⅢ期の各期の中で、各疾患の超過死亡数がどれだけの割合を占めるかを示した表で、右側は2020年の疾患別死因割合を示した円グラフです。

 

                 図3

 

 まず、Ⅰ期から分析してみましょう。Ⅰ期は新型コロナ感染症の第3波と第4波が起こり、まだワクチンの2回接種率が3.2%だった時期です。

 Ⅰ期で増加している超過死亡は、循環器系疾患(2020年15.0%→Ⅰ期超過死亡42.9%)と老衰(同9.6%→同27.7%)であり、特に循環器系疾患の増加が顕著です。

 逆に超過死亡が少ないのは、悪性新生物(同27.6%→同4.2%)と呼吸器系疾患(同8.8%→同-13.9%)で、呼吸器系疾患は超過死亡がマイナスになっています。

 

呼吸器疾患死がマイナス?

 新型コロナ感染症というと、重症化すると肺炎が進行して呼吸不全になり、体外式膜型人工肺 ECMOextracorporeal membrane oxygenation)を使用する様子が報道されるなど、呼吸器疾患で死亡するという印象が強いでしょう。Ⅰ期で呼吸器系疾患の超過死亡数がマイナス、つまり例年より減少しているというのは、少し奇異な印象を抱かれるかも知れません。

 しかし、これには理由があります。ここで挙げられているのは、新型コロナ感染症以外で生じた呼吸器系疾患の超過死亡数です。つまり、新型コロナ感染症が原因になっている場合を除けば、この時期には呼吸器系疾患で亡くなる人は例年より減っていたのです。

 その原因は、二つ考えられます。

 一つは、新型コロナ感染症の予防のために、手洗いやうがいをし、3密を避ける行動をとったために、肺炎が減ったという可能性です。新型コロナ感染症を避けるための行動が、肺炎を始めとした呼吸器疾患を減少させたのです。

 もう一つは、PCR陽性であれば全て新型コロナ感染死とされる診断基準から、通常の肺炎死が新型コロナ感染死と診断されてしまっている可能性です。日本では、PCR検査のCt値が40から45と他国より高いため、ウィルスの破片があるだけで陽性と判定されてしまいます。そのため、本当の死因は肺炎であっても、統計上は新型コロナ感染症死として計上されている事例は多いのではないでしょうか。

 

行動自粛で老衰死が増加

 Ⅰ期で老衰が原因の超過死亡数が増加してる理由として考えられるのは、感染拡大による行動の自粛でしょう。

 外出自粛のほか、学校を含む施設の使用停止、音楽やスポーツイベントなどの開催制限、飲食店の時短要請などができる緊急事態宣言は、以下の期間で発令されていました。

  • 緊急事態宣言
    • 第一回:2020/4/7~5/25
    • 第二回:2021/1/8~3/21
    • 第三回:2021/4/25~6/20
    • 第四回:2021/7/12~9/30

 Ⅰ期の5ヶ月間のうち、3月22日からの4月24日の1ヶ月間を除いて、ほぼ緊急事態宣言が発令されていたことになります。

 緊急事態宣言に伴う行動の自粛は、高齢者の健康を損ねることになったでしょう。自宅に引きこもってばかりいれば、体力が低下して病気に罹りやすくなります。人との関わりが乏しくなれば、心の健康にも悪影響が生じ、うつ病認知症が悪化することも考えられます。その結果、体力や気力が低下して老化が進行し、細胞や組織の能力が全般的に低下して死亡したと判断される老衰死を増やすことになったのでしょう。

 

医療逼迫で循環器疾患死が増大

 最後に、Ⅰ期で循環器系疾患の超過死亡が、特に増大している理由を考えてみましょう。

 新型コロナ感染症の第3波と第4波は、第5波以降と比べると感染者数は少なく、波は小さいのですが、重症化率は比較的高い状態を保っていました。致死率を計算すると第3波が2.1%、第4波のアルファ株が1.7%であり、第5波のデルタ株の0.35%と比べるとまだ高い状態にありました。

 そのため、都道府県から指定された病院の病床は逼迫しました。日本は人口あたりの病床数は世界一ですが、新型コロナ感染症感染症法の二類相当に指定されていたため、治療ができる病床は、各都道府県が指定した病院に限られるからです。指定される病院の多くは、地域医療の中核を担う病院であり、重症者の治療を行う病院でもあります。したがって、新型コロナ感染症の患者が重症病床を占有すると、他の重症疾患の治療が滞ってしまいます。

 重症疾患の治療が滞った際に、もっとも影響を受けるのが循環器系疾患だと考えられます。特に心筋梗塞や致死性不整脈、大動脈解離などといった疾患は、一分一秒が生死を分けます。発症した際に救急車を呼んでも来ない、または救急車が来ても受け入れてくれる病院がない、または病院が見つかっても医師の手が回らないといった状況で、命を失った人が多く存在したのではないでしょうか。

 

循環器疾患死の増大は人災か

 そうであったとすると、循環器系疾患の超過死亡数が増大しているのは、新型コロナ感染症の治療を地域の中核病院に集中させ、その他の重症疾患の治療が行えなくなったことに原因があります。

 循環器系疾患の治療を過不足なく行うためには、新型コロナ感染症の治療ができる病院を全国的に増やすことが必要不可欠です。そのためには、新型コロナ感染症を、感染症法の二類相当からインフルエンザと同じ五類に引き下げなければなりません。ところがこの決断を下すことが、日本の政治家にはできませんでした。というか、未だにできていないのです。

 非常に優れた政治家であれば、第3波の現状を分析して五類に下げることができたでしょう。新型コロナ感染症の危険性をヒステリックに煽るマスコミからは、この決断は総攻撃を受けることになったと思われますが、国民の命を守るために政策を断行するのが政治家の役割のはずです。

 次に五類に下げる機会だったのは、オミクロン株による第5波が始まる前でした。第5波はインド株とも呼ばれて、日本で流行する前にインドで爆発的な感染増加があり、医療の緊迫した状況が日本でも報道されていました。しかし、2021年7月の時点では、インドでのオミクロン株の致死率は0.6%まで下がっていることが分かっていました(2021年7月17日のブログ『東京五輪はなぜ無観客になったのか 見えない影に怯える人たち(2)』をご参照下さい)。そのため日本で第5波の急拡大が起こる前に、五類に下げることは可能だったと思われます。

 しかし、マスコミは視聴率を稼ぐために新型コロナ感染症の恐怖を煽り続け、日本医師会は開業医や私立病院が新型コロナ感染症の治療に携わることがないように五類降格に反対し続け、政府や都道府県知事は支持率を下げないために行動自粛とワクチン接種一辺倒の政策を続けました。

 このように、Ⅰ期における循環器系疾患や老衰による超過死亡数の増加は、マスコミと日本医師会、そして政治家によってもたらされた「人災」と言っても過言ではないでしょう。(続く)