mRNAワクチンの副反応は問題にしなくてもいいのか(1)

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 前回までのブログでは、mRNAワクチンの効果について検討してきました。接種した当初は体液性免疫と細胞性免疫が飛躍的に向上するものの、制御性T細胞の働きによってこれら免疫に加えて自然免疫までが抑制されるため、3ヶ月から6ヶ月で却って感染を招きやすい状態に陥ります。そのためワクチン先進国の欧米ではブースター接種が必要になり、最も接種の進んでいるイスラエルでは現在4回目のワクチン接種が始まっています。それにも拘わらず、イスラエルでは陽性者数が過去最高を更新しており、さながら一時的な問題解決のためにワクチン接種を繰り返す、ワクチン依存症の様相を呈しています。

 こうしたワクチン先進国での実情を分析することもなく、マスコミに登場する専門家は、オミクロン株の感染急増に対して、相変わらずワクチン接種一本槍の言説を繰り返しています。さらに、感染対策分科会の尾身茂会長が岸田首相にワクチン接種の前倒しを進言したこともあり、高齢者のワクチン接種の早期再開と、3月からは12歳未満の子どもへの接種までもが検討されています。

 3ヶ月から6ヶ月で接種を繰り返さなければならないmRNAワクチンを、わたしたちは今後も接種し続けなければならないのでしょうか。そして、接種を繰り返すことによって増加しかねないmRNAワクチンの副反応は、本当に問題にしなくても大丈夫なのでしょうか。

 

厚労省は死亡例をどう捉えているか

 厚労省のホームページによると、ワクチン接種が始まった令和3年2月17日から12月17日までの間に、ワクチン接種後に亡くなった人の数は1,431人(ファイザー1,365人、モデルナ65人、アストラゼネカ1人)とされています。1,431人の死亡者数というのは決して少なくないように思いますが、この数字を厚労省はどのように捉えているのでしょうか。

 以下は、第 74 回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会の資料です。

 

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                  図1

 

  図1のように、「報告された症状等は虚血性心疾患、出血性脳卒中等であった。(中略)虚血性心疾患等に関し、ワクチン接種群と人口動態統計を用いた非ワクチン接種群との比較検討を行ってきたが、心筋炎関連事象を除き、これまでに、ワクチン接種群において死亡が多いことが明らかとなった疾患はない」とされています。

 つまり、ワクチン接種後に虚血性心疾患や出血性脳卒中等の死亡例がみられるものの、ワクチン非接種群を比べて、ワクチン接種群でこれらの疾患が多くなっているという統計的な有意差を認めないと言うことです。ただし、「心筋炎関連事象については、ファイザー社ワクチン及び武田/モデルナ社ワクチンともに、若年層において、非ワクチン接種群と比べ、ワクチン接種群に死亡が多い可能性がある」という点をつけ加えています。

 さらに、「専門家による評価では、(ほとんどの症例において)ワクチンと死亡との因果関係が評価できない」とされています。つまり、専門家が評価してもワクチンと死亡との因果関係が分からないのだから、ワクチンは危険ではないというわけです。

 

死亡者に対する厚労省の結論

 こうした検討を踏まえて、厚労省はワクチン接種後の死亡者に対して、現時点では次のように結論づけています。

 

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                 図2


 図2のように、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会では、「現時点においては、個々の死亡事例について新型コロナワクチンとの因果関係があると結論づけることのできた事例は認めない」こと、さらに「集団としての評価については、新型コロナワクチンの接種と疾患による死亡との因果関係が統計的に明らかとなった疾患はない」ことと判断し、その結果「現時点においては引き続きワクチンの接種体制に影響を与える重大な懸念は認められない」と結論づけています。

 ただし、「心筋炎関連事象については、引き続き注視していくとともに、さらなる評価・分析を行っていく」という注釈をつけています。

 

厚労省の見解は科学的に正しいのか

 以上の厚労省の見解は、統計的な検討から導かれた、科学的な見解として示されています。そして、「ワクチンの接種体制に影響を与える重大な懸念は認められない」という結論は、客観的に正しい見解であるように捉えられています。

 一方で、わたしたちには、接種後に1,431人もの人が亡くなっているワクチンは危険だという直感的な感覚もあります。この感覚は、どうも厚労省の科学的・客観的見解とは相容れないように思われます。

 なぜこのようなことが起こるのでしょうか。もう一度、厚労省の見解を見直してみましょう。

 検討部会では、「報告された症状等は虚血性心疾患、出血性脳卒中等であった。(中略)虚血性心疾患等に関し、ワクチン接種群と人口動態統計を用いた非ワクチン接種群との比較検討を行ってきたが、心筋炎関連事象を除き、これまでに、ワクチン接種群において死亡が多いことが明らかとなった疾患はない」と指摘されています。

 それはそうでしょう。1億2千万人の国民の80%がすでに2度の接種を終えている日本では、ワクチンの接種者の数は9600万人以上にのぼります。しかも、虚血性心疾患や出血性脳卒中は、日本人の死因において常に上位を占めています(2020年では、心疾患は15.0%で2位、脳血管疾患は7.5%で4位)。ワクチンを接種しているかどうかに拘わらず、虚血性心疾患や出血性脳卒中で亡くなる人は、かなりの数になるでしょう。そうした多数の死亡者の中で、ワクチン接種群において1,431人の死亡者(疾患別に分類すればさらに少数者)が出たからといって、非接種群と比べて統計的に有意差が出るはずがありません。

