わたしたちはなぜ、危険なワクチンを打ち続けているのか(5)

 前回のブログでは、日本のマスメディアがいかに偏向した報道を行っているかについて、NHKのニュースを例に挙げて検討しました。その手法は、新型コロナ感染症への危機感を煽り、人びとを不安にしてそれをワクチン接種に繋げるというものでした。

 それにしても、日本人はなぜこうした偏向報道をそのまま信じ、危険なワクチンをそうと知らないまま打ち続けてしまうのでしょうか。

 今回のブログでは、わたしたち日本人が新型コロナ感染症において、なぜ一度立ち止まって現状を見直そうとしないのか、そして将来の危険を察して引き返すことができないのかを検討したいと思います。

 

接種間隔を3ヶ月に短縮!

 岸田政権は、オミクロン株対応ワクチンを大量に買い付け、9月20日から国民への接種を開始しました。さらに、加藤厚労大臣は20日の記者会見で、ワクチンの接種間隔について「海外の動向などを踏まえ、短縮する方向で検討したい」との考えを示しました。 厚労省は、欧米諸国の接種期間が2~3ヶ月になっていることにならって、オミクロン株対応ワクチンの接種間隔を3ヶ月に短縮する方向で、10月末までに専門家部会などの了承を得たいとしています。

 オミクロン株対応ワクチンの危険性については、前々回のブログで検討しましたが、ワクチンの接種間隔を5ヶ月から3ヶ月に短縮する目的は何なのでしょうか。

 一つには、感染拡大が懸念される年末年始に備えて、オミクロン株対応ワクチンの接種を進めたい意図があるのでしょう。しかし、追加接種を急げば、却って半年後(期間はさらに短くなる可能性も)に感染爆発を起こし、これまで以上の規模の超過死亡者数を出す危険が高まります。

 もう一つは、ワクチンの有効期間がさらに短くなっていることを、暗に示しているのでしょう。武漢株対応ワクチンは、有効期間は接種後2週間目からせいぜい3ヶ月ほどまででした。もし欧米諸国が、接種期間を2~3ヶ月に短縮されているとしたら、有効期間は1ヶ月ほどしかない可能性もあります。

 

日本だけが追加接種を続けている

 厚労省はワクチン接種の方針を決定する場合、よく「欧米にならって」という決まり文句を使います。今回の発表でも「欧米の接種間隔は2~3カ月で日本よりも短い」と言っていますが、本当に欧米社会は、それほど短い間隔で追加接種を進めているのでしょか。

 以下は、3回目と4回目の追加接種を合わせた延べブースター接種率の、今年の8月1日と9月27日時の結果を比べたものです。

 

                 図1

 

  図1で示されている、8月1日と9月27日の延べブースター接種率を比べてみましょう。

 

              8/1      9/27     伸び率(%)

     日本       74.7     92.3     23.6 

     韓国       76.3     80.0       4.8     

     イタリア     70.3     71.8                    2.1 

     ドイツ      69.3     70.9                    2.3 

     フランス     64.4     66.3                    3.0

     イギリス     59.0     59.2       0.3

     アメリカ     38.7     39.9                    3.1

 

 このように、欧米諸国の延べブースター接種の伸び率はたった2~3%です。イギリスに至っては、なんと0.3%しか増えていません。韓国ですら4.8%の伸び率であるのに、日本だけが断トツで23.6%もの伸び率を示しています。

 厚労省は「欧米諸国にならって」と言いますが、欧米諸国はもはやワクチン接種を、非常に限定的にしか進めていないことが分かります。

 

イスラエルに代わって日本がワクチンの実験場に

 イスラエルは、ワクチン接種の最も進んだ国でした。世界はイスラエルの接種状況とその結果をみて、自国のワクチン政策の参考にしてきました。

 では、現在のイスラエルのブースター接種状況は、どうなっているのでしょうか。

 

                                                   図2

 

  図2のように、イスラエルは2022年の2月に入ってから、ブースター接種をほとんど行っていません。それに対して、2月下旬には韓国が、6月初旬には日本がイスラエルを延べ追加接種率で上回りました。その後の伸び率では、日本がイスラエルを圧倒しています。

 

              8/1      9/27     伸び率(%)

