日本人はなぜ自立できないのか(5)

 岸田首相が今年の2月6日に、今国会で成立するよう茂木幹事長に指示したことで始ったLGBT理解増進法案は、一部の自民党議員の反対を押し切って、国会に提出されました。国会では吊されたまま廃案になるだろうという楽観的な予想を覆し、5月9日に萩生田政調会長が、自民案を捨てて維新案を丸呑みする形で修正したLGBT理解増進法案を衆院内閣委員会にかけました。法案は充分な審議もなされないまま即日採決され、自民、公明、日本維新の会、国民民主の4党の賛成多数で可決されました。そして、この法案は、党議拘束をかけて衆議院本会議と参議院本会議に提出されることになりました。

 女性や子どもの安全を脅かすだけでなく、日本の国柄を変えかねない非常に危険なLGBT理解増進法案は、こうして今国会で成立しようとしています。その結果、自民党内の分断が進んだだけでなく、これまで自民党を支えてきた岩盤保守層が、自民党を見限り始めています。

 岸田首相は、これほどまでの危険を冒して、なぜLGBT理解増進法という悪魔の法案を成立させようとしているのでしょうか。

 

LGBT法案が衆議院を通過

 自民、公明両党が提出したLGBTなど性的少数者らへの理解増進法案は、13日の衆院本会議で、自民、公明、日本維新の会、国民民主の4党などの賛成多数で可決し、衆院を通過しました。

 自民党党議拘束をかけたため、LGBT理解増進法案に反対の態度を明確にした自民党議員は、残念ながら現れませんでした。わずかに数人の議員が議会を欠席したり、腹痛を理由に退席した高鳥修一氏のような議員はいましたが、多くの保守系の議員は賛成に回りました。立憲民主と共産党の議員は反対しましたが、与党案では「性自認」や「差別を禁止する」という表現がなく内容が不充分であるという、より危険な理由でした。

 産経や読売新聞以外のマスコミは、法案の危険性をそれほど指摘することもなく、衆議院の通過を淡々と報道しました。

 同じ13日には、岸田首相が「異次元の少子化対策」の具体策を盛り込んだ「こども未来戦略方針」の閣議決定を受け、首相官邸で全国に向けて記者会見を行いました。

 しかし、この記者会見は、まったく説得力の欠けるものになりました。LGBTに対する理解が進めば、岸田首相の構想である「異次元の少子化対策」どころではなく、逆に「異次元の少子化」が進展してしまうからです。LGBTに対する理解が進み、LGBTの人が増えれば増えるほど、子どもは生まれなくなるのですから。

 

LGBT理解増進法が現実のものに

 6月16日、LGBT理解増進法案が、参院本会議で自民、公明、日本維新の会、国民民主の4党などの賛成多数で可決、成立しました。

 良識の府である参議院では、法案に対する反対者がどれだけ出るのか注目されましたが、自民党の中では採決の際に退席者が3名出ただけでした。退席した3名の弁は、以下の通りでした。

 青山繁晴議員は記者団に対し、「『自分は女性だ』と偽り、女性用のトイレや風呂に入るというような問題に対する十分な備えができているとは言えない。LGBTの当事者も含めた社会全体のために賛成しなかった」と述べました。

 山東昭子参議院議長は、「女性トイレなどで“なりすまし”の人たちによる犯罪も起きており、この法律によって、何でも受け入れるのが当たり前という風潮になったら大変ゆゆしき問題だ」と述べました。

 和田政宗議員は、「退席は数多くの国民の声、自民党員の声、自民党支持者の声を受け止めた結果だ。国民のこと、自民党のことを考えてことを致した」と述べました。

 こうした意見を示したことは、自民党にも反対意見があることを伝えたという面で、それなりの意味はあったのかも知れません。しかし、本会議場で明確に反対の意思を示した議員がいなかったことは、重い事実として残されました。

 令和5年6月16日は、自民党が日本の文化と国柄を守ることを放棄した日として、永遠に記憶される日となるでしょう。わたし個人にとっては、自民党を応援することは今後一切しないと、決意した日ともなりました。

  

