韓国はなぜ繰り返し賠償を求めてくるのか(10)

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 文在寅ムン・ジェイン)大統領は、支持率の低下を受けて、いよいよ反日の姿勢を顕わにしてきました。文政権のもと、今後の日韓関係はどうなっていくのでしょうか。そして、反日の姿勢をとり続ける韓国に対して、日本はどのように対応したらいいのでしょうか。 

 今回のブログからは、悪化を続ける日韓関係とその対応について、精神分析的に検討してみたいと思います。

 

日本をたしなめる文大統領

 文在寅ムン・ジェイン)大統領は、1月10日にソウルの大統領府で開いた年頭の記者会見で、いわゆる徴用工への賠償を新日鉄住金に命じた韓国大法院(最高裁)判決について、「日本は不満があっても、基本的にはどうしようもないという認識を持たなければいけない」と述べ、日本側も韓国の最高裁判決を尊重すべきだという認識を示しました。さらに、「(徴用工問題は)韓国政府が作り出したものではなく、過去の不幸な歴史によって生まれた問題だ。日本政府はもう少し謙虚な姿勢を示さなければいけない」とも述べ、加えて「日本の指導者たちがこれを政治争点化し、問題を拡散させていくのは賢明な態度ではない」と批判しました。

 韓国人記者に囲まれた会見とはいえ、「韓国大法院の判決は日韓請求権協定の取り決めより優先される」、「徴用工問題が起こったのは日本側の責任」、「日本政府はもう少し謙虚になるべきだ」と述べた文大統領は、まさに上の立場から日本をたしなめる姿勢を示したと言えるでしょう。

 

経済政策は見直さない

 文政権は雇用創出を看板政策に掲げていましたが、自動車や造船など主力製造業が不振だったこともあり、2018年の就業者の伸びは、リーマン・ショック以来初めて前年比で10万人を切りました。年頭の記者会見で文大統領は、「雇用で国民の期待に応えられなかった」、「政府の経済政策への信頼を低下させた」と認めました。
 しかし、その一方で「所得を増やして景気を浮揚させる分配重視の政策は変えない」と強調しました。そして、「今年は政府の経済政策が正しい方向だと体感できるようにする」と宣言しました。政権発足時に3%を超えていた成長率は、2019年には2%台半ばに低下することが見込まれており、これを記者から指摘された文大統領は、「社会の二極化を解消しないと持続的な成長はできない」と改めて主張しました。

 経済政策の失敗を改めず、見栄えのいい「所得中心の成長」という経済政策を継続すれば、2019年の韓国経済はさらに悪化することが予想されます。

 

頼みの北朝鮮からもそっぽ

 これまで文政権の高支持率を支えてきた南北融和政策にも、少しずつ暗雲が立ち込めています。

 文大統領は、「私たちが朝鮮半島問題の主役になった」と語り、韓国が主導で北朝鮮を非核化に向かわせた功績を誇示しました。しかし、文大統領との間で約束されたはずの、金正恩キム・ジョンウン)委員長の2018年内のソウル訪問は実現しませんでした。そればかりか金委員長は、自らの誕生日でもある1月8日に、4度目の中国訪問を果たしました。この訪中は、第2回米朝首脳会談に向けた、北朝鮮と中国の事前協議とも言われています。

 北朝鮮の行動は、米中関係の改善のために重視するパートナーが、韓国でなく中国であることを明確にしました。そして、文大統領が功績と誇示する南北融和も、最終的には米朝次第であることが露呈された形です。

 

反日の嵐が吹き荒れる?

 韓国の経済が悪化し、南北融和の見通しが立たなくなれば、文政権の支持率はさらに低下すると考えられます。現実を重視する政治家であれば、経済政策を見直し、北朝鮮を妄信する態度を改めようとするでしょう。しかし文在寅ムン・ジェイン)は、民族の自尊心をあくまでも優先する大統領です。彼は内的自己を代表するだけでなく、さらに従北(親北朝鮮) の思想を持っています。現実的な政策に転換することは、残念ながらあり得ないことのように思われます。

 すると、文大統領の進む途は決まってきます。それは、反日によって支持率の回復を図ることです。現在起こっているいわゆる徴用工問題や従軍慰安婦問題、さらに自衛隊哨戒機への火器管制レーダー照射事件において、文大統領はさらに厳しい態度で日本に臨んでくるでしょう。そして、例のごとく、謝罪と賠償を一方的に求めてくることが予想されます。

 

3月1日に反日は頂点に

 来たる3月1日に向かって、反日の嵐はさらに吹き荒れることになるでしょう。1919年3月1日に朝鮮で起こった独立運動を記念して、韓国では3月1日を三一節として祝日に指定しています。今年の3月1日は、独立運動からちょうど100周年に当たります。

 すでに文在寅大統領は、昨年の8月14日に「来年、三一独立運動大韓民国臨時政府樹立100周年を迎え、政府は北朝鮮と共同事業で安重根(アン・ジュングン)義士の遺骨発掘事業を推進する」ことを明らかにしています。こうした言動から、文大統領は今年の三一節を、北朝鮮と共同で祝うことを目論んでいるのではないでしょうか(北朝鮮がこの誘いに乗ってくる可能性は低いと思われますが)。

