日本にブースター接種は必要か(2)

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 前回のブログでは、世界中でワクチンの接種が進むなか、接種率が高い国で新型コロナ感染症が終息しているかどうかを検討しました。その結果、アラブ首長国連邦以外の国々、シンガポール、チリ、スペイン、韓国、カナダ、イタリア、フランス、イギリス、ドイツでは感染は終息していませんでした。それどころか、シンガポール、韓国、ドイツでは、過去最大の感染者数を出していました。

 そこで各国は、感染が終息しないのはワクチンの効果が薄れてきたからだとして、3回目の接種、つまりブースター接種を始めています。

 この方法は本当に正しいでしょうか。一旦立ち止まって、これまでのワクチン接種がどれほどの効果があったのかを、再度検証する必要があるのではないでしょうか。また、人類史上初めての試みである遺伝子ワクチンの安全性を、もう一度確かめる作業を行うべきではないでしょうか。

 現在感染が終息している日本では、ブースター接種をするべきかを判断するのは、その後でも決して遅くはないはずです。

 

ワクチンは特効薬か

 各国がブースター接種を進めようとする背景には、ワクチンがウィルス感染症の特効薬であるという認識があると思われます。テレビや新聞で専門家が、新型コロナ感染症を終息させるにはワクチンしかないと語ったり、政治家が自国民のためにワクチンをどれだけ確保したかを誇ったりしたことが、ワクチン特効薬説の流布を推し進めました。

 その背景には、ワクチンによって結核、麻疹、風疹、ムンプス(おたふくかぜ)、水疱、ポリオ(急性灰白髄炎)などが劇的に減少したという実績があるのでしょう。前回のブログでも紹介したとおり、これらのワクチンは生ワクチンであり、毒性を弱めた病原微生物をあえて投与するために細胞性免疫が長期間維持し、変異株など構造の異なるウイルス株にも対抗できる広域中和抗体が産生される特長をもっていました。

 これに対して、インフルエンザなどに使用される不活化ワクチンは、抗原性だけを残して殺してしまった病原微生物を使用します。死滅した病原微生物を投与するため実際に細胞には感染せず、したがって細胞性免疫は成立しません。また、獲得された中和抗体が長期間維持されないため、毎年のように接種が必要になります。しかも、変異株に対しては中和抗体が有効でない場合もあり、インフルエンザワクチンでは予防効果は60~10%だと言われています。それでも毎年インフルエンザワクチンの接種が行われるのは(もちろん、強制でなく任意ですが)、インフルエンザの重症化を防ぐためです。

 

遺伝子ワクチン幻想

 新型コロナに対する遺伝子ワクチンは、細胞性免疫と体液性免疫の両方を活性化するとされ、生ワクチンのような効果が期待されていました。遺伝子ワクチンが最先端の科学技術を使って創られたと喧伝されたことも、このワクチンへの期待を高めました。

 しかし、前回のブログで検討したように、ワクチン接種が進んだ国々の成果をみると、遺伝子ワクチンの効果は不活化ワクチンと同じ程度しかないようにみえます。ワクチンを2回接種しても感染は終息していませんし、なかにはワクチン接種の最中に過去最大の感染者を出した国もありました。ブースター接種が必要なのも、不活化ワクチンと同じ程度の効果しかない何よりの証しです。

 それなのに各国がブースター接種を推し進め、人びとがそれを進んで受けようとするのは、ワクチンが特効薬であるという思い込みが世界中の人びとに浸透してるからではないでしょうか。これは科学的な事実に基づいた判断ではなく、まさに“遺伝子ワクチンへの幻想”であると言えるでしょう。

 ブースター接種を進んで受ける人びとが多い国はこの幻想が行き渡っており、プースター接種を強制されても拒む人が多い国には、この幻想を共有しない人びとがまだ多く残っているという見方ができるのかも知れません。

 

ブレークスルー感染

 ワクチン接種を完了した人が、そのワクチンが予防するはずのものと同じ病原体に感染してしまうことをブレークスルー感染と言います。ワクチン接種が進んでいる国々で新型コロナ感染症が終息していないのは、ブレークスルー感染が多数みられているからです。

