新型コロナ肺炎の後遺症は(2)

 前回のブログでは、わたしが経験した新型コロナ肺炎の後遺症について述べました。今回のブログでも、引き続き後遺症のその後について、述べておきたいと思います。

 

糖化ヘモグロビン(HbA1c)値が上昇

 新型コロナ肺炎が、血中の酸素飽和度が低下する「中等症Ⅱ」まで悪化したために、わたしは入院中にステロイドを10日間使用しました。これは悪化した新型コロナ肺炎を治療するために必要な治療でしたが、その副作用として血糖値が上昇します。わたしのように糖尿病の素因があると、この副作用はより出現しやすいため、入院中は血糖値を計りながら、インシュリン製剤の皮下注射を打っていました。

 それでも血糖は、正常よりもかなり高い値を示していました。その影響でしょうか。退院2週間後に行った血液検査では、糖化ヘモグロビン(HbA1c)値が、糖尿病の治療が必要な状態にまで上昇しました。

 わたしはこの状態に対しても内服薬やインシュリン注射は使用せず、以前行ったように、炭水化物をできるだけ減らす食事療法で対応しようと考えています。具体的には、炭水化物を取るのは昼食だけで、朝と夜の食事にはご飯やパンなどの炭水化物を極力摂取しないというものです。これは高雄病院の江部康二先生1)が推奨している糖質制限食ですが、その結果については、機会があればまたこのブログで述べたいと思います。

 

麻痺した右足には痛みが出てきた

 今回の新型コロナ肺炎でも最も重かった後遺症は、わたしの場合は歩行障害でした。右足全体が麻痺したようになって力が入らず、引きずるようにしないと歩けなくなりました。そのため、病院の駐車場から病院に入るまでの数百メートルを歩くことが苦痛になりました。病院の中でも、早く歩いたり、ましてや走ったりすることはできません。移動で階段を使う頻度は格段に減り、エレベーターを使用することが増えました。

 退院して2週間以上が経過した今でも、歩行障害は相変わらず続いています。ただ、症状に少し変化が出てきました。感覚が麻痺していた右足に、痛みが出てきたのです。右の臀部から大腿部にかけて、痛みが生じるようになりました。妻と歩いて外食に出かけた帰りには、痛みで歩けなくなることもありました。痛みは重くなったり軽くなったりしながら、その後も続いています。

 痛み自体は苦痛ですが、悪いことばかりではありません。麻痺した部分に痛みが出てきたことは、神経が復活してきたことを意味するからです。この点に着目し、痛みは回復の途上に生じる症状だと信じて、今後の経過をみていきたいと思います。

 

呼吸障害はみられない

 一方で、新型コロナ肺炎の最も起こりやすい後遺症である呼吸障害は、今のところみられていません。日常生活で息苦しさを感じることはありませんし、血中の酸素飽和度は常に正常値を示しています。

 先に述べたように、歩くときには痛みがあって苦痛を感じていますが、ジムで水中ウオーキングをする際にはほとんど痛みがありません。そこでジムに行って、水中で600メートル歩いた後にクロールで200メートル泳いでみましたが、それほど呼吸が苦しくなることはありませんでした。

 また、退院後も続いていた痰や鼻水、そして咳は、ゆっくりにですが減ってきています。これまでに行ってきた手洗いやイソジンでのうがいに加えて、鼻洗浄を行うようにしましたが、これにも効果があったのかも知れません。

 

体重はなかなか戻らない

 食欲は相変わらずあって、先に述べた糖質制限を行いながら食事はしっかり食べています。退院してからは、毎晩お酒(糖質のない蒸留酒が中心ですが)も飲んでいます。外食にもいって、そこでもお酒を飲みます。

 このように日常では以前の食生活に戻っていますが、新型コロナ肺炎になって5キロ減った体重はすぐには戻りません。2週間で1キロ増えましたが、減った筋肉はなかなか元通りには復活しないようです。ただ、腹回りだけは少し膨らんで、ぶかぶかになったズボンが、少し落ちにくくなったでしょうか。ジムなどで運動を再開したことで、少しだけ体型は戻ってきました。

 筋肉が落ちた痩せ細った病人(または老人)のようになった身体は、退院後2週間経って、年齢相応の見てくれには戻ったような気がします。

 

仕事は何とかこなせているが

 仕事を再開して、まる2週間が経ちました。依然と変わらない仕事量を、何とかこなすことができています。新型コロナ肺炎によって体力面、特に筋力などは随分衰えました。しかし、食欲があって体力が回復しつつあることと、幸いにも知的な面や精神的な面には障害が出なかったため、変わらず診療ができているのだと思います。

 ただ、今回病気によって3週間仕事を休んでみて、改めて感じたことがありました。それは、これまで休みをとらずに働いてきすぎたこと、そして仕事量が多すぎたことです。

 わたしは、3週間も仕事を休んだのは人生で初めてでした。今は働き方改革で、有給休暇を決められた日数以上取らないと、部署の責任者が罰金を払わなければならないというとんでもない制度があるため、職場全体が休みを取るようになっています。もちろん、わたしもその規則は守っていますが、有給休暇を消化するために苦労するような状態でした。

 また、長い間同じ地域の総合病院に勤務していたこともあって、担当の患者さんの数が非常に多くなっていました。そのため外来で診察する患者数が多く、一人当たりにかけられる診察時間が短くなっています。これでは精神科の診療とは言えないのではないか、と感じることが多々ありました。

 今回の病休で患者さんたちにはもちろん、同僚の先生たちにも随分と迷惑をかけてしまいました。いざという時のためにも、普段の仕事量を減らしておく必要があるという思いをいっそう強くしました。

 わたしは自分の年齢や体力に比して、無理をして働いていたのかも知れません。これは、今回新型コロナ肺炎を経験して、わたしが今後のために考えなければならないことの一つなのでしょう。

 

 新型コロナ肺炎の後遺症については、症状に変化があればまたこのブログで述べていきたいと思います。(続く)

 

 

1)江部康二:主食をやめると健康になる 糖質制限食で体質が変わる!.ダイヤモンド社,東京,2011.