韓国はなぜ繰り返し賠償を求めてくるのか(12)

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 前回のブログで、日本が後ろめたさを感じる対象とは、自らのアイデンティティーを立て直すために朝鮮を併合し、そのことによって朝鮮の人々の自尊心を奪ったことなのだと指摘しました。

 日本はこの後ろめたさのために、併合時代に朝鮮の教育を充実させ、インフラ整備と工業化に多大な投資を行いました。日韓基本条約を締結した際には、韓国に総額で11憶ドルもの資金供与及び貸付けを行いました。
 それにもかかわらず、韓国は日本の「植民地化」を非難し続け、さらに、いわゆる慰安婦問題や今回のいわゆる徴用工問題を何度も蒸し返し、謝罪と賠償を請求し続けています。

 日本は繰り返される韓国の謝罪と賠償の請求に対して、どのように対処したらいいのでしょうか。

 

韓国の訴えは“精神症状”

 韓国は、日韓併合の36年間が「人類史上類例のない過酷な植民地支配」であり、「主権」「国王」「国語」「人命」「姓名」「土地」「資源」の七つを奪われたと訴え、従軍慰安婦や徴用工として日本に搾取されたと繰り返し訴訟を起こしてきました。これまでに検討してきたように、これらの主張は現実的な裏付けのない、架空の物語としての訴えでした。こうした訴えは、どのようして生まれたのでしょうか。

 朝鮮は、併合時代に日本式近代化の優等生として、日本文化に倣って近代化を推し進めました。さらに、アジアの解放のために日本と一緒に英米と戦いました。こうした事実の記憶は、戦後になって韓国の人々の無意識に抑圧されました。なぜ無意識の中に抑圧されたかと言えば、この事実を認めると、韓国の人々が自尊心を保つことができないからです。 

 日本による併合以前には、朝鮮の人々は、柵封体制の中で優れた長兄であることが自尊心の拠り所でした。その優れた朝鮮が、柵封体制の愚弟であった日本に支配されることなど決してあってはならないことでした。加えて、朝鮮人が自らの意志で日本に従属したことを認めれば、彼らの自尊心は決定的に失われてしまうでしょう。そのため、併合は朝鮮の意志とは無関係に強制されたものではなくてはならず、併合時代の日本の政策は、七奪に象徴されるような「人類史上類例のない過酷な植民地支配」でなければならなかったのです。

 しかし、愚弟の日本に自ら従属したという無意識の記憶は、折に触れて意識の中に頭をもたげてきます。この記憶を認めないために、日本から強制的にひどい扱いをうけたという、自尊心を守るための架空の物語を主張する必要がありました。これは無意識の記憶が変装されて出現した、実体を伴わない精神症状であると言えるでしょう。

 

見当違いの日本の謝罪

 日本は、この精神症状ともいえる韓国の謝罪と賠償の請求に対して、その都度正面から取り上げて、実際に謝罪と賠償を行ってきました。

 個人の精神療法を行う場合、無意識の記憶やそれに伴う感情が変装して現れる精神症状、たとえばさまざまな身体症状や強迫症状、または妄想的な症状に、焦点を当てて治療を行うことはありません。なぜならこれらは、本当の問題点を意識化したり言語化したりできないために、姿を変えて現れた症状であるからです。そして、本当の問題から逃避するために出現している症状でもあるからです。この症状を取り上げすぎると、本当の問題の解決、つまり根本的な治療からは遠ざかってしまいます。

 日本は、韓国の精神症状ともいうべき訴えを真剣に取り上げてきましたが、これは見当違いの対応でした。日本が韓国の主張する訴えに謝罪と賠償を行っても、韓国は決して満足することはありません。それは韓国の人々が、従軍慰安婦や徴用工の問題が、現実には存在しなかったことにどこかで気づいているからではないでしょうか(だからこそ彼らは、従軍慰安婦像や徴用工像を今も世界中に設置して、実際にあったことだと主張し続ける必要があるのです)。そして、本当の心の疼きは愚弟の日本に併合され、日本の方針に自ら従ってしまったことに発しているからです。

 日本が謝罪すれば、韓国はその瞬間は勝ち誇った気持ちになれるかも知れませんが、それで過去の行いが消えるわけではありません。時がたてば、再び自尊心の疼きが蘇ってきます。そこでこの疼きを解消させるため、韓国は何度でも同じ問題を蒸し返さざるを得ないのです。

 

存在しない問題には謝罪してはならない

 日本人は、自らの自尊心を保つために朝鮮人の自尊心を奪った、という後ろめたさから、存在しない問題に謝罪と賠償を繰り返してきました(存在しない問題を、韓国人と協力して作ったのは、他ならぬ戦後の内的自己を代表する日本人たちでした。彼らの理解しがたい行動も、後ろめたさに由来していると考えられます)。 

 日本の謝罪と賠償は、問題の解決に繋がらないばかりが、問題の解決をより複雑にして来ました。何度でも同じ問題を突きつけられることで、日本国内には韓国への悪感情が蓄積され、その一部は韓国へのヘイトスピーチとなって現れています。一方、韓国には、謝罪と賠償をつきつけさえすれば、日本はへりくだって謝罪するという誤った認識が伝わりました。そのため、日本に何度も謝罪を要求しては満足を得るという、いわば「謝罪要求依存症」のような新たな症状を生むことになりました。

