安倍政権はなぜ歴代最長になったのか(9)

f:id:akihiko-shibata:20200302194209j:plain

 新型コロナウィルス感染症の拡大に対して、安倍内閣は水際での防御策に失敗し、国内での感染拡大を招きました。これは安倍総理が、観光業界、経済界、外務省、親中派議員、習近平国家主席などに忖度し、全体の調和を図ろうとしたことで、アメリカや台湾のような厳格な入国制限ができなかったことに拠っています。

 水際作戦に失敗した安倍内閣は、日本国内で感染症を広げないようにと方針転換を図りました。安倍総理は2月26日に、今後2週間はスポーツや文化に関するイベントの開催について中止・延期、または規模縮小等の対応を行うよう要請しました。27日には、全国全ての小学校、中学校、高校、特別支援学校について、3月2日から春休みまで臨時休校するように要請しました。

 果たして安倍内閣は、新型コロナウィルス感染症パンデミックから日本を守ることができるのでしょうか。

 

最悪の事態での感染率とは
 日本が最悪の事態に陥った場合を、これまでの経過から得られたデータに基づいて試算してみましょう。
 政府や地方自治体や医療機関や一般の人々が適切な対応を取らず、医療崩壊が起きてしまった場合には、日本にはどれほどのコロナウィルス感染者が生じるのでしょうか。

 この試算に利用できるサンプルがあります。それは政府が武漢から邦人を日本に帰国させた際のデータです。

 1月23日に武漢市は封鎖されました。このときすでに武漢では感染爆発が起こっていました。この後に政府のチャーター機で帰国した828名のうち、新型コロナウィルスに感染していた人は14名でした。これが、感染爆発を起こした際の感染率のサンプルになると考えられます。

 武漢では医療崩壊が起きており、報道されている以上の感染症者と死者を出していたことが容易に想像できます。こうした状況の中で、日本人にどれほどの感染者がいたのかは、日本で同様の事態が起きた際の参考になるでしょう。

 この場合の感染率は、14÷828×100≒1.69% です。

 すると、普通はあり得ない仮定ですが、日本全土、津々浦々で感染爆発が起こった際の新型コロナウィルスの感染者数は、日本の人口を1億2千万人とすると、

 120,000,000×1.69÷100=2,028,000

 になります。つまり、202万8千人の人が、新型コロナウィルスに感染することになるのです。

 

武漢の発症者数はごまかされている

 この数字からは、中国武漢の感染者数と死者数がいかに正確ではないかが分かります。武漢には1千万人の人々がいたのですから、

 10,000,000×1.69÷100=169,000

 になります。つまり、感染爆発が起こったときの武漢の感染者数は、16万9千人にも上ると考えられます。

 先の感染率の対象は、87%が日本人でした(828名中720名)。日本人は他国の人々に比べて、潔癖症できれい好きであると言われています。マスクの着用率も、日本人は格別高いでしょう。その日本人が多いサンプルと同じ感染率であったとしても、武漢には(閉鎖される前に逃げ出した人々も含めれば)、感染爆発が起こった当時ですでに16万9千人の感染者がいたと推察されます。当時の武漢の衛生状況から考えれば、この数字よりもかなり多くの感染者が中国には存在したでしょう。

 2月1日付けの人民日報が発表した中国全土の感染者数は1万1821人、湖北省の感染者数が7千153人でした。武漢の推計感染者数である16万9千人と比べると、中国全土の感染者数でも14分の1ほどです。

 3月6日現在における中国全土の感染者数は、8万573人と発表されていますが、この数字がいかに現実に即さないものかが分かるでしょう。

 

最悪の死者数は

 日本の話題に戻りましょう。

 日本でもし感染爆発が起こり、202万8千人もの人が新型コロナウィルスに感染した場合には、日本全体での死者数はどれほどになるのでしょうか。

 新型コロナウィルス感染症の致死率が中国では約2%であるとされていますが、この数字は全くあてになりません。なぜなら、中国の感染者数や死者数は当地の病院が把握したもの(または、当局が恣意的に操作したもの)に過ぎず、病院にかかれずに診断も治療も受けれなかった感染者や死亡者が、夥しい数存在していたと推察されるからです。

