沖縄は琉球特別自治区になってしまうのか(5)

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 2月24日に沖縄で県民投票が行われ、「辺野古の埋め立てに反対する」という沖縄県民の意志が示されました。この県民投票はどのような意味を持ち、そして沖縄の今後の行く末にいかなる影響を与えるのでしょうか。

 今回のブログでは、今回行われた県民投票からみえる、沖縄の未来について検討してみたいと思います。

 

県民投票は「埋め立て反対」の意志を示したもの

 沖縄の県民投票の結果は、マスコミによってトップニュースで報道されました。「沖縄の未来へ、県民の民意が示された」、「辺野古移設 明確な『NO』」、「辺野古沖の埋め立てに対して反対票が7割超の43万票超」、「安倍晋三首相やトランプ米大統領に結果を通知すると定められた投票資格者総数の4分の1(28万8398票)を大幅に超えた」などといった記事が並びました。

 この結果を受けて玉城知事は、「辺野古移設反対の民意が埋め立てに絞って明確に示されたのは初めてで、極めて重要な意義がある」、「辺野古新基地建設の阻止に全身全霊をささげていくことを誓う」と訴え、さらに「これまでの懸案であった普天間基地の閉鎖、返還を求めて行く」とも述べました。

 しかし、今回の投票結果は、あくまで辺野古の埋め立てに反対したものであり、普天間基地の存続に反対したものではないはずです。さらに、辺野古の埋め立てに反対する立場にも、さまざまな意見が含まれていると考えられます。

 

埋め立て反対にも多様な意見が

 辺野古の埋め立てに反対した人は43万4273人で、投票者数の71.7%に上りました。しかし、彼らはみな同じ意見だとは限りません。

 たとえば、

辺野古埋め立てに反対で、普天間基地の存続に反対で、新たな基地の県内外の移設に反対する。

辺野古埋め立てに反対で、普天間基地の存続に反対で、新たな基地の県外移設に賛成する。

辺野古埋め立てに反対で、普天間基地の存続に反対で、新たな基地の辺野古以外の県内移設に賛成する。

辺野古埋め立てに反対で、普天間基地の存続に反対で、海を埋め立てずに辺野古周辺に滑走路を造れるなら賛成する。

辺野古埋め立てに反対で、普天間基地の存続に賛成する。

⑥米軍基地のことは分からないが、自然を破壊する辺野古の埋め立てには反対する。

 などといった意見があると考えられます。

 辺野古埋め立ての賛否を問うだけであれば、以上の6つの意見はすべて反対になります。それぞれの立場は同じとは言えず、特に①と⑤の意見は、米軍基地に対してまったく正反対の立場であることが分かるでしょう。

 このように、辺野古埋め立ての賛否だけを問う設問自体に、そもそもの問題があります。もし設問が「普天間基地の閉鎖に伴うキャンプシュワブでの滑走路増設の賛否」であれば、投票結果は違ったものになったでしょう。「辺野古埋め立ての賛否」という設問自体に、米軍基地に反対するための民意作りという、政治的な意図が隠されているとしか思えません。

 

投票率の52%は高いのか

 マスコミは、投票率住民投票の有効性を測るひとつの目安とされる50%を超えて52.5%だったことも、沖縄県の民意を示すものだと主張しています。しかし、投票前に県庁をあげて県民投票への参加を呼びかけ、左派マスコミや米軍基地反対陣営の熱烈な運動にも拘わらず、投票率が半数を少し超えただけというのは、むしろ盛り上がりに欠けたと言えるのではないでしょうか。

 そして、反対票が71.7%に上ったとしても、投票資格者総数からすれば、全体の37.6%に過ぎません(43万4273人/115万3591人)。さらに上記で指摘したように、辺野古埋め立て反対と言っても、様々な立場が存在します。新聞では「玉城知事当選上回る43万票」という見出しで、玉城知事の主張への賛同が増しているかのような報道がなされました。しかし、辺野古埋め立て反対票の中に玉城知事の主張と異なる意見の人が含まれていることを考慮すれば、これはある意味で当然の結果だと言えるでしょう。

 以上の検討のように、玉城知事が主張しているように「辺野古新基地建設を阻止」し、「普天間基地の閉鎖、返還」を求め、さらに「基地の県内移設の反対」するという意見に賛同した人が果たしてどれだけいるのかは、投票結果からは明確ではないのです。

 

玉城知事の真意とは

 今回の投票結果を踏まえて、玉城知事は安倍首相に辺野古埋め立ての中止を訴えるでしょう。そして、今後もあらゆる手段を使って、辺野古への移設を妨害すると思われます。その闘いは始まったばかりで、今後も執拗に続くことが予想されます。

 しかし、問題は玉城知事がどのような考えを持って、移設反対の運動を行っているかです。これまでの言動から、玉城知事の考えは上述の①または②であると考えられます。すなわち、

辺野古埋め立てに反対で、普天間基地の存続に反対で、新たな基地の県内外の移設に反対する。
辺野古埋め立てに反対で、普天間基地の存続に反対で、新たな基地の県外移設に賛成する。

 の二つです。

 玉城知事が②の意見であれば、尖閣諸島有事の際などに防衛力の低下は否めませんが、それでも日本の国防は視野に入っていると言えるでしょう。

 一方、玉城知事の意見が①であるとすると、日本の防衛力は著しく低下します。それでも、もし玉城知事が、米軍基地を撤退させた後に自衛隊を招いて防衛力を補完するという考えを持っているなら、まだ日本は救われるでしょう。

 

玉城知事は沖縄独立を目指しているのか

 そうではなく、玉城知事が辺野古埋め立てに反対で、普天間基地の存続に反対で、新たな基地の県内外の移設に反対のうえに、自衛隊による国防にも反対だとしたらどうでしょうか。

 この考えでは、沖縄からアメリカだけでなく日本の軍事力をも排除することになります。これは沖縄が、アメリカからも日本からも距離を置くことを意味します。行きつく先は、沖縄の独立でしょうか。しかし、防衛力を伴わない独立は、他国の新たな支配を招くことになってしまうでしょう。

 玉城知事は、故翁長前知事の後継者として立候補し、県知事選で当選しました。晩年の翁長氏が追い求めたように、玉城知事は沖縄を中国に所属させ、一国二制度の中に組み込ませようとしているのでしょうか。それとも、「米軍基地反対」、「戦争反対」、「自衛隊反対」、「沖縄の自然を守れ」と叫ぶ市民運動家のように、政府自民党の政策に反対し、沖縄の不満をぶつけることを主な目的としているのでしょうか。そうであれば、まだ実害は少ないと思われるのですが。

 はたして玉城知事は、沖縄の未来をどのような方向に向かわせようとしているのか。彼の真意を見極めるために、今後の発言を注意深く見守る必要があります。(続く)