 一方で、「心筋炎関連事象については、ファイザー社ワクチン及び武田/モデルナ社ワクチンともに、若年層において、非ワクチン接種群と比べ、ワクチン接種群に死亡が多い可能性がある」とあるのは、そもそも心筋炎を発症する若者、または心筋炎で亡くなる若者が非常に希であるためです。非常に希な疾患がワクチン接種群で多発したために、統計的な有意差が認められたのです。

 つまり厚労省の見解は、統計的な処理を使って、少数であるが重要な事象をわざわざ見えなくしてしまっている可能性はないのでしょうか。

 

ワクチンによる死亡者は出ている

 ワクチン接種後に死亡者が出ているのは、ワクチン接種とは関係なく、たまたまその時期に致死的な病気を発症したのだという反論もあるでしょう。

 この反論に対しては、次のグラフをみればそれが間違いであることが分かります。

 

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                  図3

 

 図3は、昨年の12月24日に、CBC中部日本放送)ニュースで、大石邦彦アナウンサーが担当する[大石が深掘り解説]の中で取り上げられたグラフです。

 ワクチン接種後に死亡した直近500人について、ワクチン接種の何日後になくなったかを示しています。3日後までが163人(32.6%)、1週間までが240人(48.0%)で、その後にも徐々に減少していっています。もし、ワクチン接種後にたまたま死亡したなら、死亡者の数は、ワクチンの接種時期にかかわらずほぼ一定になるはずです。つまり、このグラフは、ワクチン接種が明らかに死亡に関わっていることを現しているのです。

 また、mRNAワクチンとインフルエンザワクチンを比較してみてもいいでしょう。

 2019年にインフルエンザワクチンの接種を受けた人は、約5,600万人です。ところが、接種後に死亡した人はわずか6人でした。この一点だけでも、いかにmRNAワクチンが危険であるかが理解できるでしょう。

 

多少の犠牲はやむを得ないのか

 ワクチン接種後に1,431人もの死亡者が出ていることは、ただそれだけで重大な事象のはずです。普通の感覚なら、この時点でワクチンの接種は中止すべきでしょう。それが、「現時点においては引き続きワクチンの接種体制に影響を与える重大な懸念は認められない」という結論になってしまうのは、ワクチンの接種にそれを上回る利益があると厚労省が判断しているからだと思われます。その利益とは、新型コロナウィルス感染症を終息させることです。

 現在、世界中で猛威をふるっている新型コロナウィルス感染症に対して、感染拡大が激しい先進国ほど、ワクチン接種に頼る政策を行っています。感染拡大がそれほど激しくない日本でも、政府は同様のワクチン接種政策に追随しています。この政府の意向に与して、厚労省もワクチン接種を強力に推し進めようとしています。そのためには、「統計的に優位な差が生じない」ような死亡者はやむを得ない犠牲者であり、大義のためには無視してもいいと判断しているのでしょう。 

 

因果関係は証明できない

 さらに個々の症例検討においては、「専門家による評価では、(ほとんどの症例において)ワクチンと死亡との因果関係が評価できない」とされています。死亡原因が、ワクチン接種によると明確に証明されていない症例がほとんどであると厚労省は評価しているのです。

 この判断は、以下の二点において問題があるとわたしは思います。

 一つ目は、死亡に至った疾患(例えば、虚血性心疾患、出血性脳卒中など)とワクチン接種の因果関係を証明するためには、全例で病理解剖を行い、mRNAワクチンがもたらす臓器への影響を検討しなければ因果関係を証明できないことです。実際に病理解剖が行われている症例は少ないでしょうし、されていても病理が解明されるには今後の詳細な検討を待たねばなりません。そのため、現時点で因果関係が証明される症例は、そもそも存在しないはずです。

 

証明が必要なのはワクチンが死因になっていないこと

 二つ目は、見逃されていますが最も重要なことです。それは、mRNAワクチンがまだ治験段階の薬であると言うことです。

 治験とは「治療の臨床試験」の略であり、候補の薬を健康な成人や患者に使用して、効果や安全性、治療法などを確認する目的で行われる臨床試験のことです。つまり、mRNAワクチンは臨床試験が終了して安全性が確認された薬ではなく、まだ安全性を確認している途上の薬だということです。

 では、なぜ治験段階の薬が、全世界的に使用されているのでしょうか。それは、新型コロナ感染症の急拡大に伴って、各国政府が緊急事態に対して特例承認を行っているからです。mRNAワクチンは、治験が終了して安全性が確認された薬ではなく、現在も世界中で「安全性を確認するための臨床試験」が行われている薬だということを忘れてはなりません。

 そうであれば、「ワクチンと死亡の因果関係が証明できない」ことは、ワクチンを継続使用してもよい理由にはなりません。まだ「安全性を確認中の薬」なのですから、むしろ「死亡の原因はワクチン以外にあった」ことを証明することが必要になります。

 したがって、ワクチンを継続使用するためには、「ワクチンと死亡との因果関係が評価できない」ことではなく、逆に「ワクチンが死亡原因にはなっておらず、安全である」ことこそが証明されなければならないのです。「死亡との因果関係が評価できない」ワクチンであれば、この時点でいったん治験を中断し、安全性が確認されるまでは使用を禁止する手続きを採ることが、これまでの治験で行われてきた通常の対応であると考えられます。

 このような基本的な姿勢がないがしろにされている検討部会は、まさに正常な判断力を失っていると言えないでしょうか。(続く)