韓国はなぜ繰り返し賠償を求めてくるのか(3)

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 前回までのブログでは、朝鮮の人々は中華思想による冊封体制大日本帝国の中での優等生であり、戦後の韓国は、日本型経済の優等生であり、アメリカ型経済の優等生であったことを述べてきました。そして、グローバルスタンダートの優等生として、サムスンフィギュアスケートキム・ヨナ選手の例を挙げて、韓国の優れた面を検討しました。

 今回のブログでは、こうした朝鮮、韓国が優等生としての振る舞うことの負の側面について述べたいと思います。

 

独自の技術を持たないサムスン

 サムスンはいち早くグローバル化を達成し、家電業界では世界一の営業利益を上げる世界的な企業です。そうした意味では、サムスンは超優良企業であり、企業として抜群の業績を残していると言えるでしょう。

 しかし、世界一の営業利益をあげるサムスンは、独自の技術を持っていないといいます。『危機の経営 サムスンを世界一企業に変えた3つのイノベーション1)をもとに、サムスンの特徴を検討してみましょう。

 

 「じつはサムスンには、独自の技術を使った製品がありません。それでいて日本の企業に勝る大きな飛躍ができたのは、『社会が求めていることを実現するための手段としての技術』が日本より優れているからにほかなりません」(『危機の経営 サムスンを世界一企業に変えた3つのイノベーション』6頁)

 

 独自の技術を使った製品がない企業が、世界一の利益を上げているのは実に驚くべき事実です。

 

消費者に合わせるというグローバル戦略

 では、サムスンが優れている「社会が求めていることを実現するための手段としての技術」とは何でしょうか。

 

 「それぞれの国にはそれぞれ異なる文化があるし、経済力も国によって異なります。そのことを前提にして、それぞれの場所に合った製品を開発して提供しているのです。

 たとえば、新興国では二槽式の洗濯機が爆発的なヒットを飛ばしています。人気の秘密は、一万円を切る価格にあります。(中略)ついこの間まで、たらいを使って手で洗濯をするのが当たり前だった場所では、機能としては最低限のものしかなかろうと、自分たちでも手に届く価格で買える製品の方が、消費者にとってはありがたいのです。(中略)

 カギの掛かる冷蔵庫やマルチリンガルのテレビなども、インドでは定番のヒット商品になっています。社会格差が大きく、使用人に食べ物を盗まれることが多いので、このような機能を持つ冷蔵庫が求められているのです。マルチリンガルのテレビというのも、多言語国家のインドならではの商品です。(中略)

 一方、ヨーロッパではワイングラス型のサムスン製のテレビが人気を博しています。こちらは価格ではなく、生活事情に合わせたデザインを売りにしています。このテレビは画面までの高さがあるので床の上に直接置けます。わざわざテレビ台を置かなくていいから、部屋を広くかつおしゃれに使えるわけです。(中略)

 日本の感覚でいうと、これらはいずれも日本製のものより品質が劣っています。それでも売れるのは、それぞれの製品がその地域の消費者が本当に望んでいる要素を備えているからです。このような製品を提供するのがサムスンのグローバル戦略なのです」(『危機の経営 サムスンを世界一企業に変えた3つのイノベーション』163‐165頁)

 

 このようにサムスンは、詳細なマーケティングリサーチを行い、その地域の消費者が何を望んでいるかを徹底的に研究し、消費者の要求に合致した製品を提供することによって、他社の追随を許さない売り上げを実現したのです。

 

デザイン革命

 サムスンの製品を支えるもう一つの特徴が、その斬新で多様なデザインです。「人の心を動かすのはデザインである」という李 健煕(イ・ゴンヒ)会長の言葉をもとに、サムスンはデザイン重視主義に転換します。世界中から優秀なデザイナーを集め、各地にグローバルデザインセンターを作りました。そこで斬新でインパクトのあるデザインの商品を、次々と世に送り出しました。

 さらに一つの商品に、多種多様なデザインを用意するという戦略も用いました。

 

 サムスンは現在、テレビの販売で世界トップレベルのシェアを誇っています。この躍進を支えている戦略の一つが、同じ大きさのテレビで多種多様のデザインの商品を用意するデザイン革命です。(中略)

