東京五輪はなぜ無観客になったのか 東京五輪を潰そうとした人たち(1)

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 東京五輪は大きなトラブルを起こすことなく、大盛況のうちに幕を閉じました。大会が無事開催されたのは、大会関係者をはじめ、全国から集められた警察官、サイバー攻撃に対するセキュリティースタッフ、医療関係者、一般のボランティアなど、様々な人たちの莫大な労力の賜であったと思われます。海外から参加したアスリートからは、こうした人たちへの、特に一般ボランティアへの感謝の言葉が数多く寄せらました。そして、日本だからこそコロナ渦でも五輪が開催できたという賞賛の声が上がっています。

 しかし、日本のマスコミからは、陰で五輪を支えた人たちの苦労をねぎらう声は聞かれません。それどころか、五輪前には散々開催に反対しておきながら、開催中にはちゃっかりと競技を放映して視聴率を稼ぎ、大会終了後にはもう五輪開催への非難をはじめる始末です。

 一体彼らの精神構造はどうなっているのでしょうか。

 今回のブログでは、東京五輪を潰そうと躍起になった人たちについて、改めて検討してみたいと思います。

 

森会長を辞任に追い込む

 東京五輪を潰そうという試みは、今年に入って本格化しました。

 東京オリンピックパラリンピック組織委員会森喜朗会長が、日本オリンピック委員会JOC)の臨時評議会で「女性蔑視発言」をしたとして、マスコミが一斉に非難を始めました。森会長の発言が女性蔑視発言などではなく、まったくの言いがかりであるのは以前のブログ(『いじめはなぜなくならないのか 森会長へのバッシング』R3年2~3月)で指摘した通りです。しかし、森会長への非難は海外メディアにまで飛び火し、2月12日に森会長は辞任に追い込まれました。

 この辞任劇は、東京五輪を潰そうとする試みのプロローグでした。

 

東京五輪に反対する野党

 今年の4月に新型コロナ感染症の第4波が本格化すると、野党の党首は東京五輪に反対を表明しました。

 立憲民主党枝野幸男代表は、5月10日の衆院予算委員会で「国民の生命を守ることと五輪開催を両立させることは、不可能と言わざるを得ない」と訴えました。

 日本共産党小池晃書記局長は10日の記者会見で、立憲民主党の枝野代表が東京五輪の中止を明確に求めたことに「まったく同感だ」と述べたうえで、共産党志位和夫委員長も、通常国会冒頭の衆院本会議での代表質問で五輪中止を提起したと表明しました。

 さらに共産党は、東京都議選の公約のトップに五輪中止を掲げました。

 また、日本共産党の宇都宮けんじ氏は、5月5日に五輪中止を求めるサイトを立ち上げ、最終的には45万人もの署名を集めています。

 

東京五輪中止を求めるマスコミ

 マスコミも感染拡大に伴い、五輪開催の危険性を訴え続けました。

 5月12日にテレビ朝日系の『羽鳥慎一モーニングショー』の中で、レギュラーコメンテーターの玉川徹氏は、丸川珠代五輪相が「東京五輪はコロナ禍で分断された人々の間に絆を取り戻す大きな意義がある」と発言したことに対して怒りを爆発させ、「絆などという抽象的な美しい言葉を使われると、逆に白々しく響く」と非難しました。

 5月19日に毎日新聞は、米ロサンゼルス・タイムズが、「東京オリンピックは中止しなければならない」という記事を掲載したと報じました。外圧を利用して、五輪を中止しようとする試みです。

 5月23日には信濃毎日新聞が、医療体制の崩壊、開催意義の喪失、国民分断の3点をあげて「東京五輪パラリンピックの両大会は中止すべきだ」と社説で訴えました。

 これに呼応するように朝日新聞は、5月26日の社説で以下のような声明を発表しました。

 

