なぜブースター接種は、今すぐ打ち止めにすべきなのか(2)

 前回のブログでは、ブースター接種が進んでいる国で感染の再拡大が始まっており、特に韓国では感染爆発が加速していることを指摘しました。その一方で、ブースター接種が遅れている国々では、皮肉にもオミクロン株の感染は終息に向かっています。

 日本政府や厚労省はこうした事実を公表することなく、政府の御用学者たちはブースター接種を盛んに推奨しています。そのため、日本では感染の減少にストップがかかっており、これ以上ブ-スター接種が進めば、感染が再拡大することが懸念されます。

 それにしても、ワクチンを接種すると感染が拡大するなんて、一体どういうことでしょうか。

 今回のブログでは、その理由を検討してみたいと思います。

 

抗体価は上昇するが

 政府の広報で強調されているのは、ブースター接種を行うと下がっていた抗体価が上昇することです。ブースター接種を行えば、確かに抗体価は上昇するでしょう。しかし、たとえ抗体価が上昇しても、新型コロナウィルスの感染を防ぐことはできません。それはブースター接種で産生される抗体が、オミクロン株には効かないからです。いくら抗体がたくさん産生されても、オミクロン株を排除できなければ何の意味もないでしょう。

 では、ブースター接種で産生される抗体が、オミクロン株のウィルスを排除できないのはどうしてでしょうか。

 

武漢株用のワクチン

 その理由を一言で言えば、ブースター接種で接種しているワクチンが、最初に中国で感染爆発した武漢株をもとに作られているからです。そんな昔の株のワクチンを、今も使っているなんて驚きですね。それでも、日本政府がファイザー社やモデルナ社と契約を交わしてしまってるので、今更返品できません。もし莫大な税金を投入して買い付けたワクチンを廃棄するようなことになれば、政府は国民から激しい非難を受けることになるでしょう。

 そこで、政府はワクチンの効果が薄れていることには口をつぐみ、オミクロン株の恐怖を煽って、在庫一掃処分セールを行っています。そして、効果が定かでないだけでなく重大な副反応が起こりかねないワクチンを、在庫処分のために子どもにまで打とうとしています。厚労省は過去に「薬害エイズ問題」を起こしていますが、まさに今、同じことが繰り返されようとしているのです。

 

オミクロンは別系統の株

 オミクロン株は、人間の細胞に結合するウイルス表面の突起部分だけで、32カ所もの変異が見つかりました。世界中で流行した英国由来のアルファ株、インド由来のデルタ株と共通の変異はあるものの、両者とも違う、別の系統で変異したウイルスだと考えられています。

 これだけ変異が進んだオミクロン株に対して、武漢株から誘導されたワクチンが効力を失っているのは、ある意味当然のことでしょう。政府や厚労省は、ブースター接種によって抗体価が高まることを盛んに喧伝していますが、いくら抗体が増えても、オミクロン株に対して効力を発揮しなければ何の意味もありません。

 さらに、ブースター接種が効かない理由として、「抗原原罪」という現象が指摘されています。

 

抗原原罪とは

 免疫系は、ウィルスや細菌などの病原体に遭遇した際に、免疫記憶を優先的に利用します。例えばウィルス感染の場合、最初に出会ったウィルス株の記憶が免疫系に残り、その後に同じウィルスの変異株に感染した際にも変異株に特異的な抗体を作らずに、以前の株に対する抗体ばかりを産生してしまうということが起こります。

 このように、免疫系が病原体に最初に出会った時の記憶に固執し、変異株に感染した際に柔軟で効果的な反応ができなくなる現象を、抗原原罪 (original antigenic sin)と呼びます(原罪とは、全ての人は生まれなら罪を背負っているとするキリスト教の概念ですが、それにしても凄い名前を付けたものです)。

 抗原原罪は、ウィルスや細菌のような病原体だけではなく、ワクチンに対しても起こります。1年の間に、3回も同じワクチンを接種すれば、武漢株に対する抗原原罪が起こることが当然考えられます。そうなれば、オミクロン株に感染しても武漢株に対する抗体ばかりが作られ、オミクロン株に対応できる中和抗体は作られることがありません。まさにこれは、武漢株ワクチン原罪だと言えるでしょう。

 

