眞子さまは複雑性PTSDなのか(3)

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 前回のブログでは、複雑性PTSDの典型例について述べました。そして、宮内庁が発表した眞子さまの症状とはかなり異なることを検討しました。たとえば、複雑性PTSDの症状は、眞子さまにみられる「日常的に非常な苦痛を感じられることが多い」といった軽い症状ではありません。さらに複雑性PTSDであれば、通常は「公的な活動などもなさっていらっしゃるように、判断力には影響が生じておりません。結婚の準備を進めることにも支障はありません」というような精神状態ではないはずです。

 そうだとすれば、考えられる可能性は次の二つです。宮内庁が、眞子さまと小室圭さんの結婚をスムーズに進めるために複雑性PTSDという病名を利用したか、さもなければ、眞子さまは本当に複雑性PTSDなのだけれども、症状が一般国民には刺激的すぎるため、わざと軽めに症状を発表したかです。

 しかし、どちらであっても、宮内庁の思惑は功を奏さないでしょう。それどころか、眞子さまのお立場をさらに悪くする結果しか招かないとわたしは思います。

 

複雑性PTSDと発表した狙い

 まず最初に、眞子さまと小室圭さんの結婚をスムーズに進めるために、複雑性PTSDという病名を利用した可能性について検討してみましょう。

 宮内庁の発表では、精神科医の秋山剛・NTT東日本関東病院品質保証室長が、次のように述べました。

 

 眞子内親王殿下は、ご結婚に関する、ご自身とご家族及びお相手とお相手のご家族に対する、誹謗中傷と感じられるできごとが、長期的に反復され、逃れることができないという体験をされました。

 このため、2018~19年頃から、誹謗中傷を正すことが難しい、状況を変えることが困難であるという無力感を感じる状態で、ご自分達の人間としての尊厳が踏みにじられていると感じ、また、結婚後、平穏で幸福な生活を送りたいという願いが、不可能となってしまう恐怖を感じるようになられたと伺っています」

 

 このように秋山氏は、眞子さまが「ご自身とご家族及びお相手とお相手のご家族に対する、誹謗中傷と感じられるできごとが、長期的に反復され」たために、複雑性PTSDに至ったと説明しています。つまり、眞子さま複雑性PTSDは、結婚に関する国民からの誹謗中傷によって発症したというのです。

 さらに秋山氏は、国民からの誹謗中傷がやめば、真子さまの複雑性PTSDは改善するとも指摘します。

 

 「結婚されることで、眞子さまのご結婚に関するご自身とご家族及び、お相手とお相手のご家族に関する誹謗中傷と感じられる出来事がなくなれば、『複雑性PTSD』の改善が進むと考えられます。ご結婚について、周囲の方々からの温かい見守りがあれば、ご健康の回復がさらに速やかに進むものと考えられます」

 

 このように秋山氏は、国民からの誹謗中傷がなくなり、さらに国民が温かく見守れば、眞子さま複雑性PTSDは速やかに回復へ向かうと説明します。

 以上の秋山氏の説明は、宮内庁の次のような思惑に沿ってなされたのではないでしょうか。眞子さまと小室さんの結婚がスムーズに進むためには、これ以上のバッシングは望ましくない。そこで眞子さま複雑性PTSDだと発表することによって、国民からの批判をかわそうとしたのだと思われます。

 

発表後に祝福が増えたが

 宮内庁の発表は、一時的には効果が現れました。

 読売新聞が10月4~5日に行った緊急全国世論調査で、二人が結婚されることについてよかったと思うかと聞いたところ、「思う」との回答が53%、「思わない」が33%で、お二人の結婚を祝福する意見が半数を超えました。

 宮内庁の発表は功を奏したかにみえましたが、この効果はあくまで一時的なものでした。ネット上では国民の心配を誹謗中傷と決めつけたことへの反感や、複雑性PTSDという診断への疑念が出始めています。