 新型コロナウィルス感染症の致死率が最も正確に推察できるのは、韓国の数字だと考えられます。韓国ではPCR検査が最も頻繁に行われており、新型コロナウィルス感染症が疑われる場合だけでなく、症状のない人まで自費でPCR検査を受けられます。

 その結果として、無症状の感染者も含め、膨大な数の感染者数を記録することになりました。この事態は、いたずらに人々のパニックを助長させるという意味では決して望ましいものではありません。しかし、新型コロナウィルス感染症の致死率を割り出すことに限っては、他のどの国よりも現実の感染者数に近いため、より正確な致死率を現わしていると考えられます。

 3月7日時点での韓国の感染者数は6,767人、死者数は44人ですから、致死率は

 44÷6,767×100≒0.65%

 になります。季節性インフルエンザの致死率が0.1%と言われていますから、新型コロナウィルスの致死率は、現在のところ季節性インフルエンザの6.5倍ほどであると言えるでしょう(ただし、致死率は少しずつ上がっていますから、最終的には0.7%近くになるかも知れません)。

 すると、日本全土で感染爆発が起こった際の死者数は

 20,28,000×0.65÷100=13,182

 つまり、日本全土で新型コロナウィルス感染症の感染爆発が起こった際の死者数は、およそ1万3千人に上ると推計されるのです。

 

感染拡大を防ぐ

 水際作戦に失敗した安倍内閣は、日本国内で感染症を拡げないように方針転換を図りました。安倍総理は、スポーツや文化に関するイベントの開催について中止・延期、または規模縮小等の対応を行うよう要請し、さらに、全国全ての小学校、中学校、高校、特別支援学校について、春休みまで臨時休校を行うように要請しました。

 これに呼応して、コンサートや公演は軒並み中止されました。Jリーグの開催試合は延期され、プロ野球のオープン戦は無観客試合になりました。大相撲の大阪場所と春の甲子園大会も無観客で行われることになりました。

 全国でほとんどの学校が休校になり、卒業式も縮小または中止されました。職場でも不要・不急な出張の中止・延期や、テレワークへの切替など、感染拡大防止に必要な施策が行われました。また、多人数が集まる研修会や宴会さえも中止されました。東京ではすでに、花見の自粛要請も出されています。

 

 中空均衡構造社会の強み

 中空均衡構造では、中心統合構造の中心であるのようなリーダーを嫌う傾向があります。中空均衡構造の長となる者は、全体をリードするのではなく、全体の調和をはかる者として期待されます。安倍総理は、全体の調和を図るリーダーとして政権を運営してきたため、新型コロナウィルス感染症への対応が後手後手になりました。

 これは中空均衡構造型社会の弱点ですが、中空均衡構造には強みもあります。中空均衡構造は中心は空ですが、周囲はバウムクーヘンのように平等な層が広がっています。

 それをシェーマ化すると、以下のようになります。

 

f:id:akihiko-shibata:20200308200103p:plain

                    図1                                                                      

 図1で示したように、安倍内閣の周りには、企業やスポーツやイベントの主催団体、学校などが同心円状に存在しています。これらは、中心統合構造型の社会のように中央からの指示に従うのではなく、それぞれが独自の存在として併存しています。そして、それぞれの存在は中央からの指示に単に従うのではなく、各組織が責任をもって問題の解決を図ろうとします。

 中央から一方的に指示が下される場合には、権力による強制力が伴います。人々は表面上はやむなくそれに従いますが、反発心をもっているため時には指示に反抗します。中国政府と人民の関係がその典型例です。

 これに対して、各組織が独自に問題の解決を図ろうとする場合は、それぞれの組織が自主性を持つことになります。政府の要請と異なる判断がなされる場合もありますが、その結果が次の判断の材料になり、さらに新たな検討が行われます。こうして多くの組織では、感染の拡大を防ぐための努力が続けられます。結果的には、社会の隅々まで政策の履行が確実に浸透することになるでしょう。

 以上のように、感染を拡げないという目標が国内で共有された場合は、日本では民間レベルで多くの結果を生み出し、感染拡大は他国に比べて抑制されることになると考えられます。 (続く)