 最近起こった徴用工訴訟問題や、火器管制レーダー照射事件は、この謝罪要求依存症の一つの症状だと考えられます。現に火器管制レーダー照射事件では、日本の哨戒機の「低空飛行による威嚇」を再三にわたって非難し、謝罪をを求めています。国家間で解決済みの問題でも、または明らかに自らに非があっても、謝罪を要求しさえすれば日本は謝るものだという韓国の謝った認識は、これまでの日本の対応がもたらした結果だと言わざるを得ません。

 日本が謝罪するべきことがあるとすれば、それは「自らのアイデンティティーを立て直すために朝鮮を併合し、そのことによって朝鮮の人々の自尊心を奪ったこと」なのであり、この心の問題以外の謝罪は、むしろ行わないことが重要であると考えられます。

 

日本は毅然とした対応をとるべき

 現在の日本政府は、徴用工訴訟問題や火器管制レーダー照射事件に対して、「賠償は受け入れられない」、「火器管制レーダーを照射した事実を認め、二度と起きないように再発防止策を徹底してほしい」という至極まっとうな対応をしています。これは主権国家としては当たり前の主張ですが、韓国は今までと違う日本の対応に驚き、むしろどう対応したらいいのか困惑しているでしょう。

 こうした当たり前の対応、具体的には存在しない問題には謝罪しない、間違った主張には事実を示して反論する、国家間でした約束を破れば履行を迫るといった対応を継続していくことが重要だと思われます。そうしないと却って問題は複雑化し、いつまでたっても同じ問題が蒸し返されることになります。それは日本にとってだけでなく、韓国にとっても不幸なことではないでしょうか。

 

三一節に向って内的自己が暴発
 先のブログでも指摘しましたが、来たる3月1日に向かって、反日の嵐はさらに吹き荒れることが予想されます。特に今年の3月1日は、独立運動からちょうど100周年に当たることに加え、文在寅ムン・ジェイン)が内的自己を代表する大統領であることが、この傾向に拍車をかけています。

 三一節で文大統領は、改めて日本の過去の行いを非難し、「心からの謝罪と責任のある対応」を日本政府に求めてくるでしょう。そして、さらに100周年を記念して、植民地時代の日本の非道を世界に向けて発信するでしょう。改めて、徴用工や従軍慰安婦への、謝罪と賠償を求めてくるかも知れません。

 予想されるこうした事態に対しては日本は、存在しなかった問題には謝罪するべきではないし、間違った主張には事実を示して反論し、国家間でした約束を破れば履行を迫るという基本的な姿勢を貫くことが必要です。そのうえで、内的自己を代表する人々に対しては、なるべく距離をとることが重要ではないでしょうか。

 

韓国の内的自己は日本の内的自己がモデル

 韓国の内的自己は、実は併合時代の日本の内的自己がモデルになっていると考えられます。併合時代の日本の内的自己は、尊王攘夷の流れを汲んでいました。つまり、皇室を尊び、侵略者である欧米諸国を拒絶して追い払おうという思想です。これが大東亜戦争の時には鬼畜米英になりました。米英は、祖国を侵略しようとする餓鬼や畜生のような存在だというわけです。また、鬼畜には残虐な行為をする者という意味もあります。

 朝鮮にとっての侵略者は日本でした。したがって、朝鮮の内的自己にとって日本は、拒絶して追い払うべき鬼畜のような対象、そして残虐な行為をする者として捉えられました。韓国として独立した後にも、日本に対する内的自己の姿勢は受け継がれました。韓国の内的自己にとって日本人とは、侵略者であり、餓鬼や畜生であり、残虐な行為をする者でした。

 

戦後の歪んだ日本の内的自己との関係

 日本はアメリカとの戦争で徹底的に叩きのめされ、戦後も占領政策を受けました。そのため戦後日本の内的自己は、アメリカに対して敵意を向けることができなくなりました。その敵意は、アメリカに追従している外的自己、つまり戦後の日本政治のほとんどを司ってきた自民党政府に向けられました。その結果、戦後日本の内的自己は、内的自己でありながら日本政府に敵意を向けるという、非常に歪んだ形をとるようになりました。

 この歪んだ日本の内的自己が、韓国の内的自己と共闘を組みました。その共通の敵は、日本政府でした。日本の内的自己は日本政府を攻撃するために、反日ナショナリズムを教え、従軍慰安婦問題や徴用工問題を創り上げました。韓国の内的自己はこれに呼応し、反日ナショナリズム愛国心に置き換え、従軍慰安婦問題や徴用工問題を何度も蒸し返し、さらにこれを全世界に向けて発信しました。この共闘は成果を上げ、日本政府は韓国に謝罪と賠償を繰り返し、世界中で日本の評価を貶めました。

 日本が韓国との距離を近づければ、日本の内的自己と韓国の内的自己は接近し、日本政府や日本にとってマイナスにしかならない共闘を組む恐れが高まります。三一節に向って高まる反日の韓国に対して、なるべく関わらずに距離を取ることが大切なのは、この意味においてです。

 日本は韓国との問題に関わりすぎることなく、むしろ自らの問題に目を向け、本当の自立を目指すために力を注いで行くことが大切なのではないでしょうか。(了)