安倍政権はなぜ歴代最長になったのか(10)

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 6週にわたって番外編を書いてきましたが、今週は『安倍政権はなぜ歴代最長になったのか』に戻って、安倍内閣の新型コロナウィルス感染症対策について検討したいと思います。

 

非難される安倍政権

 新型コロナウィルス感染症への対策を行ってきた安倍内閣は、常に批判にさらされてきました。

 2月1日に中国湖北省からの入国拒否を表明した際には、なぜ中国全土からの入国を拒否しないのかという非難が殺到しました。台湾、マレーシア、スリランカ、フィリピン、シンガポールアメリカが次々と中国からの入国者を拒否する措置を発表するなかで、日本の措置は中途半端だというのです。日本の観光業界や中国政府に配慮するあまり、国民の命を危険に晒しているとの批判が、主に保守層からなされました。

 2月3日に新型コロナウィルス感染症が発症したダイヤモンドプリンセス号が横浜港に着岸し、乗員乗客を船内にとどめたまま感染対策を行った際には、船内のずさんな感染症対策が感染爆発を誘発させたという非難が寄せられました。

 2月14日に感染症の専門家の方々を構成員とする専門家会議を設置した際には、遅きに失したという批判に加え、「安倍首相は感染拡大にもかかわらず会食の日々」という政策とは別の非難も加えられました。

 2月25日に、厚生労働省の感染対策本部が、新型コロナウイルス感染症対策の基本方針を発表された際には、新型コロナウイルスへの感染を心配する人が、病院でなく、新たに整備される帰国者・接触者相談センターにまず相談する方策に疑問の目が向けられました。そして、感染症を心配する人がPCR検査を受けられないことにも、非難が寄せられました。これには、一部の医療関係者からもなされており、それは現在も続いています。

 2月26日に、今後2週間はスポーツや文化に関するイベントの開催について中止・延期、または規模縮小等の対応を行うよう要請した際には、場当たり的だと非難されました。

 翌27日に、全国全ての小中高等学校校と特別支援学校に対して、3月2日から春休みまで臨時休校するように要請した際には、その効果について疑問視する声が上がりました。休校の効果については、一部の専門家から、科学的な根拠が希薄であると疑問符が投げかけられました。

 

非難され続ける安倍政権

  3月以降も、安倍内閣の新型コロナウィルス感染症対策は、非難の対象となりました。

 3月11日に、新型コロナウイルス感染症を適用対象に加える新型インフルエンザ等対策特別措置法改正案が、衆院内閣委員会で与野党の賛成多数で可決されました。これによって、感染拡大を抑制するために私的権利の制限を含む措置をとれる「緊急事態宣言」が可能となりました。これに対して、歯止めのない首相への権力の集中や報道の自由の制限をもたらす可能性があるとして、一部の憲法学者や弁護士が反対を表明しました。

 その一方で、4月7日に安倍総理が東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、大阪府兵庫県、福岡県に対して非常事態宣言を出した際には、宣言を出すのが遅すぎるという非難がなされました。

 4月1日に、全世帯に2枚ずつ布製マスを配布することを安倍総理自ら表明した際には、「布製マスクは感染防止に効果がない」「たった2枚配ることに意味があるのか」「466億円も使うなら、ほかの使い道があるはあずだ」「マスクが小さすぎる」といった非難がマスコミを賑わしました。また、安倍総理が布製マスクを率先して使ったことから、このマスクはアベノミクスをもじって、「安倍のマスク」と揶揄されました。

 

私的なことまで非難の対象に

 安倍総理が4月12日、星野源さんの楽曲「うちで踊ろう」とのコラボ動画をSNSで公開し、自宅でくつろぐ姿を披露したところ、批判的なリプライが続出しました。

 「即時の補償は一切無し、自分はこんなくつろいだ動画載せて何様のつもり?」 「星野源を利用するのはやめてください」「総理ご自身が投稿してるわけじゃないんだろうけど、窮地に立たされてる国民の気持ちを逆撫でするような投稿はやめていただきたい」といった内容です。それにしても、一国の総理に対して「何様のつもり?」とはよく言ったものです。

 非難の対象は、昭恵夫人にも及びました。

 3月26日に、満開の桜の下で微笑む昭恵夫人のほか、藤井リナさん、NEWSの手越祐也さんら、総勢13人の男女が写った写真が公開されました。東京都から公園や河川敷での花見の自粛要請が出ていたことに加え、森友学園問題を苦にして自殺した元財務省職員の手記が『週刊文春』に掲載された直後だったこともあり、昭恵夫人の行動に非難が集中しました。

 さらに、4月15日付けの「文春オンライン」記事で、昭恵夫人が3月15日に、約50人の団体ツアーと共に大分県宇佐神宮を参拝していたことが報じられました。前日に安倍総理がコロナ対策の重要性を述べたこともあり、ノーマスクで他の客と距離を取ることもなく、警戒しているそぶりのない昭恵夫人の姿にさらなる批判の目が向けられました。

 

安倍政権の終わりの始まり?

 安倍総理は4月16日に、それまでの減収世帯に30万円を給付するとした方針を撤回し、国民1人当たり一律で10万円を給付する方針を表明しました。この一律10万円の給付案は従来から公明党が主張していたもので、同党の山口那津男代表の連立離脱も辞さないとする態度に押されて、安倍総理が受け入れることになったと報道されました(事実はそうではないと思われますが)。

 また、4月14日に自民党の二階幹事長が、国民への一律10万円の現金給付を政府に要請する考えを示していたこともあって、自民党内での安倍総理の影響力の低下を指摘する声も上がりました。

 4月17日に安倍総理が、「混乱を招いたことは私の責任であり、国民に心からおわび申し上げたい」と陳謝したことを受けて、一部のマスコミは、安倍政権はレームダック化した、これは安倍政権の終わりの始まりだと囃したてました。

 

どれほどの悲惨な結果をもたらしたか

 以上で述べてきたような批判的な情報だけを見聞きすれば、誰もが新型コロナウィルス感染症によって日本は壊滅的な打撃を受け、社会機能が停止してしまったと思うのではないでしょうか。

 では、安倍政権の間違いだらけ(?)の新型コロナウィルス対策によって、どれほど悲惨な結末がもたらされたのかを検証してみましょう。

 以下は、4月25日現在の、各国の感染者数と死者数の比較です。

 

             感染者数        死者数

1.アメリカ      905,333     51,949 

2.スペイン      219,764     22,524

3.イタリア      192,994     25,969

4.フランス      159,952     22,279

5.ドイツ       155,054       5,767

6.イギリス      144,640     19,567

7.トルコ       104,912       2,600

  :

10.ロシア         74,588      681

  :

16.インド         24,530                      780

  :

26.日本          12,829                      345

       :

                  (ジョンズ・ホプキンス大学まとめ)

 

 実際の数字をみてみれば、日本は感染者数も死亡者数も決して多くはありません。むしろ世界の中では、感染者数と死亡者数はともに少ない方に分類されると思われます。

 これだけ非難され続けた安倍政権の新型コロナウィルス感染症対策が、今のところ数字上では着実な成果を収めているのはなぜでしょうか。

 その理由を、次回のブログで検討してみましょう。(続く)