mRNAワクチンを子どもに接種してもいいのか(4)

f:id:akihiko-shibata:20211103005952j:plain

 前回のブログでは、厚労省の「ワクチンで注射するmRNAは短期間で分解されていきます」という見解が、正しくない可能性について検討しました。mRNAは1ヶ月以上体内に存在し、脾臓、骨髄、肝臓、副腎、卵巣に蓄積されるという情報があります。そして、mRNAが入り込み、スパイクタンパク質を産生する細胞は非自己とみなされ、細胞傷害性T細胞(キラーT細胞)から攻撃を受けて破壊されることが予想されます。

 このうち副腎が傷害されればアジソン病にみられる全身倦怠感、疲労感、めまい、意欲の減退といった症状が出現することが考えられ、これはワクチン接種後に認められる慢性の後遺症に類似しています。また、卵巣が傷害されれば、将来の不妊の原因になる危険性があります。

 今回のブログでは、ワクチンのmRNAがヒト遺伝情報(DNA)に組みこまれることはない、という厚労省の見解が本当に正しいのかを検討したいと思います。

 

遺伝情報の流れは一方向?

 前回のブログでも紹介した、厚労省のmRNAワクチンについての見解をもう一度振り返っておきましよう。

 

 mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンで注射するmRNAは、数分から数日といった時間の経過とともに分解されていきます。また、mRNAは、人の遺伝情報(DNA)に組みこまれるものではありません。身体の中で、人の遺伝情報(DNA)からmRNAがつくられる仕組みがありますが、情報の流れは一方通行で、逆にmRNAからはDNAはつくられません。こうしたことから、mRNAを注射することで、その情報が長期に残ったり、精子卵子の遺伝情報に取り込まれることはないと考えられています。

 

 この見解の中の、「身体の中で、人の遺伝情報(DNA)からmRNAがつくられる仕組みがありますが、情報の流れは一方通行で、逆にmRNAからはDNAはつくられません」は、分子生物学セントラルドグマと呼ばれています。

 

セントラルドグマとは

 DNAの二重らせん構造の発見者の一人であるフランシス・クリックは、DNAの遺伝情報は、DNA→mRNA→タンパク質の順に伝達されるという、分子生物学の基本概念を提唱しました。この概念は、細菌からヒトに至るまでに共通するものだとされ、セントラルドグマと呼ばれるようになりました。

 セントラルドグマは、分子生物学の中心原理と見なされました。上述の「情報の流れは一方通行で、逆にmRNAからはDNAはつくられません」は、このセントラルドグマのことを指しており、DNA→mRNA→タンパク質という流れ以外は起こり得ないものと考えられてきました。

 

逆転写酵素の発見

 ところが、1970年に分子生物学者のハワード・マーティン・テミン(Howard Martin Temin)とデビッド・ボルティモア(David Baltimore)によって、逆転写酵素(Reverse transcriptase)が発見されました。

 逆転写酵素とは、RNAを鋳型としてDNA を合成する働きを持つ酵素であり、一部のウイルスが自分のRNA遺伝子を、寄生する宿主の細胞のDNA遺伝子に組み入れるときに用いるものです。テミンとボルティモアは、この功績によって、ノーベル生理学医学賞を受賞しました。

 逆転写酵素の発見によって、セントラルドグマに反する現象、つまりDNA→mRNA→タンパク質という流れの逆の現象が起こっていることが分かりました。そして、この逆の流れを起こすウィルスが、レトロウィルスと呼ばれています。

 

レトロウィルスとは

 レトロウィルスのレトロ(retro)は、ラテン語で「逆の」という意味であり、レトロウィルスでは、セントラルドグマの掟を破って、RNA→DNA という逆の流れが起こっていることが分かりました。

 レトロウィルスは感染してヒトの細胞に入り込むと、自分のRNAをDNAに変換(逆転写)し、2本鎖のDNAを作ります。そして作ったウィルス由来のDNAを細胞の核の中に持ち込み、ヒトのDNAに自分のDNAを付け加えます。こうしてレトロウィルスは、宿主の核の中に入り込んで、DNAという設計図自体を書き換えてしまう性質を持っているのです。

 レトロウィルスが感染した細胞は、設計図の情報が変わるため変調を来たします。細胞増殖に関する設計図が変われば、細胞ががん化することがあります。ウィルスが免疫担当細胞の正常な作用を阻害したり、免疫担当細胞を殺してしまったりすると、免疫抑制や免疫不全を引き起こします。