 世界には多種多様な人たちがいます。その人たちの好みは千差万別なので、一種類ないし二種類のデザインしか用意していないと、満足感を得られない人のほうが多くなる確率が高まります。逆にいうと、多種多様のデザインを用意することができれば、テレビを購入するときにサムスンのものを選ぶ確率は高くなるわけです。このように会長の言葉をヒントに戦略を練って進められたのが、多様なニーズに応えるために多種多様なデザインの製品を用意するデザイン革命なのです」(『危機の経営 サムスンを世界一企業に変えた3つのイノベーション』98‐99頁)

 

 消費者のニーズに徹底的に応え、技術よりも価格やデザインを重視する戦略によって、サムスンは世界有数の企業に発展したのです。

 

超優良企業の落とし穴

 サムスンの戦略は功を奏し、たった20年ほどで世界的企業になりました。しかし、この戦略にも負の側面があります。それは消費者のニーズを第一に考え、価格やデザインを追求すること自体にあります。他者の要求を第一にしたうえに、技術よりも見た目を重視することには二つの意味で重大な危険性があると考えられます。

 一つは、自らの哲学に基づいた、独自の技術が育たたないことです。その企業が存在する意味はなにか、企業は社会にどう貢献するのかといった哲学は、商品がどれだけ売れるか、利益をどれだけあげるかといった問題とは別次元に存在します。企業ですから利益を上げることは重要ですが、そのことばかりに目を奪われると、企業の存在する意義を見失う可能性があります。その企業が存在する意味、その企業が社会的に果たす役割が重要視されていなければ、一時の隆盛は得られても長期的にはその企業は衰退して行くのではないでしょうか。

 また、そうした企業哲学に基づいた独自の技術開発は、その企業の背骨になり、企業のアイデンティティーになって行きます。新しい技術は、一時的には消費者に受け入れられない場合がありますが、長期的には新たな生活スタイルを支える基盤になる可能性があります。そうした新しい技術は一朝一夕には達成されず、たゆまぬ技術の蓄積なしには生まれないでしょう。新たな技術をキャッチアップするだけでは、大きな技術革新を必要とする時代には対応できなくなるのです。

 もう一つの危険性は、消費者のニーズに徹底的に応え、技術よりも価格やデザインを重視するサムスンの戦略は、分かってしまえばどの企業でも真似をすることができることです。サムスンが20年で達成したノウハウは、後を追う企業であれば10年もすれば獲得できるものと思われます。実際に韓国のLG電子だけでなく、中国のハイアールや美的集団といった企業が同様の戦略で発展していますし、今後東南アジアでも同様の企業が誕生する可能性があります。こうした危機のときにこそ、独自の哲学や蓄積された技術が必要になるのではないでしょうか。

 

独自の文化を持たない朝鮮

 サムスンアメリカが打ち立てたグローバル・スタンダートという世界戦略をいち早く取り入れ、グローバル化を追求してアメリカ型経済の優等生になり、世界有数の企業になりましたが、一方で、サムスンが独自に作り上げた技術や革新的な製品を開発していません。

  同じことは、他の文化の優等生として振舞ってきた朝鮮、そして韓国にも当てはまります。彼らは従属する文化のなかで優等生を目指すあまり、そして従属する文化を純粋に超えようとするあまり、独自の文化を育むことをしてきませんでした。

 そのため、彼らは何でもわが国が発祥だと主張することがみられます。たとえば、韓国発祥だと主張している日本のものは、剣道、柔道、空手、相撲、茶道、華道、盆栽、和歌、折り紙、歌舞伎、和食、寿司、醤油、味噌・・・など、多分野に及んでいます。これらは朝鮮語でわれわれを意味する「ウリ」とオリジナルを組み合わせて、ウリジナルと揶揄されています。ウリジナルが多いことは、オリジナリティーに富んだ文化が少ないことの裏返しですが、韓国で未だに平和賞以外のノーベル賞受賞者が誕生していないことも、問題の根本は同じだと思われます。

 優等生として負の側面はこれだけにとどまりません。次回のブログでは、優等生ゆえに、独立のための戦いをしなかったという歴史について検討したいと思います。(続く)

 

 

文献

1)畑村洋太郎+吉川良三:危機の経営 サムスンを世界一企業に変えた3つのイノベーション講談社,東京,2009.