 さらに長期的にみれば、宮内庁の発表には以下のようなマイナスの効果が現れると考えられます。

 

複雑性PTSDという偏見

 まず考えられるのが、眞子さま複雑性PTSDなのだという認識が全国に定着してしまうことです。

 前回のブログでも指摘したように、典型的な複雑性PTSDでは、自己否定感を伴った自傷行為や自殺企図が度々出現します。そして、人に対する恐怖感や不信感から、安定した対人関係を作ることができず、家族や友人、そして治療者とも上手く付き合うことができないこともよく起こります。

 秋山氏は「眞子内親王殿下におかれましては、公的な活動などもなさっていらっしゃるように、判断力には影響が生じておりません。結婚の準備を進めることにも支障はありません」と述べ、眞子さまの病状が重篤ではないことを強調しています。

 しかし、眞子さま複雑性PTSDと診断された事実は今後も残ります。そして、その事実だけが一人歩きしてゆく可能性があります。すると、複雑性PTSDという疾患の負のイメージが、眞子さまに対する偏見となって定着してしまう可能性があるのです。

 

偏見が秋篠宮家に向けられる

 次に考えられるのは、複雑性PTSDの診断がもたらす皇族に対する偏見です。

 眞子さまが「日常的に非常な苦痛を感じられる」状態になった原因として、「ご結婚に関する、ご自身とご家族及びお相手とお相手のご家族に対する、誹謗中傷と感じられるできごとが、長期的に反復されたことを外傷として捉えるなら、眞子さまの診断は単なるPTSDでよかったと思います。

 しかし、PTSDではなくわざわざ複雑性PTSDとしたために、事態はより複雑になりました。複雑性PTSDに特徴的に認められる症状として、否定的自己認知、感情の制御困難及び対人関係上の困難があります。こうした症状の背景には、自己否定感や対人恐怖感、対人不信感があると考えられます。そして、自己否定感や対人恐怖感、対人不信感が育まれるには、幼少期の成育環境が大きな影響を与えています。

 そうだとすれば、眞子さま複雑性PTSDになったのは、結婚に対する国民からの誹謗中傷だけでなく、成育歴にも問題があったという見方が出てくる可能性があります。すると、非難の矛先が、秋篠宮家に及ぶことにもなりかねません。

 このように、眞子さまと小室圭さんの結婚をスムーズに進めるために、宮内庁複雑性PTSDという病名を利用したとしたら、その目論見は眞子さまにとっても、さらには秋篠宮家に対してもマイナスの効果しかもたらさないのです。

 

本当に複雑性PTSDであったなら

 では、可能性は少ないですが、もし眞子さまが本当に複雑性PTSDであったとしたらどうでしょうか。

 まず最初にしなければならないことは、眞子さまの治療でしょう。複雑性PTSDは、現在行われている「誹謗中傷」がなくなれば自然に改善して行くような病態ではありません。自己の尊厳とか、対人関係の根本に関わるような、もっと根源的な問題を抱えています。そのため、結婚して皇族から離れること、ましてや祖国を離れて見知らぬ環境で生活することは、病状を悪化させることに繋がります。

 さらに眞子さまは、皇室を離れるときに支給される一時金1億4千万円を辞退されるご意向で、これを宮内庁が了承すると報道されています。宮内庁は、「眞子さまは一時金が高額だという批判を見て、受け取ると結婚後も誹謗中傷で精神的負担を感じることになると考えられた」と発表しました。

 しかし、一時金を辞退すれば、眞子さまはパパラッチなどから身を守るボディーガートや、心の支えになるような従者をお側に置くこともできなくなります。こうした環境は、複雑性PTSDの病状をさらに悪化させることになるでしょう。

 宮内庁眞子さまの結婚を推し進め、しかも一時金の辞退を容認する方針は、眞子さまの病態を悪化させ、眞子さまを絶望の淵に追いやる結末を招くことになりかねないのです。(続く)