 レトロウィルスは、生物の進化に重要な役割を果たしてきたことが分かっており、必ずしも悪い作用を及ぼすものばかりではありません。しかし、ヒトに病気を起こすレトルウィルスとして、成人T細胞白血病を引き起こすヒトTリンパ好性ウィルス(HTLV)や、エイズを起こすヒト免疫不全ウィルス1型(HIV-1)が知られています。また、レトロウィルスではありませんが、B型肝炎ウィルスも、RNAからDNAを作る逆転写酵素をもっていることが分かっています。

 

RNAワクチンは未だ治験中

 みなさんは、「mRNAを注射することで、その情報が長期に残ったり、精子卵子の遺伝情報に取り込まれることはない」という厚労省の見解は、mRNAワクチンで既に確かめられていることだと思っていませんか。

 実は、そうではありません。なぜならmRNAワクチンは現在も治験中の薬であり、安全かどうかを人びとに接種して確かめている途上の薬だからです。どうしてそんな薬が全世界で使用されているかというと、新型コロナ感染症の世界的な感染爆発のため、各国政府がやむを得ず緊急承認しているためです。つまり、mRNAワクチンの安全性は確立されたものではなく、ヒトで使用しながら副反応がないか確認している最中だということを忘れてはなりません。

 では、「mRNAを注射することで、その情報が長期に残ったり、精子卵子の遺伝情報に取り込まれることはない」という見解はどこから出てきたのでしょうか。

 その根拠は、「人の遺伝情報(DNA)からmRNAがつくられる仕組みがありますが、情報の流れは一方通行で、逆にmRNAからはDNAはつくられません」というセントラルドグマから導かれているに過ぎません。そのため、精子卵子の遺伝情報に取り込まれることはあり得ません、という表現ではなく、精子卵子の遺伝情報に取り込まれることはないと考えられています、という表現になっているのです。

 そうだとすれば、セントラルドグマにレトロウィルスや逆転写酵素という例外が見つかっている以上、mRNAワクチンにおいてもワクチンのmRNAがヒトのDNAに取り込まれる例外や、さらにそれがヒトの生殖細胞に取り込まれる例外も考えなければならないでしょう。

 実はその例外は、「試験管の中」ではすでに発見されています。

 

核の中で起こる逆転写

 新潟大学の岡田正彦名誉教授は、「新型コロナのエビデンス」というホームページの中で、その例外を次のように説明しています。

 

 ヒトの遺伝子(正確にはゲノム)は、細胞内で「核膜」と呼ばれる袋に包まれ、大切に保存されています。その本体であるDNAは、単に遺伝情報を子孫に伝えるだけでなく、日々の生命活動を支えるため、刻々と活躍しています。

 たとえば、血液中のぶどう糖は大切なエネルギー源ですが、それが不足してくると、まず信号がゲノムに伝わります。すると、「ぶどう糖を細胞内に取り込むたんぱく質」を作るコードがゲノムからコピーされ、メッセンジャーRNAとなります。これは直ちに核膜を通り抜け、細胞内の「たんぱく合成工場」に運ばれていきます。

 合成が無制限に続いてしまうのは困りますから、メッセンジャーRNAは「決して核の中にはもどらず」、「短時間で分解されてしまう」という運命をたどります。核膜は、mRNAがゲノムの近くに戻っていかないよう、一方通行の整理を行っているからです。一方、核の中では、ゲノムDNA→mRNA→DNAへ逆変換→別の場所に組込む、という出来事がまれに起こっています。理由はわかっていませんが、発がんなど病気の原因になっているとも言われています。

 

 このように、核の中にあるDNAの一部がコピーされたmRNAは核膜を通り抜けて細胞質の中にあるミトコンドリアに到達し、タンパク質を合成するために働きます。ここで核膜が、mRNAが再び核の中に戻らないように「一方通行の整理」を行っているため、mRNAの情報がDNAに取り込まれることはありません。つまり、セントラルドグマが守られているのです。

 一方、核の中では、mRNA→DNAへ逆変換→別の場所に組込む、という「逆転写現象」が起こっています。それが可能なのは、ヒトのDNAには、レトロウィルスと同じく逆転写酵素の配列をもつLINE(long interspersed nuclear element:長い反復配列)と呼ばれる部分が存在するからです。DNAからRNAに転写された情報は、LINEによって再びDNAに逆転写されて別のDNA配列中に組み込まれます。それでもこの現象は核の中だけで起こっているため、核の外に存在するmRNAの情報がDNAに組み込まれることはありません。

 