感染増強抗体の存在

 さらに問題を複雑にしているのは、感染増強抗体の存在です。

 本来ウイルスから身体を守るべき抗体が、逆にウイルスの標的細胞への感染を起こしやすくし、病気の重症化を引き起こす現象が知られています。これを抗体依存性感染増強(antibody-dependent enhancement:ADE)といいます。また、感染を起こしやすくする抗体は、感染増強抗体と呼ばれます。ADEは、これまでにSARSやMARSといった、旧来のコロナウイルス感染症で認められてきました。

 昨年の5月25日に、大阪大学の荒瀬尚教授を中心としたグループが、新型コロナウィルスの感染を増強する抗体を発見したと発表しました。感染増強抗体が新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の特定の部位に結合すると、抗体が直接スパイクタンパク質の構造変化を引き起こし、その結果、新型コロナウイルスの感染性が高くなるといいます。

 以下は、電子家顕微鏡による解析と、その模式図です。

 

f:id:akihiko-shibata:20211217024121p:plain

               出典:日本医療研究開発機構 プレスリリース 

                図1

 

 図1のように、感染増強抗体がスパイクタンパク質のNTD(N-Terminal Domain)という部位に結合すると、抗体によってNTDが牽引された結果、スパイクタンパク質の構造が変化し、RBD(Receptor Binding Domain 受容体結合領域)が開いた構造になります。RBDはスパイクタンパク質が細胞の受容体であるACE2と結合する領域であり、閉じた構造のRBDはACE2に対する結合性が低いものの、開いた構造のRBDが増えるとACE2に対する結合性が高くなり、感染性が強くなるのです。

 

新型コロナに感染しやすくなる

 こうして感染増強抗体が新型コロナウィルスとACE2受容体の結合を容易にすると、どのようなことが起こるのでしょうか。

 当然のことですが、まず考えられることは、新型コロナウィルスに感染しやすくなることです。

 

f:id:akihiko-shibata:20211218025017p:plain

            出典:日本医療研究開発機構 プレスリリース 

                図2

 

 図2ように、感染増強抗体がない例に比べて、ある例ではウィルス量の明らかな増大が認められます。つまり感染増強抗体は、実際に新型コロナウイルスのヒト細胞への感染性を顕著に増加させていることが判明しました。

 

中和抗体との関係は

 では、中和抗体と感染増強抗体との関係はどうなっているのでしょうか。

 以下は、中和抗体と感染増強抗体との関係を現したグラフです。

 

f:id:akihiko-shibata:20211218030951p:plain

          出典:日本医療研究開発機構 プレスリリース 

                図3

 

 図3のように、中和抗体が充分量あった場合(赤線)には、感染増強抗体が増えても中和抗体はウィルスをACE2受容体に結合させないように作用します。しかし、中和抗体の量が少ない場合(青線と綠線)は、感染増強抗体が増えるにつれ、ウィルスがACE2受容体に結合しやすくなっています。

 つまり、感染増強抗体が産生されると、中和抗体があったとしてもそれが充分量でないと、感染が起こりやすくなるのです。

 

ブースター接種による感染拡大

 以上は、日本でアルファ株が蔓延していた時期に提出された研究成果です。現在の日本で蔓延しているオミクロン株では、一体何が起こるでしょうか。

 先に述べたように、オミクロン株は、ウイルス表面の突起部分だけで32カ所もの変異がある、これまでの株とは別系統の新型コロナウイルスです。これに対して、現在接種されているワクチンは、中国で拡大した武漢株から作られたものです。武漢株から誘導された抗体が、変異を繰り返したオミクロン株に対して、果たして有効な中和抗体として働くのかという問題があります。

 さらに、ワクチン接種で産生される抗原の記憶に免疫系が固執し、変異株に感染した際に、柔軟で効果的な反応ができなくなってしまう抗原原罪と呼ばれる現象が発現する可能性が指摘されます。抗原原罪が発動すると、武漢株に対する抗体ばかりが作られ、オミクロン株に対応できる中和抗体が作られない可能性があります。

 こうした状況で、さらに感染増強抗体が産生されたら何が起こるでしょうか。それは、3回目のワクチンを接種することによって、却ってオミクロン株への感染が起こりやすくなることです。つまり、ワクチン接種が進めば進むほど、感染者が増加するという現象が起こるのです。

 

 ブースター接種が進んでいる国々で感染者の再拡大が起こっているのは、以上で述べてきたような現象が、まさに現実のものとなっているからではないでしょうか。(続く)