安倍政権はなぜ歴代最長になったのか(番外編)安倍総理の辞任について

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 8月28日に安倍総理が辞任を表明しました。6月以降に持病の潰瘍性大腸炎が再発の兆候が現れ、8月に病状が悪化したため、「病気と治療を抱え、体力が万全でない中で大切な政治判断を誤ること、結果を出せないことはあってならない。国民の皆さまの付託に自信を持って応えられる状態でなくなった以上、総理大臣の地位にあり続けるべきではないと判断しました」という理由でした。

 安倍総理の突然の辞任発表は、安倍内閣の退陣を待ち望んでいた一部のマスコミを除いては、驚きをもって報道されました。会見の前日まで、会見では今後の政権運営について発表するとみられていたからです。

 それにしても、安倍総理の辞任の理由は、本当に潰瘍性大腸炎の悪化なのでしょうか。今回のブログでは、臨時にこの問題について検討したいと思います。

 

前回の辞任会見との違い

 安倍総理が病気を理由に総理大臣を辞するのは、今回で2度目になります。前回の平成19(2007)年9月に退陣表明した時の安倍総理の表情は、明らかにうつ状態のそれであったと、わたしは2020年1月12日のブログで指摘しました。このときの辞任会見との違いは、今回の安倍総理には、うつ状態の兆候がみられなかったことです。

 

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 そもそも潰瘍性大腸炎は、精神的なストレスの影響を受けやすい疾患です。潰瘍性大腸炎は、心身症の一つに数えられています。心身症とは、症状発現や症状の消長に心の問題の関与が大きい身体疾患の総称です。つまり、潰瘍性大腸炎の病状には、精神的なストレスが大きく関与するのです。安倍総理が政治的なストレスから潰瘍性大腸炎を悪化させ、さらにうつ状態にまで至ったと考えられるのが前回の辞任劇でした。

 しかし、今回の場合は、精神的なストレスが潰瘍性大腸炎を再発させたまでは前回と同様ですが、安倍総理うつ状態にまではなっていないというのが、わたしが辞任会見を見て受けた印象です。

 

仕事が出来ないほど悪化したのか

 では安倍総理が辞任したのは、仕事が出来ないほど潰瘍性大腸炎の状態が悪化したからでしょうか。わたしは、次の二つの可能性があると思います。

 一つは、本当に仕事ができなほど潰瘍性大腸炎の病状が悪化した可能性です。

 前回の辞任の後で安倍総理は、アサコールという潰瘍性大腸炎の新薬を使用して病状が劇的に改善し、そのことが総理への復帰に繋がったと言われています。今回はアサコールが効かなくなり、顆粒球吸着療法GCAP(granulocyte apheresis)という難治性の活動期潰瘍性大腸炎の治療を行ったにもかかわらず、思うような効果が出なかったというものです。

 しかし、潰瘍性大腸炎の病状によって「体力が万全でない中で大切な政治判断を誤ること、結果を出せないことはあってならない」のなら、前回の辞職の時のように、直ぐに総理の職を辞するのではないでしょうか。

 そこで、もう一つの可能性が浮かび上がってきます。

 

潰瘍性大腸炎とは別の疾患が

 それは、潰瘍性大腸炎とは別の疾患が見つかったという可能性です。

 あくまでわたしの推測に過ぎませんが、その疾患は消化管の悪性腫瘍ではないでしょうか。消化管の腫瘍が疑われるのは、潰瘍性大腸炎を長期間罹患すると大腸腫瘍が発症しやすくなることと、安倍総理が吐血したとか、吐瀉物の中に鮮血あるいは黒い塊が混じっていたとかいう情報が流れたこと(この場合は大腸でなく上部消化管の腫瘍ということになりますが)からです。

 そして、悪性腫瘍は初期のものではない反面、治癒が期待できる進行度だったのではないかと考えられます。

 

慶応病院に二度受診した

 そう推測する根拠は、安倍総理が8月17日と24日に二度にわたって慶応病院を受診したことです。1週間後に再診が必要であることを考えれば、次のような経緯が考えられます。

 最初の受診で腫瘍が見つかり、精査のために組織生検が行われた。組織生検の結果が数日後に出されて悪性腫瘍と診断され、1週間後の再診では転移の有無を判断するCTやPETが行われた。そして、総合的に悪性腫瘍は初期ではないが、治療が期待できる進行度であることが明らかになった、ということではないでしょうか。

 そう考えれば、総理が辞任発表をしたにもかかわらず、次の総理総裁が決まるまでは総理大臣の職を続けることが説明できます。悪性腫瘍の治療の開始は、1か月間程度なら待つことはできます。しかし、治療の開始を1年間待つことはできません。悪性腫瘍が治療できない程度まで進行してしまうからです。

 もし、この推測の方が正しければ、安倍総理は次の総理が決まった後で、入院して手術などの治療を受けるでしょう。そして、退院後は通院を続けながら化学療法または放射線療法を受けることになります。

 

やむにやまれぬ辞任

 内外の問題が山積し、ライフワークともいえる憲法改正拉致問題 がまだ解決していない状況で、あたかも安倍総理が政権を投げ出したかのように報じるマスコミがあります。さらに、森友・加計問題や桜を見る会、最近ではPCR不足や安倍のマスクなど、政治的には全く意味がないにもかかわらず、攻撃のための攻撃を繰りかえしたマスコミや反安倍勢力は、今回の辞任をさぞかしほくそ笑んでいることでしょう。

 しかし、安倍総理の今回の決断は、簡単に政権を投げ出したものではないと思います。上述したどちらの可能性であっても、安倍総理重篤な身体疾患に罹患し、やむにやまれぬ状況で辞任を決断したと考えられるからです。

 

政治的な判断

  しかもこの決断は、復活後にも自らの影響力を残し、憲法改正拉致問題の解決に繋げたいという並々ならぬ意欲を示すものでもあります。

 巷間言われているように、安倍総理は、政治思想の全く異なる石破茂氏が後任の総理に就任することだけは避けたいと考えているでしょう。前回の政権の後、政治思想の異なる福田康夫氏が政権を引き継ぎ、自らが1年間行ってきた政策が寸断されてしまった苦い経験があるからです。

 このまま衆議院の解散がなければ、来年の9月または10月には任期満了に伴う衆議院解散総選挙が行われます。総理大臣は選挙の顔ですから、もしも辞任の時期が延びてしまえば、国民の人気が高いと言われる石破氏が総裁選で有利になります。

 一方で、内外の問題が山積している現状から、党員投票を省略して自民党の両院総会で総裁を選出することになれば、石破氏に不利なだけでなく、安倍総理の影響力を今後に残すことができるでしょう。

  以上のように、この時期に辞任を表明したもう一つの理由は、安倍総理が自らの内政・外交の方針を継続させ、今後の日本政治にも一定の影響力を持ち続けるためだったと考えられるのです。

 

 ともあれ、安倍総理には、いったんは病気の治療に専念し、健康を回復していただけることを切に願います。8年の長きにわたり、日本のために最高のリーダーシップを発揮していただけたことを、日本国民の一人として感謝いたします。本当にありがとうございました。(了)