安倍政権はなぜ歴代最長になったのか(14)

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 前回までのブログ『新型コロナウィルスの特性』では、新型コロナウィルスが武漢株から欧米株に変異したことによる感染力と病原性の増強と、日本株またはソ連株によるBCG接種の有無によって、各国の感染者数と死亡者数の傾向は、概ね説明できることを検討しました。

 では、日本の感染者数と死亡者数が抑えられたのは、武漢株だったこととBCG接種を行っていたからなのでしょうか。実は、ことはそう単純ではありませんでした。なぜなら、外国からの渡航制限が遅れていた日本は、武漢株だけでなく、欧米株の新型コロナウィルスも迎え入れてしまったからです。

 しかし、それでも日本では、欧米諸国のような感染爆発は起こりませんでした。今回以降のブログでは、その理由を、安倍政権の新型コロナウィルス対策と絡めながら検討したいと思います。

 

武漢株ウィルスの流入

 台湾、マレーシア、スリランカ、フィリピン、シンガポールアメリカが次々と中国からの入国者を拒否する措置を発表するなかで、安倍内閣が2月1日に中国湖北省からの入国拒否を表明しました。その際には、なぜ中国全土からの入国を拒否しないのかという非難が殺到しました。安倍内閣が事実上、中国全土からの入国制限を行ったのは3月5日になってからでした。この間に日本は、中国人観光客184万人を入国させました。その結果日本は、世界で最も中国人を受け入れた国になったのです。

 当然のことですが、新型コロナウィルスの武漢株は日本に大量に流入しました。そのため日本でも新型コロナウィルス感染症は拡がりましたが、武漢市のような感染爆発は起こりませんでした。

 

3月までの感染者数

 では、日本での感染者数は、どのような変移をたどったのでしょうか。

 

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        JX通信社 「新型コロナウィルス 最新感染状況マップ」より 

                                                              図1

 

 図1は、1月28日に日本で最初に新型コロナウィルスの感染者が確認されてから、3月31日までの全国の感染者数の推移です。

 新規の感染者数は、3月24日から増加に転じるまでは、大きな増加は見られていないことが分かります。3月5日までに、中国人観光客184万人を入国させたにもかかわらず、日本では感染者の爆発的増加は起きませんでした。

 ここでもPCR検査が行われていないため、感染拡大が追えていないだけだという批判があるでしょう。そこで、この時点までの感染者数を推計してみましょう。この推計には、韓国での死亡率を使用します。韓国では希望すれば誰でもPCR検査が受けられたのですから、感染者数かなり実数に近かったと思われます。そして、医療崩壊が起きておらず、武漢株ウィルスの感染であり、しかもBCGを日本株で接種していた時期が長いことが共通している点でも、比較対象としては好都合です。

 3月7日時点での韓国の感染者数は6,767人、死者数は44人ですから、死亡率は

 44÷6,767×100≒0.65%

になります。

 3月23日までの日本の死亡者数は41人だったため、この時点での日本の推定感染者数は、

 41÷0.65×100≒6,308

になります。

 つまり、3月23日までの日本では、すでに6,300人もの感染者が出ていたと考えられます。これは、当時の発表である1,138人の5.5倍の数字です。

 

武漢株ウィルスは終息した

 ところが、この推計6,300人にものぼった新型コロナウィルス武漢株の感染者は、これ以降は次第に減少して行きました。

 国立感染症研究所は4月28日に、「中国から日本に流入した新型コロナウイルスはほぼ終息し、いま全国に広がっているウイルスはヨーロッパや米国から入ってきた可能性が高い」と発表しました。

 同研究所は新型コロナウィルスの遺伝子変異を調査し、その結果、“武漢型”は終息したことになると結論しました。そして、現在日本に蔓延しているウイルスは3月末から全国で確認されている“第2波”で、これはヨーロッパや米国からの帰国者によってもたらされたものだと指摘しています。

 つまり、武漢株による感染者は3月24日以降は増加することなく減少に転じ、4月末には終息に至ったのです。 

 

武漢株ウィルスの蔓延を防げたのは

 では、この新型コロナウィルス武漢株に感染した人々を、日本はどのように終息させたのでしょうか。

 以下は、安倍内閣が行った政策を、感染者数の動向と共に示したものです。

 

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                  図2

 