 新型コロナ感染症のブレークスルー感染に対しては、新たな変異株が登場したからだとか、有効だった抗体が徐々に低下したからだと説明されます。そして、感染したとしても軽症で済み、入院したり死亡する例は非常に希だと指摘されています。だからこそ、予防効果を再度高めるために、ブースター接種が重要だというわけです。厚労省のホームページでも、こうした啓発が行われています。

 しかし、これは本当のことでしょうか。ワクチン接種先進国で、積極的にブースター接種を推し進めているイスラエルを例に挙げて検証してみましょう。

 

ワクチン先進国イスラエル

 イスラエルでは昨年12月に集団接種を開始し、5月17日には国民の50%がワクチン接種を済ませました。これは欧米諸国より2ヶ月から3ヶ月速いペースで、イスラエルはワクチン接種先進国と言われました。国民の70%以上が2回の接種を終えた6月1日に、イスラエル政府はほとんどの行動規制を解除しました。しかし、今年の7月から8月にかけて、新たな変異株であるデルタ株によるブレークスルー感染やそれによる重篤な患者が急増しました。

 この時点でイスラエル保健省は「ファイザーのワクチンの予防効果は39%に低下している」と公表しました。ノーベル医学賞を受賞したフランスのモンタニエ博士など一部の専門家は、変異株の感染力が増加したことに加え、ワクチンによって免疫力が低下する可能性を指摘しました(この点について、後々検討したいと思います)。

 感染者の急増に伴い、イスラエル政府は、7月30日から60歳以上で少なくとも5ヶ月前に2回目のワクチン接種を受けた人に3回目の接種を開始しました。そして、12月10日の時点では、人口の4割以上が3回目の接種を終えています。

 

感染はピークアウトしたが

 遡る8月22日に、イスラエルの保健省は先のような結果を発表しました。 60歳以上の自国民を対象にファイザー社ワクチンのブースターショットを実施した結果、「接種してから10日後の予防効果は、2回目の接種を終えた時より約4倍高まった」とし、さらに「重症化や入院を抑制することにおいては、5倍から6倍効果が高まった」としています。

 実際のイスラエルの感染者数は、その後どうなったでしょうか。

 以下は、それを現したグラフです。

 

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                    出典:世界保健機関(WHO)COVID-19

                  図1

 

 図1のように、イスラエルの新規感染者数は6月下旬から増え始め、9月3日に1万1316人でピークアウトするまで急激に増加しました。7月30日から本格的にブースター接種を開始した後も、新規感染者は増加しました。その急速な増加カーブからは、ブースター接種によって、予防効果が「2回目の接種を終えた時より約4倍高まった」ようには見えません。そればかりか、ワクチンの接種と感染者急増の時期が重なったため、ワクチンの接種は感染者を増加させるという声さえ上がりました。

 

死亡者は抑えられたか

 では、ブースター接種によって「重症化や入院の抑制効果が、5倍から6倍高まった」ことについてはどうでしょうか。

 以下は、イスラエルのおける新規死亡者数の推移を現したグラフです。

 

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                   出典:世界保健機関(WHO)COVID-19

                  図2

 

 図2のように、ブースター接種後の新規死亡者数は、前回のアルファ株による死亡者数より減っているように見えます。しかし、今回の感染爆発の原因となったデルタ株の致死率は、アルファ株のそれに比べて減少していることが指摘されています。

 たとえば、同時期における日本の新規死亡者数の推移は次のようです。

 

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                   出典:世界保健機関(WHO)COVID-19

                  図3

 

 日本でもデルタ株によって、これまでにない爆発的な感染者を出しました。しかし、図3のように、その死亡者数は前回のアルファ株の時より明らかに減少しています。

 つまり、イスラエルの新規死亡者数の減少は、ブースター接種による効果か、デルタ株の致死率の低下によるものかは明確に判断出来ないと考えられます。

 

 以上のように、ブースター接種は感染拡大を防いだようにも招いたようにも捉えられますし、重症化を明確に減少させた確証もありません。それにも拘わらず、イスラエル政府は、オミクロン株の拡大に備えて4回目の接種を計画しているというのです。(続く)