 新型コロナウィルの感染拡大は止まらず、東京都などに出されている緊急事態宣言の再延長は避けられない情勢だ。

 この夏にその東京で五輪・パラリンピックを開くことが理にかなうとはとても思えない。人々の当然の疑問や懸念に向き合おうとせず、突き進む政府、都、五輪関係者らに対する不信と反発は広がるばかりだ。

 冷静に、客観的に周囲の状況を見極め、今夏の開催の中止を決断するよう菅首相に求める。

 

開幕1ヶ月前にも

 開幕1ヶ月を切ると、再び五輪中止の主張が勢いを増しました。

 TBSの「サンデーモーニング」では7月4日に、フリージャーナリストの浜田敬子氏と大阪芸術大学客員准教授の谷口真由美氏が、東京オリンピックの中止を主張しました。

 野党の党首は、7月12日に東京に第4回目の緊急事態宣言が出されるに及んで、再度五輪中止を訴えました。

 立憲民主党の枝野代表は、「緊急事態宣言が出されるなか、多くの皆さんにさらに1カ月にわたって我慢をお願いすることになる。その中で、五輪・パラリンピックが何事もないかのように実施されるというのは到底理解できない」として、「東京五輪パラリンピックについて、中止または延期をIOC(国際オリンピック協会)などに対し、強く求めて交渉するべきだ」と主張しました。

 共産党の志位委員長も、記者会見で「緊急事態宣言の下でのオリンピックなど、とんでもない。国民に対して矛盾したメッセージになり、国民の協力を得ることができず、宣言を発令しても実効あるものにならない」とオリ・パラ中止を求めました。

 

開会式直前までバッシングは続く

 五輪を潰そうという試みは、開会式の直前まで続きました。開閉会式を担当した制作スタッフが、直前に辞任を余儀なくされたのです。

 開閉会式の楽曲制作を担当したミュージシャンの小山田圭吾氏は、過去の雑誌インタビューに掲載された“イジメ自慢”で開幕4日前に辞任しました。

 また、制作チームのショーディレクターだった元お笑いコンビ「ラーメンズ」の小林賢太郎氏は、コント内でかつてユダヤ人に対するホロコーストをネタにしていたことが判明し、前日になって解任されました。
 さらに、俳優の竹中直人氏が、木やり歌とダンスのパフォーマンスの出演を開幕前日に辞退していたことも週刊文春に報じられました。竹中氏が辞退したのは、36年前に障害者や女性を揶揄するようなコントを演じていたことが理由だといいます。

 彼らが過去に行ったことは、確かに非難されるべき内容でしょう。しかし、彼らがその任にふさわしくないと思うなら、彼らが選出された際に非難するべきではないしょうか。開会式の直前になって過去の問題を持ち出すことには、五輪にマイナスの影響を与えようとする意図があったとしか思えません。

 

五輪を潰そうとした一部の人たち

 五輪開催を阻もうとするこうした試みは、野党やマスコミ、さらに一部の識者や芸能人からもなされました。彼らは声を大にして、五輪反対を訴え続けました。そのため、世論は五輪中止へと傾きかけました。

 読売新聞が7月9日から11日に全国で行った世論調査によると、無観客開催が決まった東京五輪について、どうするのが良いかを尋ねた結果、東京都民の回答では「中止する」は50%(全国41%)で、「無観客で行う」の28%(全国40%)や「少しでも観客を入れる」の19%(全国17%)を大きく上回っていました。

 それにもかかわらず五輪が無事に開催できたのは、管内閣が開催の方針を曲げなかったこと、大会関係者やボランティアの人たちが地道な努力を続けたこと、そしてアスリートたちが獅子奮迅の活躍をしてくれたからでしょう。

 日本には、黙々と努力を続けることのできる、実直で有能な人たちがまだまだたくさん存在していることを、東京五輪はわたしたちに示してくれました。それに対して、五輪反対を声高に叫ぶ人たちは、目立ちはするものの一部の少数者であったことも分かりました。

 それにしても、五輪反対を叫び続けた人たちは、本当に日本国民のことを心配してそうしていたのでしょうか。(続く)