     日本       74.7     92.3     23.6 

     韓国       76.3     80.0       4.8 

     イスラエル    60.8     61.0       0.3 

 

  イスラエルは、延べブースター接種率が60%からほとんど上昇しておらず、イギリスと同様に、ブースター接種を推進しない方針に転換しています。それがなぜかを、厚労省は真摯に検討すべきでした。

 世界の各国がワクチンを接種しない方向に方針を転換するなかで、日本だけがブースター接種を推進する方針を堅持しています。日本は今、ワクチン接種のトップランナーに躍り出ています。これは誇らしいことではありません。mRNAワクチン自体が治験段階の薬品であり、さらにオミクロン株対応ワクチンは、まだ人間による充分な検証結果がなされていない「最新の」ワクチンだからです。

 このように日本は今、イスラエルに代わって、オミクロン株対応ワクチンの臨床実験の場となっているのです。

 

間違いを認められない厚労省

 なぜ日本は、ワクチン接種で世界のトップランナーになり、同時にワクチンの臨床実験場になってしまったのでしょうか。

 イギリスにしてもイスラエルにしても、当初は世界に先駆けてワクチン接種を進めました。しかし、ワクチンの効果がないと判断するとすぐさま方針を転換し、ワクチン接種をやめてウィズコロナ政策に切り替えました。

 一方アメリカは、ファイザー、モデルナというmRNAワクチンを作っている会社を抱えているだけあって、ワクチン接種推進政策を続けています。しかし、さすがに自由の国の本家だけあって、自らの判断でワクチンを接種しない国民が多く、延べブースター接種率は未だに40%に達していません。

 翻って日本を見てみると、これらの国とはまったく異なった判断をしています。ワクチン接種政策を推し進めた結果として、急激な感染拡大を来した現実を客観的に分析できていません。それは厚労省や、新型コロナ感染症対策の専門家たちが、自分たちの判断の間違いを認めることになるからです。彼らは、自らの間違いを認めずに、目の前の現実に異なった解釈を与えました。

 それは、感染が急拡大したのはワクチンが旧式になっているためで、新しいワクチンに換えればいいという判断です。この判断は、失敗を取り返そうとしてさらなる失敗を招く典型であり、国民に取り返しのつかない薬害をもたらすことに繋がるでしょう。

 

戦争を止められなかった日本

 現実に基づいた客観的な判断ができないのは、今の政府や厚労省に限りません。

 実は日本は過去にも、状況の判断を誤って多くの国民が犠牲になった歴史があります。当時のことを、少し振り返ってみましょう。

 満州国を建国し、中国と戦争を行った日本は、ついに世界の超大国アメリカとも戦火を交えることになります。

 中国と戦争を続けることだけでも大変な状況であるのに、さらにアメリカやイギリスと同時に戦争を行うなど、とても正気の沙汰であるとは思えません。現在のわたしたちの視点で冷静に考えれば、日本は破滅への途を突き進んでいるようにしかみえないでしょう。

 なぜこのような愚挙が、当時の日本において行われてしまったのでしょうか。

 

対立する日本とアメリ

 日本の中国への進出は、アメリカを刺激することになります。アメリカは日本の南下政策に警戒感を強め、次第に中国寄りの立場を採るようになって行きました。

 日本が「東亜新秩序」を提唱すると、アメリカは中国への援助を強化するとともに、日本に対する経済制裁として、1939年に日米通商航海条約の破棄を通告しました。当時の日本は資源の供給をアメリカからの輸入に頼っていたため、日本は経済的にも軍事的にも追いつめられました。

 さらに、1941年に日本軍が南部仏印に進駐すると、アメリカは対日石油輸出の全面禁止に踏み切ります。石油の大部分をアメリカから輸入していた日本にとって、この措置は大きな打撃となりました。日本国内では、この頃から対米開戦論が主張されるようになります。

 そして、アメリカからハル=ノート、すなわち日本軍の中国・仏印からの全面撤兵、三国同盟の空文化、重慶政府以外の不承認などを要求した覚書が提示されるに至って、1941年12月8日に、日本陸軍がイギリス領マレー半島に上陸し、海軍はハワイの真珠湾を攻撃します。こうして、ついに太平洋戦争の火蓋が切って落とされたのです。

