日本人はなぜ自立できないのか(6)

 女性や子どもの安全を脅かすだけでなく、日本の伝統や文化を破壊する可能性を秘めたLGBT理解増進法が、6月16日に国会で成立しました。一部の保守派議員からの反対を押し切ってまでこの法案の成立に固執した岸田首相は、岩盤保守層からの支持を一気に失うことになりました。今後の岸田政権は、拉致被害者がいっせいに帰国するなどの歴史的な政治成果でも挙げられない限り、じりじりとレームダック化してゆくことでしょう。

 岸田首相は、G7広島サミットで成果を挙げながら、なぜこのような失態を犯してしまったのでしょうか。そこには、今の日本が置かれた根源的な問題が存在しています。

 今回のブログでは、この問題について検討したいと思います。

 

エマニュエル大使の背後にはバイデン大統領が

 前回のブログでは、LGBT理解増進法の成立に果たした、エマニュエル駐日米国大使の華々しい(?)活躍を紹介しました。それは大使の役割をはるかに超えた越権行為でもあり、日本の政策に対するあからさまな内政干渉でした。

 それにも拘わらず、岸田首相を始めとした政府や自民党は、エマニュエル大使に何の抗議もしませんでした。そればかりか、野党の議員までもがアメリカ大使館に招かれ、LGBT理解増進法の成立に向けて、エマニュエル大使と笑顔で歓談していました。

 その理由はもちろん、エマニュエル大使の背後に、バイデン大統領が存在しているからです。

 

バイデン大統領夫人はLGBT活動家だった

 バイデン大統領夫人のジル・バイデン氏は、アメリカではLGBT活動家として有名な人だそうです。そのジル夫人と親しいとされているのが、エマニュエル大使です。なんだか、今回の騒動の輪郭が見えてきそうです。

 今年の4月17日に、岸田首相の裕子夫人が、ジル大統領夫人の招待でホワイトハウスを訪れました。日本の首相夫人が、アメリカの大統領夫人の招待を受けて単独で訪米するのは初めてということで話題になりました。

 

 

 バイデン大統領も加わった会談で何が話されたかは明らかにされていませんが、外務省によれば、裕子夫人はジル夫人に対し、5月に開かれるG7広島サミットで、岸田首相とともにバイデン大統領夫妻を迎えることを期待していると伝えたということです。

 このときにすでに、バイデン大統領が広島サミットに出席して原爆資料館を訪れることのバーターとして、LGBT理解増進法を推し進めることの交渉が行われた可能性があることを指摘しておきたいと思います。

 

ゼレンスキー大統領の招待と戦争の長期化

 G7広島サミットといえば、ゼレンスキー大統領が招待されたことが話題になりました。ゼレンスキー大統領が実際に広島の地を訪れて各国首脳と会談を行ったことは、サミットのサプライズとして大きなインパクトを残しました。岸田首相とゼレンスキー大統領がそろって原爆死没者慰霊碑に献花を行った映像は、岸田首相一世一代の晴れ舞台であったサミットに華を添えました。

 サミットで行われたバイデン大統領とゼレンスキー大統領の会談では、バイデン政権は侵攻の長期化も見据え、欧州からウクライナへの米F16戦闘機の提供を認める方針に転じたと報じられました。ゼレンスキー大統領が広島を訪れた最大の目的が、米F16戦闘機の提供を受けることだと言われていますが、バイデン大統領はゼレンスキー大統領に、今後も戦闘の支援を続ける意思を強調しました。

 アメリカが民主党政権に転じて、ウクライナ戦争が始まり、北朝鮮はミサイル発射を繰り返すようになりました。世界各地で戦闘を収束させたトランプ政権時代とは対照的です。バイデン政権には、軍需産業の強固な支持があります。そのため、バイデン政権が続く限り、軍需産業を潤すために戦闘も続くでしょう。そして、その流れに日本も追従させられています。

 

