東京五輪はなぜ無観客になったのか 見えない影に怯える人たち(1)

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 7月8日に、東京五輪を無観客で開催することが決定されました。

 新型コロナウィルスの感染拡大を受け、日本政府は4回目の緊急事態宣言を発令し、それに伴って東京五輪は首都圏の会場では無観客で行われることが決定しました。この決定は、本当に正しかったのでしょうか。

 今回のブログでは予定を変更して、東京五輪無観客開催という衝撃的な決定について、検討を行いたいと思います。

 

イギリスで行われた UEFA EURO2020(サッカー 欧州選手権) では

 現在ヨーロッパでは、UEFA EURO2020(サッカー 欧州選手権)が行われています。7月8日に行われたイングランドデンマークの準決勝は、ロンドンのウェンブリースタジアムで、6万人の観衆を集めて行われました。 

 

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          欧州選手権の準決勝で熱狂するサポーター

 

 上の写真は、準決勝当日の熱狂する観客の様子です。会場に入るには、新型コロナの陰性証明かワクチン接種が完全に終了した証明が必要ということですが、それにしても観客たちはマスクもせず、大声を上げたり抱き合ったりして選手たちを応援していました。スタジアムは両チームの激闘もあって、大歓声に包まれて大いに盛り上がりました。

 

イギリスの感染状況は

 こんな大観衆を集めて大会が行われるのですから、イギリスでは新型コロナ感染症は、すでに収束しているのでしょうか。

 

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            (日本経済新聞  新型コロナウィルス感染世界マップ)

             図1

 

 図1は、イギリスの新型コロナウィルスの感染者数(正確にはPCR検査陽性者数)の推移です。

 ワクチン接種に伴って減少したかに見えた感染者数は再び増加に転じ、7月8日には3万2061人に上りました。イギリスの人口は6789万人ですから、1億2626万人の日本でいえば6万人ほどの感染者が出ていることになります。

 こうした状況にありながら、7月5日の会見でイギリスのジョンソン首相は、半年間にわたって続いた行動規制を7月19日から完全に解除すると発表しました。その結果、集会の人数制限がなくなるほか、公共交通機関などでマスクを着用する義務も終了します。

 「ZEROコロナ」を唱えている立憲民主党や、東京五輪中止を訴えている共産党朝日新聞からみれば、ジョンソン首相の決定は、狂気の沙汰以外の何ものでもないに違いありません。

 

大谷が活躍するアメリカでは   

  日本時間の7月8日に、大谷翔平選手が、松井秀喜さんが2004年にマークした日本人最多本塁打記録(31本)を塗り替える32号ホームランを放ちました。投手との二刀流を実現しながら、ホームランダービーを独走する大谷選手の活躍は、日本のみならずアメリカのファンをも熱狂させています。 

 

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         32号ホームランを打った大谷選手を迎えるファン

 

 テレビ朝日羽鳥慎一 モーニングショー」のコメンテーター玉川徹氏が、この映像を見て、「会場誰もマスクしていないし、大盛り上がりじゃないですか。これがワクチン接種が進んだ国とワクチン接種が進まなくて五輪に観客入れないと言ってる国の違い」と発言しました。

 ワクチン先進国であるアメリカでは、新型コロナ感染症の感染者数は、さぞ減少しているのでしょう。

 

アメリカでも感染は続いている  

 下の図は、7月8日までのアメリカの感染者数(正確にはPCR陽性者数)の推移です。 

 

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           (日本経済新聞 新型コロナウィルス感染世界マップ)

              図2

 

 図2で示されているとおり、アメリカでは感染者は大幅に減少しています。それでも依然として感染は続いており、7月8日の感染者数は2万2931人です。アメリカの人口は3億3145万人ですから、1億2626万人の日本でいえば9200人以上の感染者が認められることになります。

 

日本の感染者数はさざ波

 では、東京五輪を無観客で行うと決定した日本では、どのくらいの感染者が出ているのでしょうか。

 

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            (日本経済新聞 新型コロナウィルス感染世界マップ)

              図3

              

  図3は、7月8日までの日本の感染者数(正確にはPCR陽性者数)です。7月8日の感染者数は、驚くなかれ2180人(!)です。人口比でみてもアメリカの4分の1、イギリスに至っては30分の1に過ぎません。

 図3のように日本の感染にも大きな波があり、東京五輪によって第5波がくるとマスコミは大々的に報じています。しかし、注意して図3を見てみてください。第3波、第4波の頂点部分が超えているのは6000人の目盛りです。つまり、感染者が最も多いときでも、人口比でみたアメリカの現在の感染者数である9200人よりも少ないのです。

 日本の感染者数の波は、イギリスやアメリカに比べれば、まさに「さざ波」であると言えるでしょう。

 

プロ野球もサッカーも大相撲も有観客なのに

 現在日本で開催されているプロ野球も、サッカーも、大相撲も有観客で行われています。それによって、クラスターが発生したという話しも聞かれません。上述したように、日本より遙かに感染者数が多い海外では、感染対策をとった上で、観客を入れて通常の開催を始めています。

 それなのになぜ、東京五輪だけ無観客で行わなければならないのでしょうか。このままでは東京五輪は、感染対策に失敗した国家が開催したオリンピックとして、世界中の人々の記憶に残ることになってしまうでしょう。

 東京五輪を無観客で開催するという方針を決定した日本には、正常な判断ができない病理が存在しているのではないでしょうか。次回以降のブログで、検討してみたいと思います。(続く)