 

戦争を回避したかった軍部

 日本は中国と戦争をしながら、なぜ米英との戦争にも踏み切ったのでしょうか。日本の国力から考えれば、誰の目から見ても無謀な戦いとしか映らないでしょう。

 戦後の教育では、軍国主義をかかげた一部の軍首脳によって、日本人は間違った戦争に引き込まれたことになっています。国民は、彼らによって洗脳された被害者だったという構図です。果たして、本当にそうなのでしょうか。
 『日本人はなぜ戦争へと向かったのか 下』1)によれば、当時のリーダーたちは、アメリカの総合的な国力が日本の80倍(!)だという事実を認識し、アメリカと戦争をしても歯が立たないと考えていました(同100頁)。リーダーたちは、しっかりと現実を理解していたのです。
 では、軍人たちが戦争をしたがったのでしょうか。

 

 「本当にアメリカと戦うのか。まず深刻な動揺が広がったのは、海軍だった。
『海軍の最高首脳部は、もう絶対やっちゃいかん、やっちゃいかん。そういう考えで。そういう力はありませんよ。そんなことを目標にして日本の陸海軍の戦備というのはできているわけじゃない』(保科善四郎証言)
『幾度(対アメリカ戦の)演習をやってみても、あるいは図上で演習をやってみても、勝ち目がないんですね。実際のところ審判(判定)でごまかしているんですけれども、本当に率直にいえば勝ち目がない』(高木惣吉海軍省調査課長証言)」(『日本人はなぜ戦争へと向かったのか 下』112頁)

 

 海軍がこのようにアメリカとの戦争を無謀だと捉えていたのなら、陸軍が対米戦を主導したのでしょうか。

 

 「間もなく陸軍でも、アメリカとの戦争に慎重を望む声が上がり始める。日中戦争もいまだ終わっていない状況のなか、疲弊した戦力でアメリカに挑むことの無謀さを、現場の指揮官たちは訴えた。
『日米交渉は、何としても成功させてほしい』(畑俊六・支那派遣軍総司令官)
『この際、撤兵の条件を呑むことも、大した問題ではないと考える』(後宮淳・支那派遣軍総参謀長)」(『日本人はなぜ戦争へと向かったのか 下』112頁)

 

 実際に中国で戦闘に携わっていた陸軍の指揮官たちは、アメリカとの戦争を何としても回避したいと考えていました。

 このように当時の政治家も、そして軍人も、アメリカとの戦争を決して望んではいませんでした。

 

戦争回避を決断できないリーダー

 それではなぜ、アメリカとの開戦を止められなかったのでしょうか。

 

 「いざ戦争回避を決断するとなると、リーダーたちの覚悟は揺れた。アメリカと戦う力がないことを認め、中国から撤兵するなら、これまで失われた二十万あまりの兵たちの命、毎年の国家予算の七割にも達した陸海軍費はいったい何のためだったのか。国民が失望し、国家も軍も面子を失うことを恐れた」(『日本人はなぜ戦争へと向かったのか 下』112頁)

 

 アメリカとの戦争を避けるために中国から撤兵すれば、これまでの人命も戦費もすべて無駄になってしまいます。その決断を下すことが、リーダーたちにはできなかったというのです。

 この状況を、歴史学者のジョン・ダワーは次のように指摘しています。

 

 「人が死ねば死ぬほど、兵は退けなくなります。リーダーは、決して死者を見捨てることが許されないからです。この『死者への負債』は、あらゆる時代に起きていることです。犠牲者に背を向けて『我々は間違えた』とはいえないのです」(『日本人はなぜ戦争へと向かったのか 下』114頁)

 

 軍人を含むリーダーたちの本音は、戦争を避けたいという点で一致していました。しかし、多くの恨みを買うであろうこの決断を、誰も口にすることはできませんでした。これが、アメリカとの戦争を回避できなかった大きな要因になったと同書は指摘しています。

 

 内容と規模の違いはあるにせよ、現在のワクチン行政と重なる部分があるのではないでしょうか。(続く)

 

 

文献

1)NHK取材班編著:NHKスペシャル 日本人はなぜ戦争へと向かったのか 下.NHK出版,東京,2011.