韓国はなぜ繰り返し賠償を求めてくるのか(16)

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 これまでのブログで、韓国が日本を非難する訴えは精神症状であり、歴史的事実を持たない物語であることを指摘しました。

 たとえば「主権」「国王」「国語」「人命」「姓名」「土地」「資源」の七つを日本から奪われたという主張や、日本に併合された時代は「人類史上類例のない過酷な植民地支配」だったという主張は、実は現実的な事実がなく、その内容は中華帝国による千二百年間の支配中に受けた被害をもとに創られた物語でした。そして、韓国が世界中で広めようとしている「従軍慰安婦問題」でも、日本軍による強制連行という事実は存在せず、これも中華帝国に献上させられた貢女をモデルに創作された物語でした。

 今回のブログでは、いわゆる徴用工問題も同様の視点から検討し、さらに、現在起こっている日韓の問題についても検討したいと思います。

 

徴用工問題も創られた物語

 韓国大法院(最高裁)が日本企業に対して、戦時中に日本企業で働いていた韓国人労働者への賠償命令を下したいわゆる徴用工訴訟問題も、創られた物語でした。

 黄文雄氏の『なぜ韓国は未来永劫幸せになれないのか』1)によれば、朝鮮人の強制連行という事実は存在せず、朝鮮総督府はむしろ朝鮮人の日本への渡航を阻止することに腐心していたといいます。日中戦争開戦後には「内鮮一体」のスローガンのもと、渡日取り締まりが撤廃され、渡航者は一気に増加しました。この渡航者が、自らの意志で日本の企業で働きました。つまり、いわゆる徴用工は強制連行された労働者ではなく、自ら渡日して働いていた応募工だったのです。

 日本企業で働いた労働者の待遇においても、彼らには決して搾取が行われていたわけではありません。最近韓国からも、歴史的な事実を指摘する声が上がるようになりました。

 李宇衍(イウヨン)落星台経済研究所研究委員は、「【1】徴用工の賃金は正常に支払われた。【2】労働者には自由があった。【3】お金も自由に使えた。 ある人は真面目に貯金をし、韓国に送金していた。家を建てるために借りた金を返済し、更に農地を買った人もいました。逆に賭博などで賃金を浪費した人も多くいました」と指摘しています(『週刊ポスト』2019年8月30日号)。

 このように、「韓国人労働者は強制連行され、安い賃金で働かされて日本企業から搾取された」という主張は、現実に基づかない創られた物語でした。

 

強制連行は朝鮮半島の伝統

 徴用工の物語も他の物語と同様に、中華帝国との歴史的な事実をもとに創られています。黄文雄氏によれば、徴用工の物語のモデルになった歴史とは次のようなものでした。

 

 朝鮮半島では唐軍やモンゴル軍、満蒙発揮(まんもうはっき)軍による強制連行の悲史を昔から繰り返してきたのだ。『強制連行』というのは、朝鮮半島の伝統的歴史文化とさえ言える。

 高句麗の滅亡後、唐、大元、清の満蒙発揮軍による朝鮮人の連行はつづく。1636年清の侵攻による丙子胡乱(へいしこらん)のさいは50万人、朝鮮の史書によれば人口の半数が北に連れていかれ、盛京(せいけい 現在の瀋陽)の奴隷市場で売られたと伝えられている」(『なぜ韓国は未来永劫幸せになれないのか』31頁)

 

 搾取されたという程度の問題ではありません。清によって強制連行された朝鮮人は、奴隷として売られていたのです。

 

踏みつけられ続けた朝鮮

 以上で述べてきたように、朝鮮は千二百年もの間、中華帝国の属国でした。牛馬や金銀や宦官の他に高貴な女性まで貢ぎ物として献上し、多くの朝鮮人が奴隷として強制連行されるという屈辱的な扱いを受け続けてきました。まさに、朝鮮の人々は、中華帝国から踏みつけら続けてきたと言えるでしょう。

 ここでもう一度、サッカーユース国際大会「パンダ・カップ2019」の決勝戦で、中国代表を破って見事優勝した韓国の青年が、思わず優勝カップを踏みつけた写真を見てみましょう。

 

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 この行為は、韓国の人々の本心を現わしており、長年の屈辱感を晴らすためのものだと言えるのではないでしょうか。

 

日本で屈辱感を晴らしてきた

 朝鮮の人々は、中華帝国に対して、この屈辱感を晴らすための行動を起こしてきませんでした。中華帝国の武力を恐れ、柵封体制の中でひたすら忠誠を誓ってきました。しかし、この屈辱感の記憶は、消えてしまうわけではありません。無意識の中で、脈々と伝承されてきました。

 はからずも、この屈辱感を晴らす機会がもたらされました。それは日本人が自ら、併合時代に朝鮮の人々に酷いことをしたと言い始めたからです。この自虐的な日本人と組むことによって、併合時代の日本が、朝鮮に対していかに非道な行いをしたかという物語を創り出すことが可能になりました。さらに、この架空の物語をもとに日本を叱責すれば、日本政府は謝罪と補償をしてくれるというおまけまで付いていました。

 韓国にとって、これは降ってわいたような幸運でした。韓国は、絶好のストレス解消手段を手にしました。以後韓国政府は、政府の支持率が悪化するたびに、または国民の不満が高まるたびに、「併合時代の日本の悪行」を取り上げて日本を非難し、人々のフラストレーションを発散させて、支持率を回復させてきたのです。