防衛費増額の中身はアメリカからの武器購入

 ロシアが2022年の2月4日にウクライナに軍事侵攻を開始してから、すでに1年以上戦争が続いています。独裁体制をいっそう強固にした習近平総書記は、台湾統一に強い意欲を示しており、いつ軍事侵攻が起こってもおかしくない状況です。さらに北朝鮮は、2023年に入ってから6月21日までに、少なく見積もってもミサイルを23発以上(!)日本海に向けて発射しています。

 こうした日本周辺の軍事的緊張に対して、日本政府は軍事予算の増額を行いました。防衛関係予算は、令和4年の5.4兆円から令和5年には6.8兆円へと26%増額されています。この増額自体はもちろん必要なことですが、問題はその中身です。  

 以下は、その概要です。

      「令和5年度防衛関係予算のポイント」財務省渡辺主計官 より

                  図1

 

 図1にみられるように、令和5年度防衛予算のうち、装備品の購入が歳出ベースで1.4兆円(全体の21.2%)、契約ベースで3.5兆円(全体の31.5%)が振り当てられています。装備品のうち、トマホーク(米国製巡航ミサイル)やイージスシステムなど、アメリカから購入するものが多くを占めています。

 岸田政権は防衛費の増額分を増税で賄おうとしていますが、その増額分の多くはアメリカの軍需産業からの武器購入に充てられており、われわれの税金がアメリカの軍需産業を潤す構造が出来上がっているのです。

 

日韓首脳会談が突然行われた

 今年の3月16日に、岸田首相とユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領の日韓首脳会談が行われました。この会談で両首脳は、10年以上途絶えている首脳間の相互訪問である「シャトル外交」の再開を確認しました。

 かつて岸田首相は、外相時代の2015年12月に、韓国のユン・ビョンセ(尹炳世)外相と共同で、「慰安婦問題は最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」と表明しました。ところが、その後に元慰安婦の訴訟によって慰安婦問題が蒸し返されています。また、2018年10月にはいわゆる「徴用工(実際は応募工)問題」で、韓国最高裁新日鉄住金に侵害賠償を請求する問題が起きました。続く2018年12月には、韓国海軍の駆逐艦が、海上自衛隊のP-1哨戒機に対して攻撃を意図する火器管制レーダーを照射する「レーザー照射事件」が起きました。2019年8月には、軍事転用が可能な製品に対する輸出管理制度や運用に不十分な点があることから、日本政府は韓国を貿易管理上の優遇措置を受けられる「ホワイト国」のリストから外しました。

 これら山積する問題は、いまだ何一つ解決されていません。それにも拘わらず、日韓のシャトル外交が再開されたのはなぜでしょうか。

 

日韓の関係改善もバイデン大統領の指示

 日韓の外交関係が再開された背景には、バイデン大統領の指示があったのではないでしょうか。

 ミサイル発射を繰り返す北朝鮮や、台湾をめぐって緊張が高まる中国に対抗するために、アメリカ、日本、韓国の連携は不可欠だとバイデン大統領は判断したのでしょう。冷え切ったままの日韓両国に対して、バイデン大統領が両国首脳に直接働きかけたのだと考えられます。

 バイデン大統領自身も、それを認める発言をしています。次期大統領選に向けた6月22日の選挙イベントで、日本の防衛費の増額や韓国との関係改善について「私が日本の態度を変えようと努力したのだ」と強調し、対日本外交の成果を誇示しています。
 バイデン大統領の働きかけによって、岸田内閣の政策は全面的に方針転換しました。上述したように、アメリカの軍需産業が潤うように防衛予算を増額させ、韓国との外交関係を改善させました。本来は韓国との問題は何一つ解決しておらず、日本が譲歩する必要は何もなかったにも拘わらずです。
 このように岸田首相は、バイデン大統領の「命令」に逆らうことができず、ただただ盲従することしかできないのです。

 

 もちろん、ワクチン行政も例外ではありません。ワクチンを世界一接種している日本は、アメリカの製薬会社に巨額の利益を提供しました。さらに、世界の中で日本だけが6回目の接種を行って、アメリカの企業を今も潤しています。日本国民の命を危険に晒し続けながら。

 これだけでも岸田政権は、万死に値すると言えるでしょう。(続く)