自民党は失うものが大きい

 これほど問題の多い法案を、岸田首相が、自民党村の調和を壊してまで通そうとしたのはなぜでしょうか。

 LGBT理解増進法によって、利権を得る政治家がいることが理由の一つとして挙げられています。

 LGBT理解増進法では、国や自治体に対し、国民が性自認の多様性に理解を深めるため、教育や学習の振興、広報活動などの施策に努めるように要求しています。具体的には、事業主や学校の設置者に対し、従業員や生徒などの関係者が同様の理解を深められるように、研修や啓発など必要な措置を行うように求めているのです。

 実際に研修や啓発の業務に携わるのは、LGBT問題に関わってきた民間団体の活動家となることが予想されます。この民間団体に、行政から補助金が投入されることになります。つまり、LGBT理解増進法にも利権が存在し、そこに政治家も関わっています。そこには、左翼系の民間団体だけでなく、自民党の大物議員が関係する民間団体が存在することが指摘されています。

 このように、利権構造に自民党議員が関わっていることが、LGBT理解増進法を成立させた一因になっているのだと考えられます。

 しかし、利権で得られる利益より、自民党ははるかに大きなものを失いました。それは、自民党を支えてきた岩盤保守層の支持です。岩盤保守層の支持を失ったことによって、自民党は安倍政権時代のように、今後選挙で大勝することはできないでしょう。G7広島サミットを成功させ、解散総選挙に打って出ようと目論んでいた岸田首相が、今国会中での解散に踏み切れなかったのは、LGBT理解増進法の成立によって一気に支持を失ったからに他なりません。

 

日本はアメリカの属国だった

 岸田自民党が、保守の支持を大幅に失ってまでLGBT理解増進法を成立させた背後には、ラーム・エマニュエル駐日米国大使の並々ならぬ働きがありました。

 以下はエマニュエル大使のTwitterです。LGBT理解増進法案に関するものを、時系列的に拾ってみましょう。

 今年の3月7日にはすでに、日本維新の会の馬場代表と会ってLGBT理解について確認しています。

 

 

 エマニュエル大使は、4月24日の東京レインボープライドのパレードに、米国大使館チームとして参加しました。東京レインボープライドは、LGBTQ、いわゆる性的少数者が差別や偏見にさらされず、前向きに生活できる社会の実現を目指した団体です。

 このパレードには、自民党稲田朋美議員も、満面の笑みを浮かべて参加していました。

 

 

 翌4月25日にエマニュエル大使は、松中権理事(日本のLGBT社会運動家。 認定NPO法人 グッド・エイジング・エールズ代表)と会っています。

 

 
 エマニュエル大使の目的が、LGBT理解に留まらず、「同性婚」を法的に認めさせることにあることが分かります。

 さらにエマニュエル大使は、国会議員を大使館に招き、LGBT理解を推し進めようとしました。

 

 

 アメリカ大使館に呼ばれた国会議員は、写真の左から順に、源馬謙太郎議員(立憲民主)、小田原きよし議員(自民)、山下貴司元法相(自民)、牧山ひろえ議員(立憲民主)、鈴木貴子議員(自民)、谷合正明議員(公明)です。

 一堂に会している議員が超党派に及んでいることが、エマニュエル大使の工作が広く浸透していることを示しています。

 5月18日に、自民党公明党と合同でLGBT理解増進法案を国会に提出すると、エマニュエル大使は直ぐに歓迎の意を表します。

 


 6月9日にLGBT理解増進法案が衆議院で可決されると、エマニュエル大使はさっそく歓迎します。

 

 

 このツイートによって、LGBT理解増進法が「岸田首相のリーダーシップ」によって成立したことが窺われます。そして、法案成立に大きな役割を果たしたのが、公明党でした。

 

 

 LGBT理解増進法案は、衆議院を通過して参議院に送られました。エマニュエル大使は、最後まで推進への手綱を緩めません。

 

 

 6月16日、日本はついに運命の日を迎えました。LGBT理解増進法というLGBTに特化した差別禁止法が、世界で初めて成立してしまったのです。

 

 

 エマニュエル大使のコメントは、駐日米国大使が日本の政策決定に対してあからさまな内政干渉をし、それが成功したことを内外に宣言したものと捉えることができます。

 令和5年6月16日は、日本が独立国家ではなかった、そしてアメリカの属国であることが明らかになった日でもあると言えるでしょう。(続く)