 

架空の物語を否定する日本

 ところが、徴用工問題に、自衛隊機への火器管制レーダー照射事件、さらに慰安婦財団の解散が加わって、日本政府もついに堪忍袋の緒が切れました。韓国政府を信用できなくなった日本政府は、安全保障上の問題からフッ化ポリイミド、レジスト(感光材)、エッチングガス(フッ化水素)の3品目の輸出で、個別の審査や許可が必要となる輸出規制を行いました。さらに、韓国を安全保障上の友好国である「ホワイト国」の指定から除外することを閣議決定しました。

 これらの決定は、韓国が主張する架空の物語に基づく日本批判に、日本政府が応じないことを意味しました。ひたすら謝罪と賠償を繰り返してきた日本政府の態度に慣れっこになっていた韓国政府をと韓国民は、日本の態度に驚愕と混乱をきたしました。戦前の日本がすべて悪いとする物語を日本が認めなかったら、韓国は屈辱感を晴らす手段を失ってしまうからです。

 

反発する韓国政府

 韓国の「ホワイト国」除外に対して、文在寅大統領は、「加害者の日本が居直り、大口をたたく状況を座視しない」と日本を非難しました(この表現が意訳として「盗人猛々しい」と報道されました)。

 韓国政府は、7月24日にジュネーブで開かれた世界貿易機関WTO)一般理事会で、「不当な措置で自由貿易からの逆行」だと日本を非難しました。アメリカにも政府高官を送って、日本の政策を撤回するように働きかけました。さらに8月12日には、「ホワイト国」から日本を除外する制度の改正案を発表しました。

 こうした一連の対応が思うような効果を発揮しないことに業を煮やした韓国政府は、8月22日になって、ついに日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄することを発表しました。北朝鮮がミサイル発射を繰り返すなか、日米の軍事同盟よりも、北朝鮮、中国、ロシアに軸足を移したととられかねないこの決定は、理性的な判断を失った、正気の沙汰とは思えない判断だと言えるでしょう。

 文在寅大統領は、屈辱感に耐えて現実の生活を守ることを良しとしませんでした。たとえ国に大きな損失を与えても、場合によっては国を滅亡させることになったとしても、民族の自尊心を守る途を選択したのです。

 

反日で燃え上がる韓国民 

 韓国民の多くも、文大統領を支持し、彼の反日政策に同調しました。それに呼応するように、韓国社会には空前の日本批判が噴出しました。それが、日本製品の不買などを訴える「NO NO JAPAN」キャンペーンです。

 日本政府が韓国向けの半導体材料輸出に対する規制を発動したことを受け、韓国では日本製品のボイコットを呼び掛ける動きが起きました。8月に入ると、韓国の日本製品不買運動が拡大し、不買対象の製品やブランドを共有するインターネットサイトに登録された日本製品は130品目を超えました。不買対象は日本産原材料が含まれる品目にも拡大し、自治体が日本関連事業を中止するなど広がりを見せています。

 この運動は、単に日本製品を買わないことを訴えることを目的とした運動ではありません。日本から受けた屈辱感、柵封体制の優れた長兄である朝鮮が、柵封体制の愚弟であった日本に支配されたという屈辱感を晴らす運動でもありました。そして、その屈辱感は、千二百年もの間、中華帝国の属国として従属し続けてきた屈辱感をもとにしていました。

 こうした屈辱感が、日本製品不買運動となって現れたのです。

 

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          News week 日本版(2019年7月5日)より

 

 上の写真はソウル市内で撮影されたものです。日本製品を踏みつける韓国市民といい、優勝カップを踏みつけた韓国の青年といい、彼らは踏みつけることが好きな人たちなのでしょうか。

 実はこの行為の深層には、中華帝国や日本帝国に踏みつけられてきたという、朝鮮の人々の屈辱感が存在しています。この屈辱感を刺激されると、韓国の人々は屈辱感を解消させるために、無意識のうちに中国や日本を象徴するものを踏みつけるという行為を行ってしまうのです。

 

反日の暴走は止まるのか

 長年にわたって民族に受け継がれた屈辱感に、現在の生活に対する不満が加わって、「NO NO JAPAN」キャンペーンは広がりを見せています。

 8月15日は、日本の支配からの解放を記念する「光復節」です。光復節を迎えた韓国では、日本統治からの解放を祝う関連行事に加え、日本製品の不買などを訴える「NO NO JAPAN」キャンペーンが一層盛り上がっています。

 

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 この運動は、日韓併合の「国恥日」とされる8月29日に向けて、ますます拡大していくことが予想されています。

 そんななかで韓国政府は、8月22日に日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を発表しました。

 この発表を韓国国民は歓迎するのでしょうか。それとも、文在寅大統領の政策を非難するでしょうか。これは自尊心を守るために現実の危機を無視するのか、それとも自尊心を犠牲にしても厳しい現実に向き合うのかという選択でもあります。

 文政権の政策を支持するのか、反対するのか。この選択は、韓国の未来にとって決定的に重要な意味を持つでしょう。今しばらくは、文大統領の支持率の推移に注目したいと思います。(続く)

 

 

文献

1)黄文雄:韓国はなぜ未来永劫幸せになれないのか.ビジネス社,東京,2019.