韓国はなぜ繰り返し賠償を求めてくるのか(19)

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 前回のブログでは、日本が韓国や中国に謝罪や賠償を繰り返すことの、日本社会への負の影響について検討しました。

 今回のブログでは、日本が謝罪を繰り返すことの、韓国社会への負の影響についても検討したいと思います。

 

日本を非難し続ける韓国

 以前のブログ(『韓国はなぜ(10)、(11)』)で、母親を非難し続ける娘の症例を示し、母親が娘に謝っても、娘が楽にはならない理由を検討しました。それは、母親には母親なりの育児の事情があるなどして心から謝れないからであり、また母親が謝ることが育児が間違っていたとか、自分は愛されてこなかったという思いに結びつく可能性があるからでした。

 これは日韓関係にも当てはまります。韓国から浴びせられる一方的な非難に対して、日本は心ならずも謝罪してきました。それに対して、韓国側は一瞬は満足するものの、再び日本に対する憎しみが沸き上がってきます。それは韓国側が、日本の謝罪が本心から反省したものでないことを感じ取るからです。そのために、「心からの謝罪」を何度でも繰り返し求めることになります。

 さらに、日本が謝罪することは、日本が韓国にひどい扱いをしたと自ら認めることにもなります。それは併合時代の歴史、韓国が近代化に向けて懸命に努力してきた歴史に意味がないと、日本自身が示すことになります。そして、日本には韓国に対する好意的な感情はなかったのだと、自ら宣言していることにも繋がるでしょう。

 

韓国は自国の問題から目を逸らしている
 韓国は日本を非難し続けてきたのですが、一方でそれは、自国の問題から目を逸らすことにもなっています。

 大統領の支持率が低下したら日本を非難する、経済が悪化したら日本を非難する、国内に不満が満ちたら日本を非難するというこれまでの対日姿勢を続けていれば、韓国は自国の問題に目を向けることができなくなります。日本を非難してさえいれば、韓国の問題から目を逸らすことはできるかもしれませんが、それでは自国の問題はいつまでたっても解決しないでしょう。

 日本が韓国の非難に対して謝罪と賠償を繰り返せば、韓国の人々は一時的に留飲を下げ、精神的に安定するかもしれません。しかし、日本を非難する内容は架空の物語であり、架空の物語を扱っていても現実の諸問題は何も解決しません。つまり、日本の謝罪と賠償は、韓国が自国の現実的な問題から目を逸らす手助けをしているに過ぎないとさえ言えるのです。

 

近代化が進まない韓国

 併合時代に、朝鮮では近代化が推し進められました。それは日本によって強引に推し進められたのではなく、朝鮮の人々は日本式近代化の優等生として、近代化に自ら邁進しました。その結果、朝鮮には短期間のうちに近代化の基礎が形成されました。

 ところが韓国は戦後になって、併合時代を徹底して否定しました。そして、併合時代を近代化の基礎が形成された時代としてでなく、日本から搾取された植民地時代として捉え直しました。日本に導かれた近代化の遺産は否定され、近代化による成果の一部は失われて、韓国は再び伝統的な社会に逆行することになりました。

 

徴用工と慰安婦問題は韓国が近代化されていない証し

 韓国大法院(最高裁)が、日本企業で働いていた韓国人労働者に対して、日本企業に賠償命令を下したいわゆる徴用工問題は、1965年の日韓請求権協定で完全に決着したはずでした。さらに韓国政府は、従軍慰安婦問題でも、「最終的かつ不可逆的な解決」をうたった2015年の日韓合意を覆しました。
 一度両国間で正式に決定した協定を一方的に覆すことは、近代国家間ではあり得ない行為です。法よりもその時々の民意が優先されて生じたこれらの問題は、韓国に未だに近代化が達成されていないことの証しです。

 本来ならこれらの問題が起きたときこそ、韓国が近代国家として振舞って行く契機にするべきでしょう。しかし、韓国は日本を非難することにしか意識が向いていないため、近代国家としてはあり得ない振る舞いを続けて、日本から国家間での話し合いができない国として認識されつつあります。アメリカの警告を無視して日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄してからは、アメリカからも距離を置かれるようになっています。

 