RNAの情報がDNAに組み込まれる

 こうした事実のため岡田氏は、mRNAワクチンのmRNAがDNAに逆転写することはなく、組み込みも起こらないと説明してきました。

 しかし、スウェーデンで行われた実験の結果(『ファイザーBioNTech COVID-19 ワクチン GNT162b2 インビトロヒト肝細胞株の細胞内逆転写』 アカデミックエディター: スティーブン・マルニックカー。モル・ビオールを発行。2022, 44(3), 1115-1126;https://doi.org/10.3390/cimb44030073)から、今までの常識が覆されることになったと岡田氏は指摘します。

 

 実験は、ファイザー社製ワクチンをがんの培養細胞に加えたところ、あってはならない出来事、つまり「改造メッセンジャーRNAがDNAに逆変換される」ことが確認されたのです。「生物の大原則」を覆したこの実験結果は、しかし、わかってみれば十分に納得できるものでした。

 これを理解するポイントは2つあります。ひとつは、細胞が分裂する際、DNAも2つにわかれますが、そのとき核膜が消えDNAが露出するのです。実験に使ったのは、がん細胞でしたから、当然、分裂も盛んです。もうひとつのポイントは、核内でしか働かないはずの特殊な「RNA→DNA逆変換酵素」が、細胞分裂の際、核外にしみ出てしまうということです。

 

 この実験は、日本人の肝臓の細胞を用いて行われました。ファイザー製のワクチンのmRNAが、わずか6時間(!)でヒト肝細胞の核に入り、DNAに逆転写されることが世界で初めて実証されたのです。

 生物の大原則を覆す結果が起こった理由を、岡田氏は次のように説明します。

 細胞が分裂する際には、一時的に核膜が消えてDNAが露出します。そのため、細胞膜によるDNA→mRNAという「一方通行の整理」は行われなくなり、さらにLINEがもつ逆転写酵素が作用します。その結果として、核内でしか起こっていなかったmRNA→DNAという逆転写現象が、細胞質内でも起こる可能性が生じます。こうして、ワクチンのmRNAがDNAに逆転写されるという、生物の大原則を覆す衝撃的な結末が、がんの培養細胞の中で引き起こされることになったのです。

 また、この実験とは別に、ヒトTリンパ好性ウィルス(HTLV)やヒト免疫不全ウィルス1型(HIV-1)、B型肝炎ウィルスといった逆転写酵素をもつウィルスが細胞内に存在している場合も、細胞分裂時にワクチンのmRNAがDNAに入り込む可能があると考えられます。

 

精子に組み込まれる可能性も

 細胞分裂の際に、セントラルドグマが崩れる瞬間が生じるとすれば、どのようなことが起こりうるのでしょうか。

 岡田氏は続けます。

 

 細胞分裂は(脳神経系を除く)すべての細胞で絶えず起こっていますから、この出来事は誰にでも、いつでも起こることになります。とくに次世代につながる精子にも起こりうるのです(卵子細胞分裂しない)。

 

 岡田氏は、「逆変換されたDNAがヒトのゲノムに組み込まれるかどうかは、まだわかっていません」と断りながらも警鐘を鳴らします。

 すなわち、ワクチンのmRNAのDNAへの逆転写は、細胞分裂を起こすべての細胞で起こり得ます。しかも細胞分裂の活発な精子で起これば、その影響は次世代にまで及ぶことになるのです。

 

遺伝子組み換え食品は食べないのに

 スーパーに行くと、「当店では遺伝子組み換え食品は扱っておりません」という表示を見かけることがあります。

 遺伝子組換え食品とは、他の生物から有用な性質を持つ遺伝子を取り出し、その性質を持たせたい植物などに組み込む技術を利用して作られた食品です。自然では交配しない生物の遺伝子を利用できるため、従来の品種改良では不可能と考えられていた特長を持つ農作物を作ることができます。その一方で、他の生物の遺伝子が含まれる食品に対して、安全性を危惧する人がいるのです。

 しかし、考えてみて下さい。遺伝子組み換えといっても他の生物であって、危険な細菌やウィルスの遺伝子ではありません。しかも、消化吸収する過程で、人体にとって悪いものは腸管粘膜などによって排除されるでしょう。

 そんな遺伝子組み換え食品を忌避する人たちが、病原体の一部であるmRNAを、それも筋肉注射で直接体中に入れることに恐怖を感じないことが、わたしには不思議でなりません。

 

 世のお母さんたちに問います。子どもの体に生涯にわたって異常を残すかも知れず、さらに次世代にまで影響を及ぼしかねないmRNAワクチンを、本当にわが子に接種してもいいのですか。(了) 

 

 

参考文献

・宮沢孝幸:京大 おどろきのウィルス学講義.PHP新書,東京,2021.