 三一節で文大統領は、改めて日本の過去の行いを非難し、「心からの謝罪と責任のある対応」を日本政府に求めてくるでしょう。いわゆる 徴用工問題や従軍慰安婦問題、さらに火器管制レーダー照射事件がこの時までに解決していなければ(解決しているとはとても思えませんが)、これらの問題は、日本が未だに過去の行いを反省していないことの証拠として扱われるに違いありません。

 

反日は支持率を上げる常套手段

 ところで、なぜ韓国の大統領は、支持率が低下すると反日の態度を顕わにするのでしょうか。それは以前のブログで検討したように、韓国では反日が愛国と同義になっているからです。

 自らの力で独立を勝ち取っていない韓国では、建国の神話を創ることが非常に困難です。建国の神話を創れないと、国民は国を愛する心、つまり愛国のナショナリズムを形成することができません。そこで愛国のナショナリズムがない韓国では、代わりに反日ナショナリズムを作り上げていったと古田博司は指摘します。

 

 「韓国には反日ナショナリズムはあっても、愛国のナショナリズムがない。

 歴史上は、シナ大陸の政権下で自立したことがなく、近代は日本の統治下となって資本主義経済の基盤を作った。
 独立は日本の敗戦で棚ぼた式に転がり込み、そのあとに、三十八度線で北には行けなくなって『島化』した国である。一度も自立的な歴史を歩んだことがないのだ。
 そんな彼らに偽のナショナリズムを教えたのは、日本の戦後の左翼学者たちだった。韓国は日本が来なければ自然に近代化し、資本主義ができていたはずだ、その資本主義の芽を摘んだのが日本なのだ、と教えた。いうまでもなく、マルクス唯物史観である。日本は韓国を搾取し、収奪した悪辣な国なのだから、自立的な歴史を日本から取り戻そう、そう教えたのだ。
 そこから反日という形で韓国のナショナリズムが育っていった」(『韓国・韓国人の品性』1)68頁)

 

 反日が愛国のナショナリズムの代わりであれば、反日を訴えることは愛国を訴えることと同義になるため、大統領の支持率は上がりやすいでしょう。さらに国が危機的な状況に瀕した際には、愛国のナショナリズムが必要になりますから、いっそう反日が叫ばれることになるでしょう。

 今後韓国の経済がさらに悪化し、国家が危機的な状況に陥れば、文在寅ムン・ジェイン)大統領はいっそう反日の姿勢を顕わにして行くと考えられます。

 このように反日が愛国と同義として使われ、そのために韓国が反日を繰り返し叫ぶようになったとすれば、日本の戦後の左翼学者たちの罪は、非常に重いと言わざるを得ません。

 

なぜ繰り返し謝罪と賠償を求めるのか

 それにしてもなぜ韓国は、あらゆる事案に対して、繰り返し繰り返し謝罪と賠償を求めてくるのでしょうか。日本からすれば本当に辟易としますが、現に今も謝罪と賠償を求められているわけですから、この問題から目を背けずに本質を理解しておくことが必要です。

 韓国では反日が愛国の代わりとなっていることがその重要な理由ですが、その他にも、日本と韓国における関係性の問題があると考えられます。

 まず、韓国側の問題からみて行くことにしましょう。

 韓国は、日本との間で何か問題が生じると、必ず自らを被害者の立場に置いたうえで、加害者である日本を非難して謝罪を求めます。これはどの問題に関しても同じです。韓国はいつも被害者で、日本は加害者です。そして、常に日本の側に責任があるという態度には変わりがありません。二国間の問題で、一方の国が必ず悪いということが本当にあり得るのでしょうか。

 

自分の問題から目を逸らす手段

 実は、これと同じ構造を、日常の診療場面で経験することがあります。たとえば、それは次のような症例です。

 うつ状態におちいった成人の女性が、精神分析を受けるうちに、その原因が自分の成育歴にあると思い至ります。彼女の記憶では母親から満足な養育を受けられなかったばかりか、必要なかった叱責を受けた思い出がよみがえってきます。さらに、自分のしたいことを止められ、無理やり進路を決められたこともありました。結婚についても、自分では気の進まないまま、母親から強く勧められた男性と見合い結婚しました。その結果、現在の彼女は何をしても幸せを感じられず、そればかりか対人関係も乏しくなり、生きてゆく意欲さえ失って自宅に引きこもっています。

 そこで彼女は、自分が不幸なのは母親のせいであると考え、母親を責めるようになります。それは過去の養育だけでなく、現在でも一方的に干渉してくると母親を責め続けます。そして、こんなにひどい母親に育てられたために、自分は不幸な人生を送ることになったのだと嘆き続けます。

 以上の女性の物語には、幾ばくかの真実が含まれているかも知れません。しかし、この女性がいくら母親を責め続けたとしても、治療が進展することはないでしょう。毎回毎回、母親がいかにひどかったかを訴えるだけでは、彼女自身が変わって行けないからです。つまり、母親を責め続けることが、自分の問題から目を逸らす手段になっているのです。

 これと同じことが、韓国にも起こっているのではないでしょうか。(続く)

 

 

文献

1)古田博司:韓国・韓国人の品性.ワック株式会社,東京,2017.