 厚生労働省の感染対策本部が、2月25日に新型コロナウイルス感染症対策の基本方針を発表しました。この対策の要点は二つです。一つは対策班がクラスターを把握し、新たなクラスターが発生しないようにクラスター潰しを行ったこと、もう一つは新型コロナウイルスの相談を 受ける帰国者・接触者相談センターを整備し、24 時間対応を行って医療機関への負担を減らしたことです。

 諸外国での一般的な対応は、PCR検査を出来る限り行って現在の感染者を正確に把握し、彼らの行動を制限して感染の拡大を防ぐというものでした。これに対して日本の対応は、感染者の過去の行動を遡り、過去の接触者の行動を把握し制御することによって新たなクラスターの発生を防ぐというものでした。この地道な対策によって、現在の感染者の把握が充分でなくても、過去の接触者を把握することで新たなクラスターを防ぐことが可能になったのです。手間暇はかかりますが、これは実に画期的な方法だと言えるでしょう。

 帰国者・接触者相談センターを整備し、24 時間対応を行ったことは、医療崩壊を防ぐために非常に重要な役割を果たしました。

 新型コロナウィルスに不安になった人々が、病院に殺到する危険がありました。そうなれば、病院の外来がクラスターになる可能性がありました。帰国者・接触者相談センターが相談者の振り分けを適切に行ったことによって、病院の外来がクラスターになる危険が回避されました。

 そして、PCR検査を帰国者・接触者相談センターが選択して行ったことで、PCR陽性者が病院のベッドを占有することなくなり、病院のベッドが不足する危険が回避されました。その結果、本当に治療が必要な重症患者の治療を集中治療室で行うことが可能になったのです。

 これらは、いずれも日本独自の政策であり、新型コロナウィルス感染症の対策には、非常に大きな効力を発揮したと思われます。

 加えて、安倍総理が2月26日に、スポーツや文化に関するイベントの開催について中止・延期、または規模縮小等の対応を行うよう要請したこと、さらに27日には、世界に先駆けて全国全ての小学校、中学校、高校、特別支援学校について、春休みまで臨時休校を行うように要請したことも、感染拡大に有効であったと考えられます。

 

日本国民の衛生観念も功奏した

 以上のような政府の政策に加えて、個々の日本人の対応も大きな効力を発揮したと思われます。

 日本人は元来清潔好きで、手洗い、うがいを頻回に行います。そして、入浴を楽しむ文化も古来から存在してきました(日本人の入浴の歴史は、仏教の伝来と共に、6世紀に沐浴として始まったと言われています。入浴は七病を除き七福を得るという教えがあり、これが健康や福を得るための入浴として、日本文化に根付いて行きました)。町が清潔に保たれ、家の中が土足禁止であるのも、日本人の生活環境を清潔に保ってきた要因だと言えるでしょう。

 また、日本は対人恐怖を根底に持つ文化であり(この詳細は2018年4月のブログ『日本人は無宗教なのか』をご参照ください)、キスやハグ、そして握手の習慣すらなく、いわゆるソーシャルディスタンスを保って生活する日常に慣れていることも、感染予防には有効に働きました。さらに、欧米諸国からは奇妙だとか不気味と言われて評判の悪かったマスクをする日本人の習慣は、感染拡大には大きな効力を発揮しました。

 こうして考えると、日本文化に根付いた日本人の生活習慣は、感染予防に対しては非常に有効な要素をたくさん含んでいることがわかります。もしかするとこれらの習慣には、危機的な感染症の流行から日本人を護ってきた、先人たちの知恵が受け継がれているのかも知れません。

 

武漢株を抑え込んだ日本

 以上で述べてきた要因に加えて、日本ではBCGが日本株によって行われてきたことも、新型コロナウィルスの感染を拡大させないために有用に働きました。こうして日本は、感染爆発を起こすことなく、武漢株を抑え込むことに成功したのです。

 本来なら日本は、4月末には新型コロナウィルス感染症の終息宣言を行えるはずでした。しかし、ことはそう簡単には進みませんでした。武漢株から変異し、感染力と病原性が格段に強力になった欧米株が、3月中旬から日本に流入し始めたからです。

 それは新規感染者の急激な増大を招きました。この急激な新規感染者の増大は、それまでの対策ではウィルスの拡大を制御できないことを示していました。

 

 新たな危機に対して、安倍内閣はどのような対応を行ったのでしょうか。(続く)