反日というナショナリズムしかない

 それにしてもなぜ韓国は、永遠に日本を非難し続けるのでしょうか。

 以前のブログ(『韓国はなぜ(10)』)でも指摘しましたが、自らの力で独立を勝ち取っていない韓国では、建国の神話を創ることが困難でした。建国の神話を創れないと、国民は国を愛する心、つまり愛国のナショナリズムを形成することができません。そこで愛国のナショナリズムがない韓国では、代わりに反日ナショナリズムを作り上げました。

 古田博司氏は、『韓国・韓国人の品性』1)の中で次のように指摘しています。

 「韓国には反日ナショナリズムはあっても、愛国のナショナリズムがない。
 歴史上は、シナ大陸の政権下で自立したことがなく、近代は日本の統治下となって資本主義経済の基盤を作った。
 独立は日本の敗戦で棚ぼた式に転がり込み、そのあとに、三十八度線で北には行けなくなって『島化』した国である。一度も自立的な歴史を歩んだことがないのだ。
 そんな彼らに偽のナショナリズムを教えたのは、日本の戦後の左翼学者たちだった。韓国は日本が来なければ自然に近代化し、資本主義ができていたはずだ、その資本主義の芽を摘んだのが日本なのだ、と教えた。いうまでもなく、マルクス唯物史観である。日本は韓国を搾取し、収奪した悪辣な国なのだから、自立的な歴史を日本から取り戻そう、そう教えたのだ。
 そこから反日という形で韓国のナショナリズムが育っていった」(『韓国・韓国人の品性』68頁)

 反日が愛国のナショナリズムの代わりであれば、反日を訴えることは愛国を訴えることと同義になるため、大統領の支持率は上がりやすいでしょう。さらに国が危機的な状況に瀕した際には、愛国のナショナリズムが必要になりますから、いっそう反日が叫ばれることになります。

 歴代の大統領はすべて、反日を愛国のナショナリズムとして利用してきました。都合のいいことに、日本政府も韓国の訴えに同調して、謝罪と賠償を繰り返してきました。そのため、反日は愛国のナショナリズムであり続けました。

 

愛国心をもてない韓国

 その結果として韓国は、反日に頼らない愛国心、言い換えれば、自らの国を自らで誇れる本当の意味での愛国心を築かないまま今日に至っています。これは韓国の人々にとって、実に不幸なことではないでしょうか。

 韓国は経済的には間違いなく発展してきました。現在韓国のGDPは世界12位です。その一方で、2016年の人口10万人あたりの自殺者数を世界で比較すると、韓国はリトアニアに次いで第2位の多さです。これは国民が幸福を感じられていない一つの指標であると言えるでしょう。そして、韓国民が幸福を感じられない重要な原因の一つが、韓国に未だに愛国のナショナリズムが形成されていないことにあるのだと考えられます。

 

悲惨な末路をたどる韓国の大統領

 韓国の歴代の大統領は、すべて悲劇的な末路をたどっています。退任後に亡命したり、在任中に暗殺された大統領がいます。自らや親族が逮捕されて実刑を受けたり、大統領自身が自殺を遂げたこともありました。これまでに、退任後に平穏な余生を送っている大統領は、韓国には誰一人いません。

 その理由はさまざまに語られています。たとえば、大統領という絶大な権力を利用して、大統領本人や家族を含めた周囲の者が私利私欲を肥やした結果だとか、恨の文化をもつ韓国民が権力者に復讐を繰り返しているとか、強大な権力をもつ検察制度が原因になっているとかです。

 これらの理由は、それぞれ重要な要因になっているでしょう。文在寅大統領が、退任後の自らの末路を案じて、検察制度の改革に躍起になっているのもそのためだと思われます。

 しかし、わたしはもっと重要な理由があると思います。それは歴代の大統領が、韓国社会に反日以外のナショナリズムを創出する努力をしてこなかったことです。その結果として、真の愛国のナショナリズムを構築できずに、韓国の国民を幸せに導けなかったことです。

 反日ナショナリズムに頼り、愛国のナショナリズムを創出してこなかったことが、やがて大統領に対して恨の感情を生み、さらに大統領に復讐しようとする主要な動機になっているのではないでしょうか。

 一方で、わたしたちは、日本が謝罪を繰り返すことによって反日ナショナリズムを永続させ、韓国が自前の愛国心を創り上げることの妨げになっていることを忘れてはならないと思います。(続く)

 

 

文献

1)古田博司:韓国・韓国人の品性.ワック株式会社,東京,2017.